2021.04.30

お知らせ

真のバリアフリー化で「共生社会」実現へ

(はつらつトーク2021)真のバリアフリー化で「共生社会」実現へ/国土交通相、公明党衆院議員 赤羽かずよし氏(次期衆院選予定候補=兵庫2区) × DPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長・佐藤聡氏 

【記事本文】
 駅やバスターミナルなどの段差解消率、点字ブロックの設置率が90%を超えるなど、ここ20年の公明党の推進で、交通機関や公共空間のバリアフリー化は大きく進んでいます。ハード面の整備に加え、心の教育の必要性、障がい者と健常者が助け合う共生社会の実現を巡る課題は何か。DPI(障害者インターナショナル)日本会議の佐藤聡事務局長と、公明党の赤羽かずよし衆院議員(国土交通相)が語り合いました。

■車いす利用者の“夢”かなう(佐藤)
■新幹線に最高水準のスペース(赤羽)

 赤羽かずよし氏 佐藤聡事務局長には、車いす利用者の代表として国交省のバリアフリー施策の評価委員を務めていただいています。4月中旬に運行が始まった世界最高水準の東海道新幹線新型車両へのフリースペースの導入では、特にお世話になりました。

 佐藤聡氏 赤羽国交相と一緒に最初の検討会から携わり、実証実験を行い、JR側の技術者や国交省の担当者を交えて検討会を重ねてきただけに感慨はひとしおです。車いすユーザーの友人たちと同じ新幹線に乗って車窓の景色を眺め、語り合いながら旅を楽しみたいという長年の夢がかないます。

 50年間、進まなかった車いす専用スペースの拡充が赤羽国交相の尽力で一気に実現しました。

 赤羽 これまでは16両編成の新幹線で車いすのためのスペースはわずか2席でした。一昨年12月、こうした状況を打開すべく、JR各社の社長と障がい者団体、国交省が同じテーブルで議論する検討会を立ち上げました。

 私からJR各社に対し、友達との乗り合わせや出発直前までの予約受付など健常者が普通に受けているサービスを車いす利用者も当たり前に受けられるように、世界最高水準となる6席分の車いす専用スペースの確保とネット予約の実現を強くお願いしたのです。今回、JR東海が車両の改良を先行実施し、今年度中にはJR東日本、西日本も国交省の新しい整備基準に合わせた車いす専用スペースの確保を図る方針です。

 佐藤 バリアフリーに熱心な公明党の中でも、赤羽さんがひときわ熱い思いを持っていると聞いていました。初の出会いは2018年4月のバリアフリー法改正の時です。

 赤羽 18年の法改正は、公共交通事業者などがバリアフリーのハード・ソフトの計画作成に当たって、高齢者や障がい者など当事者の意見を反映する会議の設置を法律に明記したターニングポイントでした。

 佐藤 私は障がい者の地域生活支援や障害者差別解消法の成立運動に携わってきたDPI日本会議の事務局長として、バリアフリー法改正を審議する国会の参考人に呼ばれ、赤羽さんが公明党を代表して質問をされました。話を聞きながら「障がい者への愛があるな」と思ったんです。専門的でありながら分かりやすく語り掛けるようで障がい者の尊厳を大切にしてくれる人だと感じました。

 赤羽 「愛がある」とはうれしい言葉です。昔は駅にエレベーターがないのが当たり前でした。誰もが暮らしやすい街づくりには、移動を妨げる段差の解消は欠かせません。公明党が旗振り役となって00年に交通バリアフリー法を実現。06年には建築物に関するハートビル法と交通バリアフリー法を統合し、現行のバリアフリー法を制定しました。

 その後、公明党の地方議員がこの法律を根拠に全国各地の駅でエレベーターの設置を推進しました。現在、1日3000人以上が利用する鉄道駅やバスターミナルなどの旅客施設では、エレベーターの設置などによる段差の解消率が91・9%。視覚障がい者のための点字ブロックの設置率は95・1%に達しています。

■障がい者、健常者が共に学ぶ(佐藤)
■個性認め合う「心の教育」を(赤羽)

 佐藤 バリアフリー法ができる前、駅には階段しかなくて、改札で駅員から「なんで車いすで来たの。手伝いませんよ」と言われたこともしばしばでした。通り掛かった人にお願いして階段を運んでもらうのですが、電車に乗る日は朝から気が重かったですね。

