2020.11.26
国会議事録
令和2年11月26日 農林水産委員会 参考人質疑
○高橋光男君
公明党の高橋光男と申します。
本日は、お二人の参考人の皆様には、お忙しい中、国会までお運びいただきましてありがとうございます。
私、この国会、臨時会から農水委員会の方に所属をさせていただくことになりました。私の地元は兵庫です。兵庫も、まさに五国といいまして、日本の縮図という、多様な本当に農林水産業が営まれているところでございまして、私もこの委員会に所属させていただく中で、様々な生産の現場も、限られた期間の中ではございますけれども、お声を伺ってまいりました。
その中で、私、大変印象深かったのが、先日、兵庫の西に赤穂、あの赤穂浪士で有名なところございますね、そこに行ったときに、二十代の若手の新規就農者の方と懇談をしました。その二人は、県の農業大学校というのを卒業して、一旦民間企業に就職したんですけれども、赤穂のミカン農家のところに弟子入りをしまして、ブドウなど新しい品種の栽培にも取り組もうとされている。そのお二人にこの種苗法の改正について意見をお聞きしました。すると、意外にもですが、本当にもう憤りにも近いトーンで、なぜ前回の通常国会で通さなかったんだと、育成者の方はもう一万分の一の確率に懸けて新品種を開発しているのに、海外に勝手に持ち出されてもうおかしいと、その権利が守れるように早くこの種苗法を通してほしいというようなお声いただきました。一方で、私の事務所にも、本当に連日のように改正反対の御意見も様々いただいているところでございます。
この改正めぐりましては、本当に賛成、反対のいろいろな御意見が対立しているところでございますけれども、私は、もう何より大事なのは、やはり農業者、現場の皆様にとっての影響というものを十分に踏まえた、そうした精緻な議論だというふうに思っております。その意味で、本当に、本日はこの生産現場に携わるお二人が参考人としてお越しいただいたことは本当に貴重な機会であり、感謝申し上げたいと思います。
私、お伺いしたいのは主に二点でございまして、一点目は、やはりもうずっと今日も議論しているところではございますが、この度の法改正によって生じる農業者への負担というところについてでございます。経済的な負担につきましては先ほどございましたので、そちらはちょっと省かせていただくんですけれども、一方で、手続的負担と申しますか、やはり事務負担も大きくなるんではないかというようなところも今日議論されたところでございます。
この点、政府は、なるべく簡素化するために、その許諾をJAなどの団体がまとめて行うことや、農水省がその許諾の、許諾契約のひな形を示すというようなことを言われています。一方で、実際、そのような手続をそういうような形にすることによって本当にその事務負担が現場において生じないのかというところはあるかと思います。
そこで、金澤参考人にまずお伺いしたいと思いますが、まさにそういう現場の、今の、なされている中で、今回この登録品種が許諾制になるという中で、実際そういった事務手続の負担というのはどのようになるものか、その御意見をいただければと思います。
○参考人(金澤美浩君)
自己増殖が許諾制になると農家の負担が増えると言われていますけれども、実際、これで許諾を受けなかったという農家さんは一軒もございません。基本的に、そういう許諾をするための海外含めての一つの誓約書的な部分のフォーマットとかそういったものは随分前から構築されておりますので、そういう流れの中でのいろんな条文を書いた部分の中で確約書を交わすという流れです。
それと、先ほど来、農業者の経済的負担の部分もありますけれども、実際、花業界の場合ですと、苗代と、苗代とラベルに付いているロイヤルティーと、必ず添付して出荷するときには使ってくださいねと言われている部分と、一緒にやはり混同されている方が結構多いんですよね。だから、実際とすれば苗代と僅かなロイヤルティーの部分を合わせた部分が許諾された金額だというように誤解されている農家さんが結構多いんで、そこのところがしっかり分かれている。苗代、そしてラベル込みのロイヤルティーという流れに分けてはあるんです。
だから、実際、そういう流れの中できちっとしたそういう商業契約みたいな部分の中での、お互い間違いありませんねということで覚書を交わして許諾をしていくというような真摯なやり方が今非常にトレンドというか普通にやられています。だから、それに違反したらば大変みんなに迷惑掛かりますよと、お互いに、そういう形で向き合ってやっております。だから、支障はそれほど、今までやられてきていて、ないと思います、私の方は、花の方はね。
○高橋光男君
ありがとうございます。
せっかくなので、村上参考人にもその辺りですね、先ほど経済的負担の話ございましたが、手続的な負担といいますか、事務的負担についてどのようにお考えになられるか、お答えいただければと思います。
○参考人(村上真平君)
現行の種苗法でも今、金澤さんがされているように、かなりきちっとやっておられるわけですよね。この現行でいってなぜ問題なんでしょうか。現行をそのままやったらいいでしょう。
そして、先ほど海外に出るという問題に関しては、そのことに関してきちっと周知して、それをやった場合には非常に問題になりますということも含めてそういうことを周知するということと、海外できちっとした、取られそうなというか、本当に一つのすばらしいものが、海外にも出したいのであればきちっと海外でパテントを取る、そういうことをすればいいのであって、この許諾に関して一律に今、国のものでさえも取るという形にするということは、これは負担がないということは全然ないし、金銭的な、それから、今までないペーパーワークですよね。多分、金澤さんと一緒にやっているような方々というのはもう慣れているから問題ないですけど、普通の人たちはそんなに、農民、農家の方はそんなにペーパーワークが得意ではないですから、その辺に関してはどんなに簡素化するといってもまた新たな手間になるわけですね。
