2020.03.18

国会議事録

令和2年3月13日 内閣委員会

○高橋光男君
公明党の高橋光男です。
 まず冒頭、私からも、この度の新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた皆様に衷心よりお悔やみ申し上げますとともに、患者の皆様の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。また、この感染症と闘っている医療現場を始めとする皆様に心から敬意と感謝を表しますとともに、国民の皆様に心からお見舞い申し上げたいと思います。
 さて、一昨日、WHOは新型コロナウイルスがパンデミック、すなわち世界的な大流行であると発表しました。日本でも広範な感染が広がり、まさに大流行になるのか否か瀬戸際にあります。本日は新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案の法案審議ですので、感染防止策や経済支援策などの政府の具体的な対応については別の機会に譲らせていただきますが、冒頭、政府には是非国民お一人お一人に寄り添った迅速かつきめ細やかな御対応をお願い申し上げます。
 それでは、まず、西村大臣にお伺いします。
 本改正法の目的について、特措法の趣旨に照らして簡潔かつ明確に御答弁願います。
○国務大臣(西村康稔君)
まさにお一人お一人に寄り添いながら、今回の対策進めていかなきゃならないと肝に銘じて取り組んでいるところでございますが、今回の新型コロナウイルス感染症、今後拡大する可能性もある、終息していく可能性もある。今まさに専門家の御意見で持ちこたえている、何とか持ちこたえている状況であります。警戒の手を緩めてはならないという御指摘をいただいているところであります。
 そうした様々な可能性を想定しながら、国民生活への影響を最小化するために、万が一の事態に備えて、この緊急事態宣言の発出も含めて、新型インフルエンザ特措法と同等の措置がとれるように、万が一のときに備えての今回の法改正のお願いでございます。よろしくお願いいたしたいと思います。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 私は、この本改正案の目的は、新型コロナウイルス感染症が更なる蔓延のおそれがあることから、新型インフルエンザ等対策特措法上に新たに位置付けることによって、対策の強化を図り、国民の生命と健康への影響を最小限にし、国民の生活と経済を守ることだと考えます。
 報道などでは、あたかも緊急事態宣言を発出できるようにすることが改正目的であるかのようなものもあります。しかし、あくまで国民の生命と健康、生活と経済を守ることが目的だと考えます。緊急事態宣言は、その目的のために、やむにやまれぬ必要に迫られた状況において厳格な要件の下で発出される、言わば手段であります。したがって、宣言そのものについて脅威をあおるような議論は、私は控えるべきではないかと考えます。
 一方で、感染症に伴うこうした緊急事態宣言というのは我が国ではまだ経験したことがありません。一たび発出されれば、そうした国民生活や経済に多大な影響を及ぼすことは必至であります。また、自主的な実施主体でございます都道府県や市町村にも経験がございません。
 大臣と私も同じ地元の兵庫では、伊丹の介護老人施設や姫路の病院などでクラスター感染が確認されており、感染者数も本当に急速に拡大しているところでございます。本改正によって具体的に何が変わるのか、どうしたらいいのか、県民の皆さんも大きな不安を抱えているのが実情であります。
 だからこそ、本改正案について、私たち国会議員は冷静にその内容を審議するとともに、特に肝となる緊急事態宣言に関して、発出に必要な要件、効果、課題等について主権者たる国民の皆様に明確にお示しするとともに、一刻も早く成立させる必要があると考えます。本日はその観点から質問をさせていただきますけれども、是非大臣のお言葉で、本改正を機に新型コロナウイルス感染症から一日も早い正常な国民生活を取り戻すに当たっての決意をお願いしたいと思います。
○国務大臣(西村康稔君)
御指摘のように、様々な御懸念も国民の皆さんの中にはあると思います、この法律に対してですね。ただ、この法律は、まさに御指摘のように、法律が成立した後、万が一の事態のときには緊急事態宣言などを発出することができるという様々な措置がとれることになっておりますけれども、これ、まさに万が一に備えてのことでありまして、我々としてはそういう事態にならないように全力を挙げて今封じ込めに、終息に向けて取り組んでいるところでありますけれども、万が一、国民の生命を守らなきゃいけないというときにはこの緊急事態宣言を発出をして、そして様々な措置をとっていくことになります。
 ただ、その際にも、きちんと専門家の御意見を聴いて、どのぐらいの期間がいいのか、余計な期間取る必要ありませんし、どの区域が必要なのか、余計な区域はする必要ありませんし、必要なこと、必要最小限の措置をとっていくということでありますし、都道府県知事の様々な措置に関しても、罰則があるなど強制力のあるものは実は限られております。要請や指示という、何か命令ではありませんので、それに背いたら罰則があるというようなことは非常に限られたものになっております。
 ですので、まさに物資を、マスクとかの物資を保管しなきゃいけないのをせずに、どこかに売り渡したりしている場合には掛かるような規定になっておりますが、必要最小限のそういう措置になっておりますので、そういう意味では、五条にありますように、基本的人権をしっかり尊重しながら、しかし、国民の生命を守るためにやるべきことを、規定があるということでございます。
