2020.12.08

国会議事録

令和2年12月8日 農林水産委員会

○高橋光男君
公明党の高橋光男です。本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。
 私、まず和牛肥育農家支援についてお伺いしたいと思います。
 コロナ禍により、和牛、とりわけ高級ブランド牛、私の地元兵庫でも但馬牛、神戸ビーフの枝肉価格が影響を受けています。
 お配りした配付資料一を御覧ください。これは、本年四月以降のブランド牛の枝肉価格と肉用牛肥育経営安定交付金、いわゆる牛マルキンの交付額、そして一頭当たりの実質負担額の推移を示したものです。
 まず、枝肉価格につきましては、四月以降、いずれの和牛も持ち直しつつありますが、但馬牛の半年間の回復割合、これ一二七%、四月と十月の価格を比較したものでございますが、これは、和牛の東京市場価格一三二%、また、他のブランド牛、仙台牛一三一%、飛騨牛一三二%と比べても低い水準にあります。一方、国は四月から牛マルキン事業の生産者負担金を実質免除していただいております。但馬牛も一頭当たり全国最高額の九万五千円を免除していただいているところであり、これは大変有り難く思っております。
 しかしながら、それでも農家には依然多額の負担額が生じています。直近九月も約十五万六千円の負担が生じておるところでございまして、他のブランド牛と比較してもその赤字額は顕著となっています。生産者の積立金自体も既に枯渇しており、このままの状態が続けば、肥育農家の減少も避けられない危機に直面していると思います。
 もちろん、国はほかにも増頭奨励金や様々な需要喚起策などの支援を行っていただいているところでございます。一方、コロナの先行きが見通せない中、こうしたブランド牛ごとの実態を踏まえたきめ細やかな支援が今後極めて重要になると考えます。
 つきましては、是非、但馬牛のように厳しい環境に依然としてある和牛生産者への支援を国としても最大限継続していただくようお願いいたします。少なくとも、当面の間は生産者負担金の納付免除期間を延長すべきだと思います。もし仮に免除がなくなるような事態になれば、但馬牛などは大打撃を受けます。そのような場合でも、全国一律で免除にするというようなことではなくて、産地の実情に応じた柔軟な扱いをしていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(野上浩太郎君)
牛マルキンの生産者負担金の納付猶予につきましては、当面六か月ですね、すなわち四月から九月まで行われることとしておりましたが、肥育農家の資金繰りの観点、今先生御指摘の観点等々もあって、十月以降も延長することといたしております。
 このような中で、最近の和牛肉の枝肉価格は十月には昨年とほぼ同じ水準まで回復しておりますし、肥育農家の資金繰りは改善しつつあると考えられますが、実際に子牛価格も一頭当たり八十万円ほどまで上昇している状況であります。
 このような状況のために、牛マルキンの生産者負担金につきましては納付再開を視野に入れて検討を始めているところでありますが、各都道府県の状況もありますので、各都道府県の御意見を聴取した上で納付を再開する具体的な条件等については検討を行ってまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 まさにそうした各都道府県の実情をよくよく踏まえた御対応、よろしくお願いいたします。
 特に但馬牛は、この九万五千円なくなると二十五万円になります。今、購買意欲がこの子牛については伸びているというような話、今日もありましたけれども、一頭八十万円する中で二十五万円負担しないといけないというようなことになれば、これは大きな負担になりますので、そうした増頭意欲というものをそぎかねないということを、こうした状況をしっかりと政府としてもフォローしていただいた上での御対応を是非ともよろしくお願いいたします。
 そして、私、この但馬牛について御紹介したのは、単に地元の牛だからという理由だけではございません。
 兵庫美方地域の但馬牛システムというのは、平成三十一年の二月、畜産分野で日本初の農業遺産に認定されました。これは、全国に先駆けた牛籍簿、牛の戸籍簿の整備や、美方郡という限られた郡内産にこだわって和牛改良を行うことで独自の遺伝資源を保全するなど全国有数のシステムが評価されたものです。この取組は、人と牛が共生する但馬牛の飼育システムとして、昨年十月、世界農業遺産認定に向けてFAOへ申請がなされたところです。
