2021.03.25
国会議事録
令和3年3月25日 農林水産委員会
○高橋光男君
公明党の高橋光男です。本日もよろしくお願いします。
早速質問に入らせていただきたいと思いますが、この度の質問に際して、私はこれまで地元、兵庫の様々な現場を回らさせていただきました。森林組合、木材市場、製材会社、木質バイオマス発電所、原木シイタケ生産者など、御対応いただいた皆様に感謝を申し上げるとともに、日々の御尽力に敬意を申し上げたいと思います。林野庁がふだん目の行き届かない、こうした現場のお声をなるべくお伝えしたいと思いますので、政府には前向きかつ簡潔明瞭な御答弁よろしくお願いします。
まず、二〇三〇年に向けた目標に関して野上大臣にお伺いします。
御承知のとおり、二〇三〇年までのパリ協定に従い、我が国は、温室効果ガス削減に関し、二〇一三年度比二六%削減を掲げ、このうち二%を森林吸収量で確保することを目標にしています。一方、森林吸収量は樹木の高齢級化のため年々減少しています。中長期的に着実な森林整備対策なくして目標達成はおぼつきません。この度の法改正を通じた間伐や再造林、こうしたものの促進はその意味においてとても重要な取組であります。
今年の秋には地球温暖化対策計画が見直されると承知します。つきましては、政府として、改めてこの目標の実現可能性を精査するとともに、具体的な対策と支援策を明らかにすべきと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(野上浩太郎君)
今御指摘のありました地球温暖化対策計画の見直しにつきましては、今現在、政府全体として検討が進められているところでございます。
我が国の森林は、人工林を中心に二酸化炭素吸収源として貢献してきているところでありますが、人工林、高齢級化をしておりますので、それに伴って、近年、その森林吸収源は減少傾向で推移をしているところであります。
このような中で、その森林吸収量の確保を図るために必要な間伐を着実に実施することに加えて、利用期を迎えた人工林につきまして、やはり適切な循環利用によって成長が旺盛な若い木を増やして森林吸収量の向上を図ることが重要でありますし、また、炭素が貯蔵されており、また省エネ資材でもある木材をいろんな段階で繰り返し使用して、最終的にエネルギーとして活用するといった取組を推進することによって、炭素の長期大量貯蔵ですとか、あるいは二酸化炭素の排出削減を進めることが重要だと考えております。このため、農林水産省としましては、今回の改正法案によりまして、森林の吸収量確保に向けた間伐ですとか成長の優れた苗木による再造林等の森林整備の推進などを着実に図ってまいりたいと思います。
パリ協定下における二〇三〇年度の我が国の森林吸収源目標の達成を図るとともに、二〇五〇年カーボンニュートラルの貢献にこのような取組を通じて貢献をしていく考えでございます。
○高橋光男君
ありがとうございます。
パリ協定もさることながら、この度のこの森林吸収源による温室ガスの削減、この目標というのはSDGsの観点、陸の豊かさを守ろうと、目標十五というものございます。こうした観点からも非常に重要と考えますので、御対応のほどよろしくお願いします。
続きまして、地籍調査の必要性とその調査の推進のための支援について、林野庁と国交省にお伺いしたいと思います。
地元の木材市場から、山村部では土地所有者の高齢化が進み、土地の境界が分からなくなってきていると伺いました。この点、お配りした資料一を御覧いただければと思います。この林地、すなわち山村部の地籍調査の進捗状況ですが、令和元年度末時点で四五%にとどまります。そして、その右の帯グラフ見ていただければと思いますが、近畿圏では進捗率が極めて低いです。
地籍調査は市町村が実施主体です。だからといって、市町村任せにしてはならないと思います。なぜなら、間伐や植栽などの森林整備を行うためには、森林の境界が明確化され、森林所有者が明らかになっていることが大前提だからです。とりわけ、今後、間伐や成長に優れた特定苗木、いわゆるエリートツリー、この植栽を行うに当たっても、地籍調査を通じて境界を明確化することが不可欠ではないでしょうか。
ついては、林野庁として、同調査を主管する国交省とも連携し、新たな技術を活用するなどして、特に進捗が遅れている地域で重点的に地籍調査を行うための強力な支援などが必要と考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(本郷浩二君)
