2020.12.03

国会議事録

令和2年12月3日 農林水産委員会

○高橋光男君
おはようございます。公明党の高橋光男です。
 本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。
 この機会に、我が国の漁業、水産業をお支えいただいている全ての関係者の皆様に感謝を、心から感謝を申し上げて、早速質疑に入らせていただきたいと思います。
 まず、大臣に伺います。本法律案の意義及び制度構築に向けた取り進め方についてでございます。
 この法案の目的は、既に今日も何度か御紹介されていますように、第一条にございます、国内外で違法に採捕された特定の水産動植物の流通を防止するため、漁獲証明制度を導入することによって、国内の流通及び輸出入の適正化を図っていくこと、そうすることによって、違法な漁業の抑止、水産資源の持続的な利用、そして漁業及び関連産業の健全な発展等に役立たせることです。
 実際、我が国では、密漁により、ナマコやアワビといった、こうした魚種の国内漁獲量が近年大幅に減少しています。一方、水産物は一度流通すると適法に漁獲されたものか違法なものか判別が困難です。そのまま放置すれば、水産資源の持続的利用に悪影響を及ぼし、適正な漁業者の経営を圧迫します。
 資源管理の徹底に関しましては、生産段階の規制を強化する改正漁業法が一昨日施行されました。他方で、国際的には、違法、無報告、無規制の英語の頭文字を取ったいわゆるIUU漁業の撲滅の実行が求められています。限りある海洋資源、水産資源の持続的な利用のためのIUU漁業の撲滅の必要性は、SDGs、これ、ゴール十四、海の豊かさを守ろうという中で明確に明記されておりまして、そしてまた、G20の大阪首脳宣言などでも確認されているところでございますが、そこで、まず大臣にお伺いします。
 この法律は、我が国のSDGs等の国際約束や改正漁業法との関係でどのような意義を有すると認識されていますでしょうか。また、本法が定める特定水産動植物は第一種、第二種と区別されていますけれども、これらの制度の違いや制度構築に向けた今後の取り進め方について、簡潔に御答弁願います。
○国務大臣(野上浩太郎君)
今月一日に改正漁業法施行されたわけでありますが、密漁対策としまして生産段階におけるこの採捕に関する罰則の強化を行いましたが、やはり流通段階でのこの規制の、流通の防止を図っていくという必要があります。
 また、国際社会におきましては、今御指摘のありましたSDGsですとか、あるいはG20大阪会合首脳宣言等でこのIUU漁業を撲滅する方向性が打ち出されておりますので、海外の違法漁獲物の流入を阻止する措置を講ずる必要があるということであります。
 これらを踏まえて、本法案におきましては、国内流通及び輸出入の適正化のための措置を講ずることによってこの流通防止を図るということにしているわけでありますが、このうち、特定第一種水産動植物におきましてはナマコ、アワビを想定しており、また、第二種の特定水産物におきましては、IUU漁業による漁獲が行われるおそれが大きい魚種ですね、イカ、サンマを想定をしているところであります。
 具体的な特定水産動植物の指定など制度の運用につきましては、学識経験者ですとか、あるいは生産、加工、流通団体などの実務経験者による検討会で議論を行った上で、さらに、水産政策審議会の意見を聞いて、最終的には政省令で定めることとなります。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 ただいま御説明いただいたこの法律案に基づく新たな制度、これを今後構築していくためには、現場の皆様の御理解、御協力が不可欠なことは言うまでもございません。そのためには、負担軽減を極力図っていくことが何より大事だと思います。
 この点、特定第一種水産動植物に関しましては、採捕した事業者、すなわち漁業者等には、日本国内におきまして一次買受け業者や加工流通業者などの取扱事業者に対して譲り渡すに当たっては、行政機関への届出に基づく漁獲番号等を伝達することが求められます。これを受けて、取扱事業者は漁獲番号を含む取引記録を作成、保存し、事業者間で伝達することが義務付けられます。
 こうした義務に関しまして水産庁は、法律が施行されるまでの期間において、伝達義務や取引記録義務に係る電子化に向けたシステムの開発など、現場での円滑な制度運用に向けた支援を講ずることを検討することと承知いたします。具体的には、政府において、施行までの二年間、最大二年間で制度を周知し、個人の方や中小零細企業も含めて全ての関係者がシステムを利用できるようにすることを目指しているものと承知いたします。
 そこで、現場の負担が過重なものとならないようにしていく観点から、幾つかお伺いしていきます。
 まず、高齢者への配慮です。漁業就業者は平均年齢が五十九歳と農業に次いで高く、約四割が六十五歳以上です。こうした方々を始め、従来から伝票などは手書きの紙で管理している方が多いのが実態です。
 電子的なシステムに不慣れな方々へのきめ細やかな支援が必要かと考えますが、どのような対策を取られる予定でしょうか。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答えいたします。