 政府には、是非、コロナ禍にあっても我が国が世界に誇る但馬牛のようなこのブランド牛、こうしたものをしっかりと次代に継承していくためにも、世界農業遺産の早期認定に向けた働きかけの加速化や、こうした高級ブランド牛の魅力、歴史を国内外に発信し、輸出促進等に向けた一層の支援をお願いしたいと思いますが、取組状況並びに支援方針につき、御答弁願います。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答えいたします。
 御質問の兵庫美方地域における但馬牛飼育システムにつきましては、昨年二月に日本農業遺産として認定されるとともに、世界農業遺産の申請承認がなされ、委員御指摘のように、昨年十月に国連食糧農業機関、FAOに申請を行ったところでございます。FAOからは、牛籍簿などの知識システムは高く評価されているものの、畜産と水田農業との関連性を明らかにすべき等の指摘があり、現在、継続審査中となっております。
 引き続き、世界農業遺産への認定に向け、FAOからの指摘に対し、申請地域とも連携をして、迅速かつ適切に対応してまいります。
○高橋光男君
ありがとうございます。引き続き御対応よろしくお願いします。
 そうしたブランド牛のこうしたものというものは、まさに政府の最近の五兆円輸出戦略におきましても和牛がこの重点品目とされたように、しっかりと和牛肥育農家がこのコロナ禍に負けないように支援をしていただく必要がございます。生産基盤を強固にしていく様々な支援、既にやっていただいているところでもございます。畜産クラスター事業、強い農業づくり交付金等、こうした予算をしっかり確保していただいて、来年以降も継続していただくことをよろしくお願いいたします。
 続きまして、鳥インフルエンザ対策についてお伺いしたいと思います。
 先月、香川での一例目の発生以降、福岡、兵庫、宮崎、奈良、広島などで発生しており、急速にこの感染が全国的に拡大しているところでございます。対応に当たられている関係者の皆様には、深く感謝を申し上げたいと思います。
 公明党としましても、先週二日、野上大臣に緊急対策の申入れを行ったところです。既に発生した地域においては、まずは被災農家への支援、すなわち、手当金や互助基金等の支給、風評被害対策、鶏卵、鶏肉の輸出再開等に向けた支援、これはしっかりと行っていただきたいと思います。同時に、対応に当たっている自治体職員等への心身のケアも支援願います。
 また、今後、更なる全国的な拡大の可能性に備え、早期通報の徹底に加え、自治体間での経験の共有など、しかるべく行っていただきたいと思います。特に、経験の共有は、今年は福岡、兵庫、広島など、これまで未発生の県で発生していることからも重要かと思います。
 大臣自身も、今年十月、そうした都道府県の関係団体向けの会合に参加された、この鳥インフルエンザも含む防疫対策についてそうした会議を行われたというふうに思いますが、書面の通知のみならず、そうした会議を改めて行うとか、今年の事態を踏まえまして防疫演習といったようなものを実施していただくことも必要かと考えます。
 つきましては、政府の最新の対応状況並びに対処方針についてお伺いします。
○国務大臣(野上浩太郎君)
今シーズンの高病原性鳥インフルエンザの発生につきましては、既にこれで国内十九例目の発生となっております。先週の段階で殺処分した鳥の総羽数は二百万羽を超えておりますので、これは二〇〇三年以降で最大となるということでありまして、大変厳しい状況が続いていると認識をしております。
 このような中で、先週の十二月二日に公明党鳥インフルエンザ対策本部、農林水産部会の先生方にも農水省にお越しをいただきまして、率直に意見交換をさせていただきました。その緊急申入れも踏まえまして、早期通報を含む飼養衛生管理の徹底、これは引き続き指導してまいりたいと思いますし、経営支援対策の周知徹底など、これ高い緊張感を持って対応してまいりたいと思います。
 また、昨日、防疫対策本部においては、各都道府県から確実に各農場の飼養衛生管理者に連絡を取って、それから飼養衛生管理の自主点検を実施してもらった上で、その内容について各都道府県から報告を求めるように緊急指示を行ったところであります。
 何よりも迅速な飼養衛生管理の対応が必要なわけでありますが、これまで発生した県に専門家職員等々も派遣をしております。物的、人的支援も行っておりますので、これまで様々得られた情報、経験につきましては、適切に各県とも共有できるように取り組んでまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 今回の鳥インフルエンザの発生地域の特徴として、ため池の多さが指摘されているところでございます。実際、私の地元、兵庫は、渡り鳥が集まりやすいため池が二万四千か所、これ全国最多です。広島が第二位、また香川も第三位の多さとなっています。
