2021.02.17

国会議事録

令和3年2月17日 国際経済・外交に関する調査会

○高橋光男君
公明党の高橋光男と申します。
 本日は、三名の参考人の皆様、非常に示唆に富む御説明いただきまして、ありがとうございました。
 私も実は二年前まで十七年ほど日本の外交官として働いてまいりました。ポルトガル語の専門家として、アフリカ、ブラジル、そういったような国々で国際協力をまさに中心に仕事をさせていただきましたので、これから日本がこの生物多様性守っていくに当たって、国内はもちろんのこと、当然国際社会においてどのような貢献を果たしていくのか、こうしたことについて非常に関心を高く持っております。その観点で、今日は時間限られてますので、三名の参考人の方々にまとめて一つずつ御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、道家参考人にお伺いします。
 この愛知目標、十年がたったわけです。世界、最も成功したといわれる今回のこの愛知目標。これからこの十年をどういうふうにしていくのかと、国際社会としてどのように取り組んでいくのか、これ非常に大事な課題だということです。
 国際的には、二〇一七年、国連総会におきましても、持続可能な開発のための国連海洋科学の十年というものが今年から始まりました。二〇三〇年までの十年間に重点的に取り組むものとして、研究開発、海洋事故での早期警報システムの構築、観測システムの基盤強化、人材育成等が掲げられています。
 まさに、SDGs、ゴール十四、海の豊かさを守ろうと、これを達成していく観点からも、本当に日本としてどのような貢献を行っていくべきなのか。これはまさに本当に大事な課題だというふうに思っておりますが、先ほど、地球環境ファシリティーにはこれ日本が最大の貢献国だというふうにおっしゃられましたが、これまでの日本のこの分野での国際協力のやり方、基金に投入してやっていくという方向性もさることながら、やはり二国間での技術協力中心とする、先ほど申し上げた重点的なことについての取組についてどのような貢献ができるのか、こうしたことについて御意見をお伺いできればなと思います。
 続きまして、東梅参考人にお伺いします。
 昨年八月に、モーリシャスでの油流出事故、これからおよそ半年がたちました。同国の首相が表明していますように、この事故につきましては我が国の責任とは考えられていませんけれども、日本として、中長期的な視点から、一つ、海難事故防止、二つ、汚染された環境の回復、三つ、地域住民、特に零細漁業者の生計の回復、こうしたものについて協力をコミットしています。
 WWFも、将来を見据えた観点から支援方法を探っていくというふうに表明されたと承知しておりますけれども、この政府間での協力、また国際機関、NGO等との協力等、これは協調してやっていく必要があると思いますが、どのような課題があるのか、まさにその観点から御意見をいただきたいと思います。事故の再発防止であったり、また一たびこうした事故が起きた場合の環境回復や生物多様性の保護に向けた国際協力の推進の在り方についてお伺いします。
 最後に、森下参考人にお伺いします。
 私も最初、IWCのことをお伺いしようと実は思いました。しかしながら、お伺いしていてちょっと考えを変えました。サンマについて言及されたところが非常に関心を持ちました。
 まさに今、このサンマにつきましては、北太平洋漁業委員会の年次会合というのが今月二十三日から二十五日、これ漁業枠の削減について日本が提案して、中国や台湾も同意する可能性があると一部報道がなされています。
 先ほど参考人は、サンマが捕れなくてもサバやイワシが捕れ始めているというようなお話がありました。これは、漁業者の立場からして、実際そういった転換をして果たして事業を継続していくことができるのかという点についてお伺いしたいと思います。また、ICTの活用といったようなことも、これ日本の技術が非常に活用できる余地があるのではないかというふうに思います。
 こうしたことであったり、あと、国民意識の涵養、醸成といった観点からは、どうしても捕鯨のことをお伺いしてしまうんですが、森下参考人も、一旦、国際的な反捕鯨キャンペーンの「ザ・コーブ」という映画に対して、日本の女性の監督が「ビハインド・ザ・コーブ」というドキュメンタリー映画を出した際にはインタビューにもお答えになられたというふうに承知していますけれども、こうした民間の取組、そしてまた、ある識者の方には、この捕鯨をユネスコの産業遺産に登録すべきだというような意見もあります。