お答えを申し上げます。
林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を図るためには、境界の明確化を進め、施業の集約化を推進していくことが重要と考えております。
農林水産省としては、従来から、地籍調査が完了していない森林などにおいて、森林整備地域活動支援対策交付金により、森林組合等が行う森林所有者の所在確認や境界の明確化への支援を行ってきたところでございます。令和二年度からは、この交付金において、レーザー計測データ等のICT技術を活用した森林境界の測量の支援メニューを追加したところでございます。
また、国交省様とも連携していくことが重要と考えておりまして、地方自治体の林務担当部局と地籍担当部局の間でリモートセンシングデータの保有状況等についての情報共有を進めるなど、関係機関と連携した対策を進めているところでございます。
なお、近畿地方では、特に地籍調査が他の地方と比べ大変遅れているということでございますし、この地域活動支援対策交付金の活動を活用いただき、森林境界の明確化を進めているところでございます。
今後とも、地域の要望を踏まえ、必要な支援を続けてまいりたいと考えております。
○政府参考人(吉田誠君)
お答え申し上げます。
林地における地籍調査の進捗率につきまして、昨年閣議決定されました十箇年計画では、令和元年度末の四五%から、令和十一年度には五二%とするということを目標としております。また、昨年には、国土調査法等の改正によりまして、所有者の所在が不明な場合でも調査を進めるための手続でありますとか、あるいは航空写真などを活用した効率的な調査手法の導入など措置されましたところ、これらも適切に活用しながら調査の円滑化、迅速化に努めてまいります。
それから、林野行政との連携、重要でございます。従来から、都道府県、また市町村に対しまして、調査担当部局と林務担当部局の間で実施箇所の事前調整でありますとか成果物の共有といった連携を図るよう、林野庁と共同で周知しているところでございます。
国土交通省といたしまして、今後とも林野庁としっかり連携しながら、十か年計画の目標を達成できるよう取り組んでまいります。
○高橋光男君
ありがとうございます。是非、よく連携してお願いします。
続いて、山奥などにおける間伐などの促進についてお伺いしたいと思います。
この点、地元の製材会社からこのようなお声をいただきました。本来、やるべき山の上の方の間伐が進んでいないと。先ほど宮崎先生も言及されたように、そうした中で、その市町村が主体的に取り組めるように森林経営管理制度や森林環境譲与税等によってそうした整備が取り組めるようになってきたところでございますけれども、実際のところ、その奥地での間伐というのは、やはりコストが増大して大変な状況でございます。
したがいまして、市町村任せでは、結局手の着けやすい箇所の間伐等が優先されるのではないでしょうか。そうした箇所も含めた間伐、そうした箇所というのはこの手の着けにくいところですね、こうしたところの間伐を推進するに当たっては、市町村が委託する民間事業者にとって、山奥、山の上付近の伐採がしやすくなるような仕組みが必要というふうに考えますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答え申し上げます。
森林所有者による手入れが行われていない森林への対応として、平成三十年に森林経営管理法を制定し、市町村が所有者から経営管理の委託を受け、条件不利地等の森林につきましては、市町村が森林環境譲与税も活用しながら公的に間伐を行う制度も始まったところでございます。
この制度の初年度である令和元年度の取組状況としては、私有林人工林のある市町村の約七割が森林所有者への意向調査やその準備、さらには市町村による間伐等に取り組むなど、順次取組が進みつつあるものと承知をしております。
また、森林所有者や民間事業者による取組の推進に向けては、間伐等特措法に基づく国から市町村への交付金等の支援を継続するとともに、施業の集約化、路網整備の加速化、高性能林業機械の導入等の間伐コストの低減を通じまして、間伐等に必要な森林整備を進めてまいります。
○高橋光男君
ありがとうございます。