 十一月二十四日付けの家きん疾病小委員会の緊急提言におきましては、ため池等の地理的条件から野鳥の集団が持ち込んだウイルス量が環境中に高まっていることなどが想定されると指摘されています。
 こうしたことから、兵庫県でも、発生しました淡路市のみならず本州サイドにおきましても、JAや全農さんが中心となって鶏舎周辺の消毒や金網、防鳥ネットの設置などが行われているところでございます。
 そして、こうした防疫対策は、提言でも指摘されていますように、発生農場周囲の主要道路に加えまして、ため池周辺の消毒や野鳥対策なども含めた、広範囲にわたる地域一体となった取組が求められているところでございまして、国としても、県の自主的、積極的な対策を最大限支援していくべきかと思います。
 つきましては、そのための必要な予算、しっかり確保するとともに、県独自の事業に対する特別交付税措置も含め、万全の支援を行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答えいたします。
 委員も御指摘いただきましたが、十一月二十四日、家きん疾病小委員会の専門家の皆様に御議論いただきまして、香川県の三豊市で続発状況を踏まえまして、地域における消毒等、ウイルス量を下げるための取組について、地域の関係者、住民が一体となって実施していくとともに、引き続き、ウイルスを農場に侵入させないための取組を実施していくことが緊急提言をされたところでございます。
 農林水産省としては、野鳥などにより農場へのウイルスの侵入防止に必要な防鳥ネットや、人、車両に対する動力噴霧器の整備、さらにため池や周辺の緊急消毒について、消費・安全対策交付金等により支援をしているところでございます。また、消費・安全対策交付金等の地方負担分につきましては、あるいはまた関連して地方団体が実施する単独事業につきましては、特別交付税措置が講じられているところでありまして、引き続き、所管する総務省とも連携をして対応してまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 初めて経験している県などにおきましては、国がこうした措置をとれるといったようなことがなかなかまだ周知されていないような実態もあろうかと思いますので、引き続き、国として御対応のほど、よろしくお願いいたします。
 続いて、CSF、豚コレラ対策について、ワクチンの接種体制及び手数料についてお伺いしていきたいと思います。
 現在、豚熱の予防的ワクチンの接種は、家畜伝染病予防法に基づき、都府県の職員で獣医師でもある家畜防疫員が行っています。しかしながら、各農場において、繁殖豚等は六か月間隔、肥育豚等は子豚期に一回と、定期的かつ的確なタイミングでの接種が必要であり、免疫効果の確認も半年ごとに求められています。
 一方で、家畜防疫員の数は限られておりまして、国のアンケートによれば、二十四都府県のうち十の団体が確保できていません。背景として、家畜防疫員になるには公務員としての任命が必要となりますが、所属団体の兼業禁止、勤務先への休暇申請などがハードルとなっており、担い手が不足している状況です。
 こうしたことから、現在のこの家畜防疫員限定によるワクチン接種を改め、民間獣医師による接種を可能とし、適切なタイミングで免疫付与することができるような体制にする必要があると考えます。そうした体制を各都府県において整備されるよう、国として、予算的手当ても含めて、責任を持って対応すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(新井ゆたか君)
豚熱のワクチン接種につきましては、ワクチンの用法、用量では、一か月から二か月の間での接種を推奨しているところでございます。
 しかしながら、飼養豚へのワクチン接種を開始した昨年十月以降、専門家の方々に、飼養豚へのワクチンの接種時の日齢と、それから免疫付与率の関係について解析をしていただきました。委員御指摘のとおり、まさに適切なときに打つということが大変重要でございますけれども、そういう観点から、専門家からの御指摘としては、五十日から六十日齢での接種が望ましいという結論を得たところでございます。これが八月三十一日でございます。
