2020.10.09

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コロナ差別のない社会に向けて

ツイッターを通じて、広島県在住の看護師の方より、以下のようなご相談がありました。少し長くなりますが、ご容赦願います。

【ご相談】
「私は看護師をしているのですが、職場で「公明党さんに、お願いして何とかできないかね。」と言われています。内容は、コロナのクラスターが出る度に、場所を公表されています。今は経済もまわさないといけないし、各々が3密を守っての行動になっているので、クラスターの場所は公表しない方向にはいかないのでしょうか?そのことによって、その場所は倒産したり犯人扱い同様に世間からみられているのが、辛いです。医療においても、病院や施設の名前がでると、失業においこまれます。世間がGoToでも、私達医療関係者は、関係なく、県外マタギは勿論外食すら許されません。個人ならいいけど、家族や孫まで行かないでと、止めてしまわないといけません。どうか、今度は人を守るために考えて頂けないかと思います。」

1. 事実関係
 政府は、7月28日付厚労省事務連絡に基づき、クラスター発生場所について感染経路の追跡が困難な場合は店舗名を公表することを通知しています。
https://www.mhlw.go.jp/content/000652973.pdf
 これを受け、各自治体では基本的に店舗名等を公表しています。
(例)広島県HP(【感染拡大防止の観点からの店舗名の公表】の項目)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/2019-ncov/covid19-level-change.html
 しかしながら、上記ご意見にあるように、クラスター公表による社会的影響・風評被害等は避けられないと思われますので、政府に説明を求めました。

2. 政府への照会
小職より、政府に以下照会しました。
① クラスター発生場所の公表は、全ての施設が対象となるとの理解でよいか(例えば病院等も含まれるか)。
② 当該公表は、「場所の名称を公表する場合を含め、関係者の同意を必要とするものではないこと」とのことだが、このことを担保する法令はあるのか。また、広島のように、県や自治体において対応が異なる状態にあることを政府は是認しているのか。
③ 仮に公表がやむを得ないにしても、社会的制裁として捉えられないように十分な配慮が必要であり、個人情報の保護への留意だけでは不十分と思料。そのため、公表だけに留めず、当該場所においてしっかりとした対策を講じられ一定期間感染者が発生しなければ、クラスターの「解消」を行政として認める(あるいは公表する)ような措置も必要ではないか。

3. 政府回答
 これに対し 、厚労省より以下の通り回答がありました。
(①および②について)
1 感染症に関する情報については、感染症法第16条において、厚生労働大臣及び都道府県知事は感染症法に基づいて収集した情報について分析を行い、必要な情報を積極的に公表しなければならないとされており、関係者の同意を求める規定とはなってはおりません。
2 そのため、新型コロナウイルス感染症に関する情報の公表については、個人情報の保護に留意することを示した感染症法第16条第2項を踏まえ、厚生労働省において「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針」(高橋注:上記厚労省事務連絡別添)をとりまとめ、この基本方針に従った適切な情報公開を行っていただくよう、自治体にお願いをしております。
3 この基本方針においては、施設の種類にかかわらず、感染者に接触した可能性のある者が把握できない場合には、不特定多数と接する場所の名称を公表することとしておりますが、公表に当たっては、個人情報の保護に留意しなければならないことに加え、公表による社会的な影響についても十分に配慮する必要があることを明記しております。
4 そのため、各自治体におかれては、公衆衛生上の必要性と個人情報保護に係るリスクとを比較衡量しつつ、個別の実情を踏まえて、適切に情報公開いただきたいと考えております。

(③について)
1 新型コロナウイルス感染症が発生した場合における情報の公表の在り方については、感染者、濃厚接触者、医療・介護従事者等、更にはその家族に対する偏見、差別や感染リスクが高いと考えられる業種や事業者への心ない攻撃などの課題があるものと認識しております。
2 こういった課題について検討するため、新型インフルエンザ等対策有識者会議新型コロナウイルス感染症対策分科会の下で、「偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ」において議論・とりまとめを行い、差別や偏見の防止にも資するよう、自治体や相談窓口、企業、マスメディアなどの積極的な取り組みにつなげるよう検討しております。

4. 政府説明
 これを受けて、本日、厚労省に改めて説明を求めました。説明は以下のとおりでした。
・クラスター場所の公表にあたっては関係者を追跡するために当該場所から協力を得る必要から、実際に同意なしに公表していることは殆どない。
・ただし、どうしても協力が得られないケースがあるために、感染症法に基づき、感染拡大防止のため最終的には同意なくとも公表できることを担保している。病院などでは、院内感染防止などの観点から、自らの意思でHPで公表しているところもある。
・いずれにせよ、今回の指摘を踏まえ、公表によって生じる負の影響を避けるため、どのような手段がとりうるのか、ワーキンググループでの議論を今年中に取りまとめ、不利益のない形で対策を講じてまいりたい。

5.  まとめ
 クラスター発生が当局によってひとたび公表されれば、店舗などへの偏見や差別など風評被害等は計り知れません。
 新型コロナは誰しもが感染しうるものです。クラスターもどこで発生してもおかしくありません。であるからこそ、誰が感染しても、どこでクラスターが発生しても、その事実をもって実質的に社会的制裁に結びつくようなことは避けなければなりません。個人から地域までそうした理解を深め、偏見や差別をしない社会にしていく必要があると考えます。
 同時に、行政として感染拡大防止にあたり公表がやむをえないにしても、例えば上記のようにクラスター解消を含め認知するなど、保護のためにとりうる手段が必ずあると考えますので、関心をもってフォローし、働きかけてまいる決意です。

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