2021.04.27

国会議事録

令和3年4月27日 農林水産委員会

○高橋光男君
おはようございます。公明党の高橋光男です。本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。
 本日は、ため池の整備に関してお伺いしたいと思います。
 御承知のとおり、ため池につきましては、平成三十年七月豪雨、いわゆる西日本豪雨において多くの決壊、損壊が発生し、大きな被害をもたらしました。我が地元兵庫県でも実に百八十三か所が被災しました。こうした事態を受けて、国は全国のため池の緊急点検を実施し、必要なところに応急措置等防災対策が進められることになりました。その年度、平成三十年度から開始した防災・減災、国土強靱化緊急対策の下で、対策の優先度が高い約千のため池を昨年度中までに改修、統廃合することになったと承知いたします。
 今年も出水期が迫っております。気候変動による豪雨災害はコロナ禍に関係なく我が国に再来する可能性があります。これまでの対策の実施状況を、レビューをするとともに、このため池整備に係る今後の国の姿勢をただしてこれからを展望することは、国民の命と暮らしを守る上で時宜にかなったテーマではないかというふうに考え、本日はこの点に関して質問をさせていただきたいと思います。
 まず、皆様、我が地元兵庫県は全国一ため池が多いことを御存じでしょうか。合計二万四千四百ものため池がございます。これは全国の約十六万あるため池のうち一五%超を占め、全国断トツ一位です。なので、兵庫県はため池王国というふうにも言われております。一方で、例えば一番少ないのはこの東京なんですけれども、十五のため池しかありません。この差というのは非常に歴然としているわけでございます。
 他県も見ますと、広島県で約一万九千、香川県は約一万五千と続き、これら瀬戸内地域で約五割を全国の中で占めている状況です。これは、瀬戸内気候のため降雨量が少ないということが背景にございます。多くが江戸時代以前に築造されて、農業用水を確保するために造成されたものです。通常、農業用水は河川の水を利用しており、全国的には九〇%近くが河川の水を利用していますが、兵庫県ではため池の水の利用が約半分も占めております。
 こうした歴史的背景がある中で、ため池の権利者の世代交代が進んだり、あるいは権利関係が不明確かつ複雑になったりしているところが多く存在します。また、近年では、離農や高齢化によって管理がおろそかになってしまい、日常の維持管理が適正に行われていないところも少なからずございます。
 こうした状況を受け、令和元年七月、所有者、管理者、行政機関の役割分担を明らかにし、適正な管理保全を図るために、農業用ため池管理保全法が施行されました。そして、平成三十年豪雨時に発生したような決壊による水害から国民の生命、財産を保護するために、令和二年十月、防災重点農業用ため池防災工事等特別措置法が施行されました。こうした法体制の下で、ハード面、ソフト面、両面でのため池整備が進められているところでございます。
 そこで、まずハード面の整備につきまして野上大臣にお伺いしたいと思います。
 防災・減災、国土強靱化三か年緊急対策では、冒頭申し上げましたように、優先度が高い約一千の防災重点ため池を昨年度までに改修、統廃合するとの目標につきまして、これは達成されたのでしょうか。この点、平成三十一年、すなわち令和元年三月に、衆議院での我が党稲津久議員による質疑に対し、当時の吉川大臣は、三か年緊急対策の予算を活用していくというふうに答弁をされました。そこで、実際、この三年間でどのくらいの予算が手当てされたかについて、併せてお答えください。
○国務大臣(野上浩太郎君)
ため池は、今お話あったとおり、全国で十六万あるわけでありますが、その大部分が江戸時代以前に築造されておるものでありますし、豪雨や地震に対して脆弱なものですとか、やはり劣化が進行しているもの、多数存在をしておりますので、その整備、改修が防災上重要な課題となっておりました。特に、決壊した場合の震災、区域に住宅や公共施設等が存在をしまして人的被害の与えるおそれのある防災重点農業用ため池につきましては、この三か年緊急対策につきまして重点的、計画的に整備を行ったところであります。
 この三か年緊急対策におきましては、予定していました九百八十二か所のため池防災対策を完了する見込みでありまして、当該対策に充当した予算額は国費ベースで約四百七十億円となっております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 しっかりとした目標を立ててその約一千のため池の整備というものが進められてきた、そのために必要な予算が充当されてきたという大臣の御答弁だったかというふうに思います。
 続いて、防災重点ため池の話でございますが、これも兵庫県は九千百三十五あります。これも全国断トツトップなんです。一方で、ため池を整備していくには、今人材が不足している状況です。ため池整備のためのハード面での予算的手当てはもちろん必要ですけれども、同時に、技術的な人員体制、執行体制が不可欠なところです。