 官民が果たし得る役割について率直な御意見をお伺いしたいと思います。以上です。
○会長(鶴保庸介君)
それでは、順番にお願いします。道家参考人。
○参考人(道家哲平君)
高橋委員、御質問ありがとうございます。
 それでは、日本が、これまでの国際貢献、そしてどんな貢献ができるかという御質問にお答えしたいというふうに思います。
 日本は、ODAもそうですし、あるいは多国間のGEF、地球環境ファシリティーとか、あと、生物多様性条約でいうとジャパン・バイオダイバーシティー・ファンド、生物多様性日本基金というものを、五年間で五十億円という、条約としては比較的、かなり大きい金額の支援をして、そこで途上国の人材育成や能力養成ですね、そこの支援をしました。ここは非常に大きな成果を出して、ジャパン・ファンドに感謝して行われた事業というのは非常に過去多く出されています。
 ただ、再拠出についてはまだ全然議論というかしていなくて、あっ、つまり、COP10から愛知目標のこの期間中の拠出だったので、その次の十年どうするかというのは、ここは日本のリーダーシップの示しどころではないかなというふうに思っています。途上国は、やはりこの人材育成や能力養成に関するニーズというのは非常に今なお高いだろうというふうに思っています。
 海洋科学等に関して言うと、これができたらすばらしいなと思うのは、その海洋保護区を日本としてもどう設定し、あるいはその評価、科学的なその効果ですね、というのを見せていくということが大事なんではないかなというふうに思っています。
 たしかWWFさんがヨーロッパとかでやられている事例ですと、その海洋保護区を設定することで、その中の魚の大きさもどんどん増える、大きさが増えると卵を産む数も増えるので、要は生産性も拡大する、それによってより大きな魚種を捕獲できるようになるから漁業者の収益も上がると。
 そういったプラスの海洋保護区を設定することの効果というのをちゃんと示して、そして拡大をというのが議論に、三〇%のですね、そういった議論になっていますので、日本においてどんな手法でどういう設定をして、それがどういう成果を出したかと。こういう幾つもの海洋がぶつかる生産性の高いところにおける海洋保護区の効果とか、それは途上国にも、東南アジア等にも広がる海には多分適用可能な、知見としては非常に大事なところじゃないかなというふうに思っています。
 あともう一つ、海につながる陸の技術としては、プラスチックの排出の多くは、その陸地における管理が不適切なために海に流れ出てしまうというようなことがあります。ですので、ここは日本もまだ課題はあるのかもしれませんが、日本の技術でその陸地におけるプラスチックの適切な管理というのをすることで、海に流れ出る海洋プラスチックの課題等についてよりポジティブな貢献をしていくというような要素も可能性としてはあるのではないかなというふうに感じました。
 以上です。
○会長(鶴保庸介君)
続いて、東梅参考人。
○参考人(東梅貞義君)
高橋議員、御質問ありがとうございました。
 モーリシャスの件、私も非常に大事な問題だと思っております。
 事件が起きてから、私たちWWF、環境NGOとしてしたことがあります。まず一つは、現地の環境NGOに連絡を取って、何が起きているのか、何に困っているのか、どういうことを支援したいと思っているのかということを情報収集しました。いろんなズーム会議を使ったり、つてをたどりながら、どういう方から情報を提供していただけるかと考えました。
 二つ目にしたことがあります。それは、今回は、用船者という立場で、事故原因者そのものではありませんけれども、商船三井という会社と、企業さんと対話の機会をいただきました。どういうふうに問題を捉えていらっしゃるのか、どういう回復に導こうと考えているのか、それも、直接関わっていらっしゃる方のお立場から聞かせていただきました。
 それから三つ目、今回は日本の緊急支援隊ということでいち早く現地に支援を届けています。その大きな役割を担っておられるODAの担当部署であるJICAの方々からも、対話の機会、情報交換の機会をいただきました。そこで見えてきたことがあります。最初は、油汚染によってマングローブが汚染されている映像がニュースに流れました。それから、サンゴ礁が船体によって破壊されているのが見えてきました。私が当初思ったのは、この二つを解決することが大事なんだろうというふうに思っていました。