まあそういうことですが、そういうことよりは、僕はもっと本質的にはそういうものに対してそれは必要ないと、現行のところでやっていることで十分だろうというのが僕の意見です。
○高橋光男君
率直な御意見、ありがとうございます。
確かに、新しく許諾制が導入されるということになれば、この対象となるのがまさに登録品種に限ってというところでございまして、そこの正確な理解というのが非常に大事だということは今朝も様々議論があったところです。実際、今、その対象とならないような、一般品種でいえば、米でいいますと八四%、野菜九一%、果樹も、リンゴであれば九六%、ミカンは九八%が一般品種でありまして、そういう意味では、それら以外のところのこの僅かな部分で今回そうした許諾制になるんだというところのこの理解というのはしっかり私は政府に対しても、現場に正確な情報と申しますか、その制度の周知については取り組まなければならないというふうに思います。
続きまして、許諾制についてですが、これも様々議論があったところでございますが、それによって本当に海外流出が防止できるのかといったような点について続いてお伺いしてまいりたいと思います。
これ、国際法では農業者による自家増殖というのは登録品種であっても原則として育成権者が及ぶんです。で、例外的に制限ができるようになっています。一方で、我が国はこれまた逆でして、登録品種も含めて原則として育成者権が制限されている。つまり自家増殖が可能だというふうになっていて、例外として一部の植物、栄養繁殖性植物など一部の省令で定められているものについては育成者権が及ぶというふうになっております。したがいまして、今回の法改正案というのは、国際的な法慣行と我が国のこの制度を整合的にするものであるということで、その許諾制を導入することによって登録品種の海外流出を防止していくことが目的となっているわけです。
一方で、今日様々御意見ございましたように、自家増殖をそういう形で禁止したとしても、海外への流出を防止できるわけではないとか、逆に、その禁止せずとも現行法の範囲内で対応できるというような主張もあります。一方で、こういうのに対しては、自家増殖を許諾制にすることによって、増殖を行う者や場所の把握が可能になることによって違法増殖から海外流出の対応が可能になるというような御意見があります。
そういう中で、果たしてこの許諾制というものが実効的なのかどうかというところについて、改めて、海外との取引もされていらっしゃる金澤参考人にお伺いできればと思います。
○参考人(金澤美浩君)
海外での種苗の許諾制ですけれども、これはやはり、海外で許諾を受けた側が、実際その部分について許諾を受けたので特権的に販売をできるということなんで、受けた側も非常に海外の国でも一生懸命売るわけですよね。自分の商品と同じような権利を持つことによって、相手を違法増殖があればそこの中である程度、まあ取り締まるというわけじゃないですけれども、その中で独占権を得るということなんで、非常に利益といいますか、そういった部分も非常に力が入るわけです。
一般的にあるものであれば、日本のようなスキル性の高い農家さんが篤農家的な部分で、同じブドウを作っても作る方によって相当の開きが出てきて、その篤農的な部分での経済的な差というのはありますけれども、海外については、そういった部分も含めて、それは独占できるかできないか、そういったところでの販売ですので、しっかりその権利を海外でも守ってくれるんで、それが自分の利益につながると。
そういうことなんで、やっぱり許諾制やることによってお互いにきちっとした形での守り方ができるということが非常にここ何年か感じていることです。
○高橋光男君
ありがとうございます。
まさに、これ相手の国もある話でございますから、しっかり、その相手国政府においてもそうした品種登録されたものについてはそれがしっかり権利が守られるような仕組みというものが本当に必要であり、そうしたところにも日本としても協力をしていくべきであるというようなことなのかなというふうにも思いました。
その意味で、村上参考人にもお伺いしたいんですけれども、バングラデシュやタイ等で農業、農村開発従事されていて、まさに途上国のそうした政府の体制等についても詳しいというふうに思いますが。
確かに、この許諾制にすることによっても、そういうのは擦り抜けて勝手に持っていかれる品種についてはその権利なんか守れないという御主張をお持ちなのかもしれませんが、これに対して政府が、例えば、日本側の育成権者に対する支援については、その登録を円滑にするためには、例えば知的財産の専門家である弁理士の皆様に協力をしていただいたり、また様々、税関体制を強化しますというようなお話も今朝ございました。
そうしたことを日本としてもやるわけですが、特に相手国政府に対してそうした品種登録をしっかりと進めていくために必要な、日本としてできる、なすべき国際協力の在り方について御意見いただければと思います。
○参考人(村上真平君)
これは国際協力というよりは、どちらかというと国内の中で、それに育種された方々で、海外も考えているし、海外にはコピーされたくないという人たちに対して、きちっとそういうサポートをして海外で登録するという、そういうことを、これは、国際協力というよりはこの国の農業予算の中できちっと考えたらいいんじゃないでしょうか。それは協力ではなくて、もうどっちかというとロイヤーといいますか、その法律的な問題ですから。
○高橋光男君
分かりました。済みません。
○委員長(上月良祐君)
時間が参っております。
○高橋光男君
はい。
確かにそういった、何というんでしょう、契約面における特許制度と申しますか、そういったものをしっかりと確保しなければ権利も守られないわけでございますので、確かに、先ほども私申しましたように、弁理士の方始めとする専門家のそうした支援というのもなかなかまだ認知されていないわけでございますので、こういった農業品種に対してのその権利を守るという体制を日本として、政府としてしっかりそういったところも支援すべきだというふうに私は思います。
本日は貴重な機会、ありがとうございました。以上で終わります。