 実際、県は、特措法に基づき、十か年の実施計画でございます防災工事推進計画を決めました。これに基づき、ため池整備を集中的かつ計画的に推進する方針ですけれども、技術的なサポートや人を雇うための補助金、また国からの人材派遣等、執行体制の充実を図るための支援を強く要望されています。この点、今、コロナ禍でございますけれども、例えばオンラインを活用するなど、遠隔でもできることがあるのではないかというふうに思います。
 そこで、国としていかなる支援が可能かにつきまして、熊野政務官に御答弁をお願いします。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答えいたします。
 防災重点農業用ため池整備の支援につきましては、令和二年に施行されました防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法に基づきまして、緊急性の高いものの補助率をかさ上げするとともに、地方財政措置の充実を図るなど、財政上の措置等を講じたところであります。
 また、兵庫県等において設置されておりますため池サポートセンターが行う現地パトロール、ため池管理者等への技術的指導など、ため池の適切な管理に資する活動は重要と認識をしております。これらの活動に対して定額助成しているほか、研修講師としての国職員の派遣、オンライン研修等を通じてその執行体制の充実を支援することとしております。
 農林水産省としては、防災重点農業用ため池の防災対策が円滑に講じられるよう、ため池サポートセンター等の活動を引き続き支援してまいります。
○高橋光男君
力強い御答弁、本当にありがとうございます。
 おっしゃったとおり、ため池サポートセンターの活動などは兵庫県は非常に活発でございますので、そうしたところに必要な支援が届きますように心からお願いを申し上げます。
 続いて、ソフト面に関してでございますけれども、今後、豪雨等により特に大きな被害が予想されるため池については、各市町村が浸水想定区域図に避難場所や緊急連絡先等の防災情報を掲載したため池ハザードマップ、これを順次作成するものと承知いたします。
 そこで、最新の策定状況及び今後の取組につきまして御答弁をお願いします。
○政府参考人(牧元幸司君)
お答えを申し上げます。
 この農業用ため池のハザードマップにつきましては、このため池管理者と行政機関等の間で緊急連絡体制の整備でございますとかため池浸水想定区域図の作成を行った上で、決壊した場合の影響度に応じまして、都道府県及び市町村が優先順位を付けて作成をすることとなっておりまして、令和二年三月末時点におきまして、全国で約一万六千か所作成をされているところでございます。
 今後とも、このハザードマップの作成というものを積極的に推進してまいりたいと考えております。
○高橋光男君
そのハザードマップをしっかり策定していただくことも大事ですけれども、しかし、それを住民の方々に周知していくような取組も併せて大変重要だというふうに思いますので、是非ともよろしくお願い申し上げます。
 そして、国は、昨年度からため池防災支援システムというものを構築されまして、その運用を開始し、その一部として、ため池の管理者の日常点検あるいは大雨特別警報発令時や大地震発生時に緊急点検を行い、その結果を報告できるスマホ用のため池管理アプリ、MEAPっていうんですかね、こちらを開発されたというふうに承知いたします。
 今後、より多くの管理者の方に利用していただけるように、このアプリ、しっかり普及促進を図るべきというふうに考えますが、その取組状況についてお伺いしたいと思います。
 あわせて、このアプリを通じて点検結果がタイムリーに共有されて、平時から有事の際に迅速な初動対応に活用できるようにすべきと思われますが、いかがでしょうか。御答弁をお願いいたします。
○政府参考人(牧元幸司君)
お答えを申し上げます。
 この御指摘をいただきましたため池管理アプリでございますけれども、これは情報通信技術を活用いたしまして、ため池の管理支援ツールといたしまして設計開発したものでございます。
 現地での点検結果の報告が本アプリを利用することで円滑に進むものというふうに考えているところでございます。
 農林水産省といたしましては、これらの支援ツールを現場に積極的に活用していただけますように、点検報告、手順等を記載をいたしましたマニュアルの整備でございますとか、行政担当者、ため池管理者等を対象にいたしました訓練、研修の実施等によりまして普及に努めているところでございまして、今後とも積極的に普及を図ってまいりたいというふうに考えております。
 また、本取組のようなこの情報通信技術の活用につきましては、災害時の点検報告の円滑化、また災害被害情報を踏まえた行政機関における災害時の初動対応や復旧支援の迅速化、これに委員御指摘のように大変資するものと考えておりまして、引き続き推進してまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 まさに平時での準備、こうしたアプリ等の普及等がまさに緊急時においてその初動対応に生きていく、そして大事な本当に取組だというふうに思います。
 まさにこの情報技術を活用したというのも、今スマホ等が普及している中で、まさにリアルタイムでその管理状況というものが把握できると、非常に優れた私は取組だというふうに思いますので、是非、普及促進について強化していただくように、よろしくお願いしたいと思います。
 続きまして、地域の住民参加の下でのため池保全、この必要性についてもお伺いしていきたいというふうに思います。