 一方、現地からいろいろ情報収集、それは、現地のNGOもですし企業さんもそうですし、それから、ODAのお立場の省庁からもお話を聞くと、その影響はあるけれども限定的である、つまりは、油汚染だけを見て考えるのではなくて、油汚染以外にも、サンゴ礁が減らした原因が何であるのか。実は減っているんです、これ。
 減らした原因は、やはり陸上の農地開発が進み、そこからの汚染物質が流れ、残念ですけれども、日本でも同じように沖縄でも、農地が悪いわけではないです、でも、農業者の方のお力だけではなかなかできなくてサンゴ礁が減っているという現実があります。それと同じことがモーリシャスでも起きているというお話を伺いました。その農業以外にも、やはり陸上でいろいろ土地利用を変えているということによって、本来は観光立国であるモーリシャスの宝であるサンゴ礁であったり、海の中の生き物に影響が出ているということが分かりました。
 そうなると、今度は、次に応援すべきは、当然、油汚染で影響を受けたサンゴ礁、それからマングローブのモニタリングも必要です。でも、そこだけにとどまることなく、モーリシャスの本当に生活、SDGsを達成するために、海の豊かさであるサンゴ礁とそこの生き物、それから沿岸の漁業資源も、今どんな状態で困っているのか、次にどういう対策が必要なのかというところを応援することが、同じ又はそれ以上に重要だということが見えてきました。
 ということで、私ども民間団体ですので支援の規模は小さいですが、篤志家の方から御支援をいただいた上で、次の三年間に、こういうモーリシャスの海に影響を与えているものが油汚染以外にどういうことがあるのか、それはどのくらい悪化しているのか、今後必要なことはどういうことであるのかという、そういう調査を支援しております。
 ただ、この調査結果というのは、NGOの間での協力だけではなくて、それをまた違うお立場でモーリシャスの環境回復を支援されようとしている企業さんとも共有したいと思っています。それから、もっと大きな役割を担っておられるODAで今後、モーリシャスの支援策、その油汚染回復だけではないところに支援されるときにも私たちのその努力である調査結果というのも共有させていただこうと思っております。
 以上です。
○会長(鶴保庸介君)
それでは、森下参考人、お願いします。
○参考人(森下丈二君)
どうも、質問をいただき、ありがとうございました。
 サンマあるいは北太平洋漁業委員会との関係なんですけれど、海の中で卓越種というか優越種というか、そのとき一番捕れるものがどんどん替わっていくという現象、これは先ほども申しましたレジームシフトというのが起こるわけなんですが、かつてはニシンがたくさん捕れた、イワシが捕れた、サバが捕れたという形で、どんどんどんどん替わっていくわけですね。
 日本の、これについて、替わったものに漁獲をシフトしていくあるいは適応していくというときに障害になるもの幾つかあるんですけれど、まず一つは、既にサバならサバを捕っているほかの漁業者とのあつれきが起こり得る漁業調整問題ですね。ですから、あなたたちは今までサンマ捕っていたじゃないかと、で、サンマがいなくなったからサバ捕らしてくれといったって、私はずっとサバ捕ってきたんだから新たに参入されても困ると、こういう感覚がどうしてもあるわけですね。
 日本の水産行政というのはある意味では調整行政で、いろいろな人たちをいろんな場所で、いろんな魚種をどういうふうになるべくけんかしないように捕るかというふうに古来ルールを作ってきたわけです。それが形になったものとして漁業権制度であるとか許可制度ということがあって、裏返して言えば、なるべく人の陣地に入らないように、それぞれ許可なり漁業権をしっかり制限しているところがあります。
 日本の漁船は非常に、みんな同じ。例えば、サンマ棒受け網漁業に参加する船で知事許可漁業であれば、大きさこれぐらい、形これぐらいと本当に同じなんですね。マグロはえ縄漁業であれば、みんな本当、トン数もみんな同じ、形一緒。
 これ、例えば中国へ行くと、もう千差万別になります。あるいは、ヨーロッパの漁船になりますと、はえ縄はできるトロールはできるという形で、そのときの状況によって漁具を変えていくということも平気でできるような船を造るんです、最初から。日本の場合は、漁業調整が基になってそういうところが比較的しにくい形になっている。それはもちろんメリットがあったわけですけれど、特に日本の場合、沿岸にたくさんの漁業者がいらっしゃって、沖合でも漁船の数が多いという中で、外国みたいにこうやって自由にしちゃったらいいじゃないかと言った途端に大変なことになりますので、非常にこれ難しい問題です。