続いて、是非、今言及されたコストの問題につきまして、是非海外の先行的な取組に学んだ流通の効率化等について、続いて政務官にお伺いしてまいりたいと思います。
資料の二を御覧ください。
これは地元の森林の大学校の校長からいただいた情報に基づくものでございますが、日本は海外よりも丸太価格のうち伐木コストが、伐出ですね、流通コストが高いと、この二つが高いと。諸条件が類似するオーストリアと比較して、丸太価格のうち流通コストが六・七倍、伐出コストというものが一・六倍以上掛かっているというふうに伺いました。
この表のとおりでございまして、その分、当然ながらでございますけれども、立木価格というものが下がります。そしてその分、山元に入るお金も少なくなります。
もちろん、オーストリアは、路網密度が我が国よりも高いために、大型の林業機械、これ導入しやすいといったような多少の違いはありますけれども、それにしても、なぜここまで差があるのでしょうか。政府の認識をお伺いしたいと思います。
そして、オーストリアにおけるような先進的な取組に学び、生かしていく努力がもっと必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答え申し上げます。
議員御指摘のとおり、オーストリアの林業は、我が国において施業の集約化、販売の共同化、国産材の流通の効率化を図る上で参考にすべきものであると考えております。
このため、農林水産省といたしましては、施業の集約化に向けて施業プランナーの人材育成等を進めてきたところであり、令和元年度時点で、私有人工林のうち約四割について経営管理が集積、集約されたところです。
また、令和二年度から森林組合や素材生産業者など複数の事業体間の連携を図りながら販売の共同化を推進する森林経営プランナーの人材育成を開始するとともに、森林組合が販売事業の拡大等による経営基盤の強化を図ることができるよう、令和二年五月に森林組合法を改正し、組合間の多様な連携手法の導入や、事業執行体制の強化を措置したところであります。
引き続き、これらの取組を進め、施業の集約化、丸太販売の共同化、国産材の流通の効率化を推進してまいります。
○高橋光男君
ありがとうございました。
私、そのとき言われて大変衝撃的だったのは、林業で成功していない先進国は日本ぐらいだというふうに言われました。
まさに、今おっしゃられた施業の集約化であったり丸太販売の共同化、そしてさらには、国産材の流通効率化というのはもう既にオーストリアでは四十年も前から始めてきた取組であるわけでございまして、今まさに日本がやろうとしていることはこのオーストリアがやっていることを倣ってというか、そうした取組が多いわけでございます。
重要なことは、おっしゃられたような施業プランナー、そしてまた経営プランナー、こうした人材をしっかりと育成していく、それが本当に現場で、そういった方が活躍していただける環境を本当に整えていくことが大事ですし、またこの森林組合法の改正によってその連携が取りやすい環境も今つくられつつあるわけでございますので、しっかりと政府として取り組んでいただくようにお願いいたします。
続きまして、補助金の安定的確保及び交付時期の適正化について野上大臣にお伺いしたいと思います。
昨今の異常気象による豪雨等によって土砂災害等が急増しています。だからこそ、国土保全上も森林整備等に係る予算を安定的に確保することが重要であることは言うまでもございません。しかしながら、単に予算を確保するだけにとどまらない課題があることをお示しするために、資料三を御覧いただければと思います。
これは、地元の木材市場の森林環境保全整備事業による入荷量のグラフでございます。少し古いものでございますが、平成二十五年、また二十九年の一年間を通しての扱っている量を示したものでございまして、このようなお声をいただきました。補助金が十二月に締め切られ、四月から六月、翌年に手当てされるために、本来秋から冬にかけて伐採すべきなのに春から夏に行っているということです。
よく伺ってみると、変動が特に激しかった下にある平成二十九年につきましては、この年にTPP補助金が導入されたそうです。このとき国からは積極的にそのTPP補助金を使うように言われたと。これは、事後申請の直接支援事業とは異なり事前申請だったので、結局使えず入荷量が減ってしまったというふうなお声でした。これでは予算の確保の見通しが立たないために、複数年の補助金を求める声も大きいです。そして、この二つの枠組みというものは今現在も続いているというふうに承知します。