 私としては、まさにこれはできれば伝家の宝刀であり続けてほしいと思っております。まずは終息に向けて全力で取り組んでいく、そういう決意でございます。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 それでは、現行の新型コロナウイルス感染症対策に関わる、まず、機関の位置付けとその基本的対処方針について何点か伺いたいと思います。
 今もう御案内のとおり、この新型コロナウイルス感染症については対策本部が設置されています。本法改正後は、これが法律上の政府対策本部になるものと理解します。また、第十八条によれば、この政府対策本部というのは、政府行動計画に基づき、新型コロナウイルスへの基本的対処方針を定めることになると思います。さらに、この方針の策定にあっては、専門家の意見を聴かなければならないと定められています、十八条の四項です。その専門家は、法律上、基本的対処方針等諮問委員会に当たるものと承知します。
 そこで、この本改正法成立後、現在の新型コロナウイルス専門家会議はどうなるのでしょうか。
 また、新型コロナウイルス感染症についての基本的対処方針はいつ作成されるのでしょうか。現在の拡大状況を踏まえれば、本法案成立後直ちに策定されることが望ましいと考えます。そうした基本的対処方針において定められる事項とその策定の見通しについてお伺いします。
○政府参考人(安居徹君)
お答え申し上げます。
 まず、今回の改正法が成立した場合、改正法の規定に基づきまして、まず、蔓延のおそれが高いと認められるときに厚生労働大臣が総理に報告を行った場合に、政府対策本部がまず立ち上げられるということになります。そして、議員御指摘の専門家会議は、現在の新型コロナウイルス感染症対策本部の下に置かれた会議体でございまして、これまで様々な対策について医学的な知見の専門知識を踏まえた御意見をいただいております。
 改正法新型インフルエンザ等対策措置法の施行後、法十五条一条の規定によりまして、いわゆる十五条に基づく政府対策本部というのが設立されるわけでございますが、その後は政府行動計画において定められているとおり、基本的対処方針等諮問委員会の御意見を聴きながら基本的対処方針等を定め、各種の措置をとっていくものということになります。なお、政府対策本部が設置された後のいわゆる今ございます専門家会議の扱いにつきましては、両会議のこれまでの経緯も踏まえまして、関係の整理も含め検討してまいりたいというふうに考えております。
 それと、いつ頃策定されるのかという御質問ございました。
 冒頭申し上げましたように、今回の改正法が成立した場合、改正法の規定に基づきまして、繰り返しになりますが、蔓延のおそれが高いと認められるときに厚労大臣が総理に報告をまず行うという場合に、政府対策本部がまず立ち上げられるということになります。
 次に、既に閣議決定しております政府行動計画に基づきまして、繰り返しになりますが、基本的対処方針を定めることとしております。基本的対処方針の策定に当たりましては、政府行動計画を踏まえまして、事態の推移を見極めつつ行うことになりますが、具体的な内容につきましては、既に策定した基本方針を参考にしながら、専門家の意見を聴きながら実際に生じている事態の状況に即して定めるということになります。
○高橋光男君 
ありがとうございます。
 今、最後にございました基本的対処方針に関して、これは本当にこれからの政府がこの感染症に対してどのような対応をしていくのかということを定め、非常に指針となる重要な文書になるかと思います。
 一方で、今の現行の基本方針、これは二月二十五日に定められたものでございますけれども、それからもう今現在に向けて状況は刻一刻と変化していっているわけでございます。一方で、この現行の基本方針でございますけれども、典型的な官僚の作文で何がポイントか伝わりにくい。是非、国民にとって分かりやすい内容として早急に策定していただくようお願いします。
 次に、緊急事態宣言の発出に関する要件につき、伺いたいと思います。
 要件については二つございます。お配りしている資料にもございますように、もう今日も何度も確認されたかと思いますけれども、要件の一、これはウイルスそのものの重篤性の要件と言われますが、現在の新型コロナウイルスの発生頻度が相当高いとみなされるのか、また次に、要件の二として、これはウイルスの全国的かつ急速な蔓延による影響に関してですけれども、この要件に照らして、今そうした影響がもたらされているというふうに言えるのかといったようなことが問題になるわけでございますが、今日の、今朝の参考人の見解にございました、よれば、本日時点ではこれらの要件は満たされず、直ちに緊急事態宣言が発出されるような状況ではないということは明らかになりました。
 しかし、これらの要件についてはいずれも定量的なものではなく、定性的な表現で曖昧さは否めないと思います。恣意的な判断が許されないこそ、要件の該当性については基本的対処方針等諮問委員会が行う専門的評価が大変大事になるかと思います。
 したがいまして、緊急事態宣言の決定を行うに当たっては、そうした専門家の意見を十分踏まえて慎重になされることを担保することが極めて重要かと思います。
 この点は、公明党として与党審査のプロセスにおいても強調させていただいた点でございますけれども、ついては、これらの点についても基本的対処方針にしっかりと明記すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(神田憲次君)
お答え申し上げます。
 緊急事態宣言の要件に該当しているかどうかの判断に際しましては、政府行動計画において、専門家で構成される基本的対処方針等諮問委員会に諮問することを定めておるところでございます。