 今回のその二〇一八年の十二月の漁業法大改正の下では、資源管理措置について協力をしてくれる漁業者あるいはしっかりとした実績を持っている漁業者については、例えば船の改造について規制を緩めるとか、そういうような方向性も出ております。これで全てが解決されるわけじゃないですけれど、そういう形でやっている。
 あるいは、サンマの話についても、捕れなくなったからすぐサバかという話以外に、実は回遊ルートが大分変わっております。気候変動がありまして、日本の沿岸からもうずっと沖合に魚群が形成されています。知事許可の船であると、そこまで行けないんですね。そういうものについて、大きな船あるいは公海操業というのも試験的に始めたりとかということで、幾つかの方策を組み立ててやっている。それの組合せでどういうふうに柔軟性を確保していくかということだと思うんですけど、意識の中で、とにかく魚というのはどんどん変わり得るんだと、特にこれから気候変動なりでこういう変化というのは加速していくと見ていいと思いますので、それに追い付くような制度、規制、柔軟性というものを常に進めていくというのが大事になっていくのかと思います。
 鯨の方ですが、「ビハインド・ザ・コーブ」という、あるいは、あれですね、捕鯨の、反捕鯨反論映画だったわけですけど、基のが「ザ・コーブ」という映画で、「ザ・コーブ」の方にも私出ちゃっているんですけど、出たいと言ったわけではないんですけど、「ザ・コーブ」はアカデミー賞の何かドキュメント賞をもらって、私、だからアカデミー映画に出ているんですけれど、悪役です、もちろん、出ているんですけれど、こういうやはりもののインパクト、皆さんの本件に関するイメージをつくっていくインパクトというのは非常に大きいですね。
 政府の発信というものは、私も政府にいましたからですけれど、いろんな形で情報出したりとかやるんですけれど、政府というのは基本的に、商売と情報発信、やはり民間に比べるとどうしても柔軟性が欠けるというか、柔軟にできない部分があります。もちろん責任も非常にありますから、インパクトだけを狙ったような情報発信というのはやっぱり政府というのはなかなかしませんね。事実関係として間違っていないこと、あるいは、後でその間違いのそしり、あるいはバランスが取れていないというようなそしりを受けるような情報についてはなるべく最初から出さないというような形をして、まあ応答要領とかいう言い方が政府の中でありますけど、聞かれたら答えるという感じでやって、これはこれで大事だと思うんですが、政府がそういう格好で透明性を高めるというのは大事ですが、他方、やっぱり様々な発信源からもっとそういう意味では、正直なという言い方がいいのか分かりませんけれど、まさにどこがポイントであるのかということ、あるいは自分の思いが強い部分についてしっかりと発出するということは、あるいは民間の方々の役割なのかもしれません。ですから、みんながみんな同じような情報の出し方、手法をやるというのではなくて、それぞれの立場なりそれぞれの能力に従いながらやっていくということだと思います。
 一番欠けている部分、特に対外発信という意味では、海外での捕鯨問題を中心とした意識形成の中で大きな役割特に最近果たしているのは、ソーシャルメディアです。これについて英語で日本側の考え方を発信しているという量は、ほぼないというか、比較した場合、恐らく圧倒的に少ない。私もやっていませんから、そういう意味では誰も責められないんですけれど、そういう現実があるのは間違いなくて、これはどういう形で例えば変えていけるんだろうかというようなことを考えるべきかなという感じがします。
 いずれにしても、ソーシャルメディア、プラスマイナスありますけれど、それが大きな世論をつくっていくというのは、今、鯨だけではなくて、いろんなものの現実ではありますから、それに対してどういう対応をできるかということをそれぞれの立場から考えていくということじゃないかなと。答えになっていないかもしれませんが、そういうふうに思います。
 以上です。
○高橋光男君
ありがとうございました。

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