2021.04.21

国会議事録

令和3年4月21日 経済・外交調査会

○高橋光男君
公明党の高橋光男と申します。
 本日は、三人の参考人の皆様、貴重な御講演いただきましてありがとうございます。
 まず、私、富岡参考人にお伺いしたいと思います。
 先生による、油による汚染損害に対する責任と補償に関する国際制度につきましての論文を拝読させていただきました。そこには、今日も御説明ありましたように、今日ではこの油濁事故に対処するための司法的な体制につきましては、民事責任条約、基金条約、民間自主協定、三層構造で制度化されているとの御説明がございました。
 一方で、私、関心を持っているのは、昨年のまさにモーリシャス沖での事故のように、こうしたガバナンスの低い途上国の近海でこうした事故が発生した場合に、被害を受けたその現地人の方に果たして十分な補償がきちんとなされるのかといったようなことは、この因果関係証明することの難しいことなどから大きな課題があるのではないかというふうに思います。
 この点、ふと思ったんですけど、我が国の近海で起きた場合も、との、どうような制度があるのかといったような、そうしたような、この被災者救済制度の国際比較、司法上のその国際比較の観点から御意見をまずいただければと思います。
○参考人(富岡仁君)
モーリシャスの事故についてですが、まず、これはタンカーではなくて貨物船の燃料油が流出したことによる事故であります、汚染であります。
 そうしますと、これは、要するに、対象となりますのは、いわゆる基金条約というのはこの対象になりません。日本の近海、ちょっとあれですが、日本の近海で起きた場合にどうかということなんですが、実は、バンカー条約というのは、一九七六年とその後、何年でしたでしょうか、ちょっとメモが今そこに見付からない、八〇年か九〇年に改正されております。補償の上限が、一九七六年で、現状の条約だと約十九億円、改正された条約だと約八十億円ではないかと思います。
 そうすると、日本は実は改正された条約に入っております。ということは、日本はこの条約に基づいて補償を請求できます。争いが生じた場合には、事故が起きた国の裁判所に訴えることができるので、日本の裁判所が判断して補償は請求することができます。ところが、このモーリシャスの事故の場合、モーリシャス政府は旧条約しか入っていません。そうすると十九億円が限界であります。そこで、その意味では、非常にこのバンカー条約についての補償は不十分だというふうに言わざるを得ません。
 この条約で実は、ちょっと先生の御質問と異なってはいけないんですが、実はこれ、船主は長鋪汽船という法人です。もう一人、商船三井が運航者になっています。つまり、船舶を運航しているのは商船三井です。長鋪汽船が船主です。船主が責任があることは間違いありません。ただ、この条約では、運航者及び、この場合は裸用船者、用船者と言いますが、船舶を借りて使っている三井船舶に責任がないかという問題が生じます。これは非常に大きな論点でありますが、この辺はちょっと議論が異なるところで、私としては意見もあるところですけれども、商船三井は結果的に言うと恐らく責任を問われることはないだろうと思いますが、この辺りが問題になります。
 それから、どうしても実は補償について言うとこれは不十分であることは間違いありません。したがって、ここで議論になってきておりますのは、油タンカーの基金条約のように、基金をきちんとつくって、つまり船舶を運航して利益を得ている用船者、船舶保有者がいるわけですから、そういう人たちが利益を出し合って、基金を出し合って補償に応じるという体制をつくるのがやはり必要ではないかと思っています。
 つまり、船主だけに責任を負わせて解決しようというと、船主は上限を、船主制限条約が、補償の上限を定められておりますので、やはり基本的には不十分になるというふうに考えざるを得ないというところがこの事故の教訓ではないかと思います。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 責任がどこにあるのかという問題と、私は今、先ほど指摘しましたように、被災者をどうやって救済していくのかと。本当に現地の方々、大きな被害を受けている中で、ガバナンスが低いと、やはり政府が仮にその賠償を得たとしてもそれがちゃんと行き渡るのかといったような課題というのは私はまだまだあるんではないかというふうに思いますので、そうした課題というのに指摘をさせていただいた次第でございます。
 そうしましたら、次に角南参考人にお伺いしたいと思います。
 参考人、科学技術外交、長年関与されていると。私も、大使館経験、外交官として十七年働いてきたんですけれども、その中で実感したことは、まさに外交を通じてこういう科学技術というのを振興するのはすごく大事なことだと。特にグローバルな課題、SDGs、またその観点では気候変動、今ではまさに感染症対策、こうした観点、非常に重要だというふうに思います。
 一方で、やはりその最前線たる大使館の中というのは非常に縦割りです。政務班があり、経済班があり、広報文化班があって、科学技術というとどこがやっているかというと、大体環境省のアタッシェとか、あと文科省のアタッシェとか、そうした方たちの仕事みたいなやはりところに域を超えない部分があると思います。
 そうした中で、やっぱりどうやってそうした現場の外交官のそうした知見を高めていくことができるのか、こうした観点で課題というのはまだまだ大きくあると思うんですけれども、やはりもちろん官の仕事だけではない、そういう学者の皆さんとかのそうした交流をファシリテートしていく、そうした役割も大変大事だと思うんですけれども、それに当たっての課題、御意見いただければと思います。
○参考人(角南篤君)
御質問ありがとうございます。
 まさにおっしゃるとおり、制度的な課題、まだまだたくさんあると思っております。
 科学技術外交の一つの考え方としては、私は、そのルール形成であったり、それから実際の国際世論に対するインパクトであったり、そういった意味では非常に重要な外交のツールになるということの理解はかなり浸透してきたんではないかなと思っていますが、特に外務省さんの方には科学技術顧問というのを外務大臣の下に設置していただきまして、やっと活動がスタートしたというところでございまして、あとは、外務省内の科学技術顧問には省内での勉強会を実は頻繁に今開いていただいております。
 それから、各大使館に対しても、大使館、大使会議の中でもできるだけそういった科学技術の専門的な話というよりはその意味について省内で共有していただくような、そういう取組をしていただいておりますが、やはりまだまだその科学者あるいはそういった方々が実際に外交に参加するチャンスがなかなかないということで、これは、一つは外交の現場に若い科学者を早い段階から関わらせて、そして外交ということも学び、そして政治ということも学んで、そしてまたそれを自分たちのキャリアで生かしていくような、そういう人材が日本にいないと。アメリカとかヨーロッパにはそういう人材が出てきていますので、そういう意味では、そういう専門的知見を持った外交官になる、あるいは外交が分かる科学者になるという、こういうところの人材育成というのが最終的には一番大きな課題として残っているのかなというふうに思っています。
○高橋光男君
ありがとうございました。私も、是非そういった官学間の人材交流というのが外交の現場でも進むように期待したいし、後押しもしてまいりたいと思います。
 今日はありがとうございました。
 以上です。

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