つきましては、国として、手続上、制度上の改善を行うとともに、現場に補助金が適正な時期に交付されるよう管理徹底をすべきと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(野上浩太郎君)
やはり森林の持つ多面的な機能を十分に発揮させるためには、間伐ですとか主伐後の再造林、路網整備といった森林整備を促進することが極めて重要であると考えております。
このため、当初予算のみならず、緊急に対応が必要な国土強靱化やTPP等の補正予算、また非公共事業予算等も活用しながら、地域からの要望に応えて計画的かつ適切な森林整備の推進を図っているところであり、今後とも必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えておりますが、これら森林整備に関する事業はやはり現場で円滑に実施されることが重要であるというふうに思いますので、採択要件の事業内容が分かりやすい資料を作成をして、都道府県等を通じて、森林組合や事業体や森林所有者等に適時適切に情報提供等に取り組んでまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。是非現場の実情を踏まえて御対応よろしくお願いいたします。
続いて、地産地消型の木質バイオマス発電の普及促進について熊野政務官にお伺いしたいと思います。
国産材の安定供給の下での地域循環型のバイオマス発電所の普及促進、私、これはすごい重要な課題だというふうに思っています。我が兵庫県でも、県産の木材だけを利用し、そして県内企業産のボイラーを使って、そしてさらには、発電、蒸気両用の発電所ございます。赤穂市というところに新たにできました。それが、私、こうした発電所というのは、従来のいわゆるカスケード利用、すなわち無駄なく有効利用する、こうしたカスケード利用の推進に加えて、こうした地産地消の取組というものを後押しすることこそが国産材の利用促進の上でも非常に重要であって、ほかの地域でも推進していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
そしてまた、一方、こうした取組を推進していく上でインセンティブが必ずしも十分ではございません。新規建設に当たっても、またFIT、固定価格買取り制度終了後も持続可能な形で回すためにも、地方自治体の補助だけでは心もとないのが実情です。
つきましては、地産木材利用や地産ボイラーの導入促進、また高額とされる移動式チッパー等の機械につき新規購入のみならず更新時の補助導入、またさらには発電所と所在する自治体間での災害協定の締結に伴う例えば補助の上乗せなど、国として地産地消型の発電所をもっと後押しする仕組みを構築すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答えいたします。
国産材を活用したエネルギー利用につきましては、固定買取り価格制度、FITの終了後も持続可能な取組となるよう推進していくことが重要です。
このため、移動式チッパーなど、林地残材等の収集、運搬の効率化に資する機材の整備を支援するとともに、FITによる支援との重複を避けつつ、木質資源利用ボイラー等の整備や木質バイオマスを、地域の合意の下、熱利用や熱電併給を行うことにより、地域内で持続的に活用する取組の推進等を支援しているところでございます。
今後とも地産地消による木質バイオマスのエネルギー利用の推進に取り組んでまいります。
○高橋光男君
ありがとうございました。
最後に、もう時間なくなりましたので御要望にとどめますが、林業人材育成のための林業大学校の支援につきましては、お配りした資料四にございますように、この度、森林環境譲与税によって手当てされるというふうになっていますけれども、こちらの資料の下の予算配分額にございますように、近年急増しています。そうした中で、しっかりとこの緑の青年就業準備給付金、こうしたものを手当てしていただくとともに、この林業の現場を担う人材育成に国として全力で取り組んでいただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。