 これを踏まえまして、ワクチン接種のために農場へ循環する頻度を従来の月一回から月三回程度に高めるということが必要になってまいりました。このような状況を踏まえまして、私どもも確実かつ継続的なワクチン接種体制を構築していかなければならないと考えているところでございます。
 このため、初回接種を除く豚熱のワクチン接種につきましては、令和二年度中に防疫指針を改正をいたしまして、面的かつ確実な接種が行われていること、それからワクチンの横流しができないような厳格な管理が行われるということを前提といたしまして、都道府県職員である家畜防疫員に加えまして、都道府県知事の管理の下に置かれる一定の要件を満たした民間の獣医師が実施するということで制度を改めたいというふうに考えているところでございます。これにつきましては、予算的手当ても含めまして確保してまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 今そうした、本当に、現状を踏まえると体制強化というものは必要であり、民間獣医師さんの皆様のお力も借りないといけないわけでございますので、しっかりと国としてそうした体制を組んでいただくようにお願いいたします。
 最後に、ワクチン接種の手数料についてお伺いします。
 かつて、ワクチン接種は、国が全国的に管理、制御する形で実施されていました。しかしながら、地方分権の流れで都道府県の自治事務とされました。その結果、配付資料二にございますように、ほぼ同一のワクチンを接種する際の一回当たりの手数料、これが大きく都府県間で格差が生じております。これ、ゼロ円から三百五十円まで、これは極めて大きな差があるところでございます。これ一頭当たりでございます。この点、国は各都府県の条例で定められているので是正できないとしていますが、このままでは安定的な豚熱対策を推進することは難しくなると言わざるを得ません。
 国として、各都府県任せにするのではなくて、生産者の側に立ち、現場に寄り添った改善を図るべきではないでしょうか。少なくとも、都府県別料金の公表のみならず、比較検証を行い、特に価格が高い県におきましては是正に向けた技術的助言を国が行うなどして横断的な取組を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(新井ゆたか君)
まず、豚熱のワクチンに対します国及び地方公共団体のそれぞれ助成について御説明をさせていただこうと思います。
 家畜防疫員が行う豚熱のワクチンの接種費用につきましては、都道府県が負担をするワクチンや資材の購入費の半額、家畜防疫員の旅費の全額を国が、家畜伝染病予防費も法定で補助をしております。その残り、都道府県の負担分につきましては五分の四について特別交付税を措置をしているということでございます。残りにつきまして、各都道府県がそれぞれの実情に応じまして、生産者が受益者負担ということで手数料を徴収しているという制度になっているところでございます。かつて、豚熱のワクチンを打っていたときもこの制度自体は同じでございまして、各県の条例に基づいて手数料を徴収していたということでございます。
 今回の豚熱の接種につきましても、各県におきまして都道府県議会の議決を経てそれぞれ手数料条例が制定されているということでございますので、国が一律にどの程度の価格が適切かということを申し上げるのはなかなか適当ではないというふうに考えているところでございます。しかしながら、国が一定の補助を入れているということ、それから生産者の方々からも都道府県ごとの手数料に差があるのはなぜかという御指摘がありましたので、当省で手数料を調査いたしまして、委員配付していただきました資料をホームページに、まずは情報の透明化を図ったところでございます。
 都道府県によりましては、既に手数料の積算の根拠につきまして、生産者の方、農家の方に説明しているという事例もございます。農水省としては、その他の都府県におきましても生産者にしっかりと根拠が説明されるように助言してまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 確かに都府県でやっていただいている、これが原則なわけでございますが、やはりその生産者の側に立った、まさにこれからまた改善というものが必要になってくるというふうに思われますので、その説明責任を果たしてもらうことについても、国としてしっかりその都道府県の対応を求めていく、技術的助言をしていく、これをしっかりやっていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

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