 緊急事態宣言をした場合には、先生御承知の、私権を制限する措置ということを行い得るというところから、法第五条におきましては、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型インフルエンザ等対策を実施するための必要最小限のものでなければならないというふうに規定されていることも踏まえまして、専門家の意見も聴きながら適切に判断する必要があるものと考えておるところでございます。
 先生に御指摘を賜りました点、この点におきましては、十分考慮いたしまして、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 では、続いて、緊急事態宣言による効果について伺いたいと思います。
 国民の皆様にとって、いざ、こうした宣言が出されれば、不当に自由と権利が奪われるのではないかと考える人も多いと思います。今日もいろいろ私見の制約ということで御議論があったところかと思います。また、政府からの要請や指示に従わない場合、罰則が科されるのではないかといった受け止め方もあろうかと思います。
 しかしながら、この本法律の大原則は国民の基本的人権の最大限の尊重でございまして、その旨は、第五条にございますように、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型インフルエンザ等対策を実施するために必要最小限のものでなければならないという点は、今日何度も指摘があった点かと思います。
 そこで、まず確認をさせていただきたいのは、冒頭、大臣からもございましたように、この罰則という点についてですけれども、この法律において私人との関係で強制力を有するのは、あくまで罰則規定がある次の二つの場合に限られるのかという点です。すなわち、五十五条三項への違反、つまり、これ特定物資の確保のための保管命令に背きましてその物資の隠匿、損壊、廃棄等を行った者への罰則、そしてまた、七十二条への違反、これは特定物資の保管場所等への立入検査を拒否した者への罰則、この二点に限られるのかということです。
 ですので、それら以外、例えば外出の自粛規制や施設使用の要請、施設使用要請に応じない場合に措置を講ずべき指示等については、こうした要請や指示に従わない場合でも罰則が適用されることはないのか。その意味で、私権の強制的な制約ではないと捉えてよいのでしょうか。
 また、その制約については、外国人に対しても同様と考えてよいでしょうか。
○政府参考人(安居徹君)
お答え申し上げます。
 議員から御質問があった法第四十五条第一項、第二項及び第三項につきましては、法第七十六条及び第七十七条の罰則の対象外となっております。
 なお、この点について、日本人と外国人とで扱いは同じでございます。
○高橋光男君
ということであれば、やはりそれら二つ以外の、例えば外出自粛要請はあくまで協力要請であって、また、施設の使用制限の要請についても、これは今も行われているような学校の使用制限も含まれるものだと思いますけれども、こうした要請に応じない場合の指示についても、仮に従わなくてもこれは罰せられることのない前提での要請、指示になろうかと解します。この点は私はすごく大事な点だと思っております。
 例えば、収用などについても、法律上規定のない強制収用などというふうに言う、これも報道もございまして、あたかも法的強制力を伴ったもののように伝えるような向きもあるので、正しい理解が必要だと考えます。
 とはいえ、一たび都道府県がそうした要請なり指示なりをすれば、受け取る側にとってはやはり従わなければならないのではないかというふうに受け止める心理的な圧力が掛かると思います。経済的な萎縮効果も甚大になるかと思います。
 特に施設制限に関しては、今実際行われているような学校の使用制限、イベント開催のみならず、社会福祉施設や興行場、いわゆる映画館や球場などの施設なども対象になります。だからこそ、たとえ協力要請であっても、社会的混乱を回避するために政府による関係者への丁寧な説明が不可欠だと思います。
 その意味では、政府として、宣言を発出する前、私は改正後すぐにでも取りかかるべきだと思いますが、施設の使用制限やイベント開催制限を始め、この法律によって制約され得る私人、法人等の権利の趣旨、内容、そして具体的にどのような基準に基づけばよいのかも含めて丁寧かつ十分な周知を行う必要があると考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(安居徹君)
お答え申し上げます。
 議員御指摘のいわゆる休業要請等につきましては、各都道府県の知事の判断において行われるわけでございます。これは緊急事態宣言が出された後の話でございますが、政府といたしましても、各自治体との密な連携を図りつつ、国民への丁寧な周知に努めてまいりたいというふうに考えております。
○高橋光男君
ありがとうございました。
 本日確認させていただいたように、本改正案について大事なことは、まず政府として、国民にとって今後の対応について分かりやすい基本的対処方針を早期に定めること、またそして、国民にとって懸念される緊急事態宣言の要件についてしっかりと政府として説明責任を果たすこと、そして、この宣言による効果、特にその私人の権利制約がどの程度及ぶかにつき正確な理解を促すことが、国民が一致協力してこの感染症に対処していくために不可欠である、この三点かと思います。
 最後に、繰り返しになりますけれども、正常な国民生活を取り戻すためには、緊急対応策を始めとする支援策を迅速に実施に移すことが何より大事でありまして、政府には、重ねてきめ細やかな対応をお願い申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。

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