 情報の伝達や取引記録の作成、保存の義務を新たに課した場合に、関係者間の事務手続に一定の負担が生じる可能性があることは承知をしてございます。一方、電子化のメリットといたしましては、取引記録の保存が容易かつ負担も少なくできると考えております。
 こうした実情を踏まえまして、現場での円滑な制度運用に向け、特に高齢者の事業者の皆様の負担を大きくしない形での制度導入について、現場の実態をよく調査しながら検討していく所存でございます。
○高橋光男君
ありがとうございます。是非ともきめ細やかかつ丁寧な支援、周知徹底も含めてお願いしたいと思います。
 私の地元兵庫にも約五千人の漁業就業者の方、就業者の方だけでもこれだけいらっしゃいます。そういった方々全員に、高齢者のみならず、しっかりと対応していただくことをお願い申し上げます。
 続きまして、漁獲番号等の届出や取扱事業者への伝達を行う届出採捕者は、これは漁業者や漁業協同組合、まさに漁協が想定されているものと承知しますが、極力漁業者への負担を軽減する観点からは、個人ではなく団体、つまり漁協が主体となって事務管理を行い、そこにしっかりと支援していく形が適当かと思います。また、消費者に無償譲渡する場合や特定かつ少数の消費者に販売する場合など、こうした場合には例外的に取引記録義務や伝達義務の対象外とすべきと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山口英彰君)
お答えいたします。
 本制度は、現時点でも税法に基づいて取引伝票や領収書などの帳簿書類の作成、保存が事業者に課せられていることを踏まえまして、これらの伝票等を利用することで取引記録の作成、保存等に係る義務の履行が果たせるようにしまして、関係事業者の負担軽減に配慮した設計としているところであります。
 届出事業者は漁業者がなるわけでございますが、実際には、その漁業者は所属する団体がございます。漁業者の多くは漁協を通じて漁獲物の販売を行っておりますので、実際には漁協が代行することが多くなると考えております。
 また、御指摘のございました消費者に無償譲渡する場合や特定かつ少数の消費者に販売する場合については、検討会の取りまとめでも指摘されましたとおり、流通段階の混入の可能性が少なく、また経済的な利得も少ないことから、本制度の義務を対象外とする方向で検討したいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございました。
 漁協が代行していただく、またさらには、先ほど無償譲渡や少数の消費者に販売する場合は例外的に扱う方向だという明確な御答弁いただいたと思います。しっかり御対応をお願いします。
 そして最後に、システム導入に当たってのまさにその漁協への支援についてお伺いします。
 国は、来年度概算要求中のスマート水産業推進事業というものがございますが、この中で、漁獲証明等システム普及事業を通じて漁獲番号等を含む取引伝票の発行をするためのシステムの開発、また関連機器の普及を行い、トレーサビリティー、すなわち流通過程の追跡を確保していく計画と承知いたします。しかしながら、そうしたシステムの普及の現場となる漁協は補助金なしには導入できるところは少ないというのが実態です。
 そうした漁協の皆様の実態、実情に寄り添いながら、かつ具体的な工程表を明らかにして支援を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山口英彰君)
お答えいたします。
 この取引伝票の発行やその漁獲番号等の情報の伝達、これを行うに当たりまして取引における正確かつ円滑な情報の伝達を行う必要があるわけでございますが、この漁協等におきましてもこの電算システム等を導入しているところが多うございます。それらのソフトウエア同士の連携等によるシステムの構築を現在、今御紹介のありました事業等でその検討をしているところでございます。
 特に、こういう電子化といいますのは先行して実施している事業者もいらっしゃいますので、それらの取組を参考としつつ、各コンピューターメーカー等が有している既存の電算システムの間の連携に向けてどのような形でこの伝達等を可能としていくか、こういったことを検討していきたいと考えております。
 また、これも御指摘がございました、水産庁では現在、資源管理を推進する観点からスマート水産業を今推進、スマート水産業の構築を図っているところでございまして、その中で産地市場、漁協等の電子化を約四百市場等において進めようということで計画を立てているところでございます。このスマート水産業による水揚げ情報等の電子化、こういった中で漁獲番号の円滑かつ迅速な伝達についてどのようなことができるか、これについても検討してまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 しっかりと現場の方々に透明性を持ってこの作業、そうしたシステムの導入を進めていくことを重ねてお願い申し上げます。
 続きまして、私もこの大和堆での違法漁船取締り強化、また、違法操業によるスルメイカ等の国内外での流通規制についてお伺いしてまいりたいと思います。
 この日本海のほぼ中央にございます好漁場、大和堆における違法操業、これは我が国の排他的経済水域、EEZの中にございます。しかしながら、近年、特にイカの漁場が形成される六月から十二月にかけて、違法操業を目的として侵入しようとする中国や北朝鮮の漁船が確認されています。昨年の退去警告延べ隻数は五千百二十二隻、北朝鮮が約四千、中国が約千隻でした。今年は、十一月十八日現在、北朝鮮は一隻と激減するも、これに対して中国が四千百七十八隻と激増しています。