 赤羽 今やハード面の整備は大きく前進しました。一方で、ソフト面の対策の重要性が叫ばれています。

 20年のバリアフリー法改正(21年度全面施行)では、東京五輪・パラリンピックのレガシー(遺産)としての「真の共生社会の実現」に向け、ハード対策に加え、心のバリアフリーの施策強化を盛り込んだのです。鉄道の駅員もバスの運転手も障がい者の移動をスムーズに手助けするため、日頃から介助の訓練を受けるようになっています。

 佐藤 昔を思えばまるで別の国に来たようです。20年の法改正で私が感激していることが、もう一つあります。災害時には避難所にもなる公立小中学校のバリアフリー化が義務付けされたことです。

 整備が進めば障がい者が普通学校に入学する流れが加速します。そうなれば障がい者が健常者と共に学ぶインクルーシブ教育が行われるようになり、障がいのある人もない人も同じ場で学ぶことで、障がい者が身近な存在となり、誰もが安心して暮らせる社会づくりが進展するのではないでしょうか。

 赤羽 私の息子が小学校の時に障がい者の同級生がいました。一緒に学校生活を送る中で障がい者が一人でできること、介助しないとできないことを自然に学び、障がいの有無を超えて友情を育んだ経験がありました。共存共生が当たり前になり、多様性を認め合うことがインクルーシブ教育の肝ですね。

 佐藤 障がい者のことが分からないから戸惑ったり、コミュニケーションを恐れたりするのです。子ども時代から共に交流することで慣れ、障がいのある友達ができる。その経験は、大人になって仕事を始める時に、自分の関わる分野は障がい者も利用できるようにしよう、という考えにつながっていくと思います。

■常識を変える公明の突破力(佐藤)
■当事者の声聴き価値を創造(赤羽)

 赤羽 同感です。ところで今後のバリアフリーの課題をどう捉えていますか。

 佐藤 飲食店など小規模店舗のバリアフリー化が最大の課題と考えています。アメリカではどんな田舎の食堂でも車いすで利用できます。それに比べて日本は非常に遅れています。

 19年に赤羽国交相に要望して、約1年かけて検討したワーキンググループに私も参加し、小規模店舗のバリアフリー化を進めるガイドラインを初めて作成しました。出入り口や店内の段差解消、車いすでも食事ができるように椅子は固定式ではなく動かせるものにするなど、整備するポイントを示した画期的なものです。新規オープン時にこの基準を守ってもらえれば費用は抑えられますし、10年たてば街は一変するはずです。

 赤羽 バリアフリー法改正で当事者の意見をフィードバックする仕組みを定めたことが、こうした官民協力のガイドラインの策定にもつながっています。

 障がい者団体は権利を訴える要望団体で、役所側はそれをディフェンスする側といった従来の対立関係でなく、お互いが対等の立場で話し合って新しい価値を生み出す。その流れをリードしていくのが政治の役目です。当事者から意見を頂いて新たな価値を創造していく。そうすることで、社会の通念が変わります。

 佐藤 できれば、突破力のある公明党の赤羽さんに一生、国交相を続けてほしい。そうしたら、日本はすごい国になると仲間のみんなが言っています。

 赤羽 ありがとうございます。私が、国交相をずっと続けなくても大丈夫なように、真のバリアフリー社会へ確かな道筋をつけたいと決意しています。

 バリアフリーのほかにも、公明党はこれまで、教科書の無償配布や阪神・淡路大震災以降の被災者生活再建支援法の制定・改正など、現場の声を聴いてそれまでの常識を転換して新しい法律や制度を作ってきました。それが「大衆とともに」との立党精神を貫く公明党の真骨頂であると確信しています。社会のあらゆる人々とスクラムを組みながら、さらに頑張ります。

 さとう・さとし 1967年、新潟県生まれ。DPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長。9歳の時に事故で障がいを負い、車いすユーザーに。関西学院大学在学時、自立生活を送る重度障がいの学生に出会い、影響を受ける。以来、障がい者の自立支援、バリアフリー運動、介助制度づくりに尽力。内閣府障害者政策委員会委員。国土交通省移動等円滑化評価会議委員。

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