 ため池が地域の方々と共存していくためには、地域による環境保全の取組、これ非常に大事でございまして、これは後押ししていく必要があるというふうに思います。我が兵庫県では、ため池保全県民運動という地域ぐるみで取り組むため池保全活動が活発に行われています。毎年十月を県下全域でため池保全に重点的に取り組むため池クリーンキャンペーン重点期間と定めて、県民参加の下でため池を守る活動に取り組まれているところでございます。
 一方で、全国的に見れば、まだまだこうした活動は十分に行われていないのではないかというふうに思います。つきましては、国として、こうした好事例を横展開し全国的に推進していくための取組、これを強化していく必要があるというふうに思いますけれども、宮内副大臣に御答弁をお願いいたします。
○副大臣(宮内秀樹君)
お答えをいたします。
 ため池を適切に保全管理していく上におきまして、地域の環境保全の取組と連携することは大変重要であるというふうに考えております。
 例えば兵庫県の明石市では、ため池のクリーンキャンペーンや環境教育等の活動に対しまして、多面的機能支払交付金によりまして支援を行っているところでございます。また、先生御指摘のように、兵庫県のため池保全県民運動、このような地域ぐるみで行われている事例につきましては、これまでの事例集の作成等を通じまして全国の皆さん方に紹介をしているところでございます。
 ため池の環境保全に係る優良事例につきましては、ため池フォーラムや研修会の場の活用などを図るなどいたしまして、これまで以上にまさに横展開を図っていきたいというふうに考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 今副大臣がおっしゃられた明石の事例なんですけれども、多面的機能支払交付金ですかね、こちらを使われた事業でして、私も昨日、農水省の方に御紹介いただいて非常にすばらしいなというふうに思ったのが、このため池を地域の財産と位置付けて、地域の住民、また企業、漁協等の農業者以外の団体とも協力してそうした環境保全運動を展開されているだとか、私も先ほど申し上げましたクリーンキャンペーン、ごみ拾い、草刈り等の活動を住民が一体となってなされている。そしてまた、ノリの、兵庫県はノリの有名な産地でございますけれども、ノリの育成に必要な栄養分を含むため池の泥や土、こうしたものを海へ流すため池一斉放流といったような取組も実施しています。
 またあわせて、近隣の小学校を対象に、副大臣も紹介されましたため池や田んぼの役割を学ぶ環境体験学習、こうしたものも行われているところでございまして、まさに地域一帯となった、地域と共生するため池という取組が活発に行われているところでございますので、是非こうした取組を兵庫県のみならず全国的に後押しする、そうした交付金の活用というのをお願い申し上げたいというふうに思います。
 そして、最後でございますが、以上のような、今日お願い申し上げたハード面、ソフト面、両面からこのため池の整備進めていくためには、防災・減災、国土強靱化三か年緊急対策に続き、この防災・減災、国土強靱化五か年加速化対策の中でしかるべく予算を確保していく必要があるというふうに考えます。
 そこで、野上大臣にお伺いします。
 防災・減災、国土強靱化五か年加速化対策で手当てされる事業費ベース約十五兆円の予算のうち、ため池の防災対策に使われる予算はどのくらいでしょうか。この点、私は、三か年緊急対策と同等以上、加速化対策というわけでございますから、すなわち、先ほど答弁いただいた四百七十億円の三分の五以上、少なくとも約八百億円から九百億円程度の予算を真水で確保すべきというふうに考えます。
 また同時に、ため池が多い兵庫県、また広島県、こうした瀬戸内地域圏に対しては、特に手厚く手当てされるようにニーズに応じてしっかりと配分をしていただきたいというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(野上浩太郎君)
防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策でありますが、その額は約十五兆円程度であります。そのうち、防災重点農業用ため池の防災・減災対策につきましては、事業費ベースでおおむね千八百二十億円の規模を見込んでおります。また、ため池の防災・減災対策、これ効果を最大限発揮できるように、各県の要望を踏まえて適切に予算を配分してまいりたいというふうに思いますし、ため池の防災・減災対策、これ極めて重要でありますので、これ三か年緊急対策の実績も踏まえて、しっかり予算の確保に努めるとともに、これまでに増して対策を強化して、必要な支援をしてまいりたいと考えております。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 しっかり予算を確保して、ハード面、そしてソフト面両面でのため池整備、ため池保全がしっかりと国が責任を持って行っていただくことを心からお願い申し上げて、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。

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