 国際法上、EEZは我が国の主権的権利が及びます。国内法においても、平成八年、EEZの権利行使等に関する法律が制定され、その第五条におきましては、農水大臣の許可のない外国人による漁業又は水産動植物の採捕は禁止されています。水産庁は、海上保安庁巡視船と連携しつつ、警告や放水等で対処していますが、九月末には、水産庁が漁業の安全確保のためこの地域における操業自粛を求めるといったような事態も起きており、例年に比べ深刻な状況となっています。
 こうした違法操業を撲滅するに当たっては、現場での取締り強化はもちろん、中国等への抗議、これ、先週の日中外相会談では、政府は中国に実効的な措置をとるよう申入れを行ったと承知しますが、この密漁によって採捕された水産動植物が国内外で流通しないように厳しく規制していくことが求められています。
 そのための具体策について、二点お伺いしたいと思います。
 まず、この特定第二種水産動植物が、これが対象になるわけですけれども、その魚種については、先ほど大臣も御答弁いただいたように、イカ、サンマが想定されていますけれども、この地域で違法操業で漁獲されたスルメイカ等も対象になるという理解でよろしいでしょうか。また、施行まで二年間ありますけれども、そうした魚種の国内流入を早期に阻止するためには、第二種水産動植物に係る制度については第一種よりも迅速に導入すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答えいたします。
 特定第二種水産動植物の具体的な魚種の指定に当たっては、学識経験者や生産、加工、流通団体などの実務関係者による検討会で議論を行い、またWTO上のTBT通報によって各国の意見も聞いた上で指定することになりますが、イカが指定される場合はスルメイカも対象になると考えてございます。
 IUU漁業の撲滅は喫緊の課題であることから、特定第二種水産動植物に係る制度については、特定第一種水産動植物に係る制度と併せて、準備が整った段階で実施できるよう対応を進めてまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 そして、続いてこの国際的な対応についてお伺いしたいと思います。
 国外におきましては、国際的なIUU漁業対策として船舶の入港拒否、また流通の規制等が行われております。国外というのは国際的なこの取組としてございます。
 まず、入港拒否につきましては、二〇一六年にFAO、国連食糧農業機関で発効しました違法漁業防止寄港国措置、いわゆるPSM協定というものがございます。これに基づき、寄港国、この寄港する、船が寄港する国、これは地域の漁業管理機関が作成するIUU船舶の一覧表に掲載されている場合など、船舶がIUU漁業等に従事したことの十分な証拠を有する場合には入港を拒否することができます。しかしながら、中国や北朝鮮は加入していません。
 一方で、昨年十一月の国連持続的漁業決議におきまして、我が国の提案により全てのPSM協定未加盟国への加入を求めるとともに、特に巨大な水産物市場を有する寄港国が早期加入することの重要性を確認しています。この場合、中国などそうした国に当たるかと思います。そこで、中国や北朝鮮に対しPSM協定に加入するよう外交的働きかけを強化すべきではないでしょうか。
 また、韓国では、EUのIUU漁業規則に基づく違法漁船の制裁警告を受けて、特定水産動植物への漁獲証明制度を導入しています。一方で、韓国は大和堆地域では違法操業を行ってはおりません。一方で、特定水産動植物の漁獲証明制度を有していることから、こうしたことを踏まえて、スルメイカを始め、第三国による違法漁業のおそれの大きい魚種については共同で漁獲証明の対象とするよう働きかけ、日韓協力の下で日本海において違法に漁獲される魚種の流通を制限していくことが有意義と考えますが、いかがでしょうか。大臣の御答弁を求めます。
○国務大臣(野上浩太郎君)
いわゆるPSM協定につきましては、今、六十七か国、我が国も含めてでありますが、六十七か国で締結をしておりまして、我が国としてもこの締結国を増加させていくということは重要であると考えております。
 委員御指摘のとおり、令和元年の国連総会の持続的漁業決議におきまして、PSM協定の早期締結を中国や北朝鮮等に対しより強く奨励するパラグラフの追記を提案し、これが採択されたところでありますので、この未締約国につきましては、引き続き、二国間対話の場面ですとか、あるいは国連等々の様々な場面で働きかけを行ってまいりたいと思います。
 また、もう一点のお尋ねの件でありますが、本法案が成立いたしますと、我が国も韓国と並んでこのIUU漁業撲滅に向けた体制が整いますので、日本海におけるIUU漁業への対応についても関係国と協調して取り組んでまいりたいと考えております。
○委員長(上月良祐君)
時間が参っております。
○高橋光男君
はい。
 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

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