2021.05.11

国会議事録

令和3年5月11日 農林水産委員会

○高橋光男君
おはようございます。公明党の高橋光男です。本日の畜舎建築利用特例法の審議に当たり質問の機会をいただき、ありがとうございます。
 我が地元兵庫県も、但馬牛などの肉用牛、淡路地域などの乳用牛を始め、関西では主要産地です。本法案の審議に際し、地元の畜産農家のお声を伺いました。また、昨年十二月にはお隣の京都の農家にも熊野政務官とともに視察をさせていただいたところです。本日は、それら関係者の方々の御意見、御要望を踏まえて質問をさせていただきたいと思いますので、政府にはそうした現場のお声に寄り添った答弁をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
 初めに、私は、この本改正法の目的、効果についてお尋ねしたいと思います。
 この点につきましては、法案提出の背景、目的につきましては既に先日、野上大臣から提案理由説明において述べられたところでございますけれども、改めて今回の法案の目的及び政府として目指す効果について、現場及び一般の方々にも分かりやすく御説明をお願いします。
○国務大臣(野上浩太郎君)
お答え申し上げます。
 畜産業においては、国内外の需要に対応するための増頭、増産ですとか、長時間労働の改善に向けた省力化機械の導入等に取り組む必要がありますが、畜舎は畜産業に必須の施設でありまして、増頭や搾乳ロボットなど省力化機械の導入を行う場合には畜舎を新築又は増築する必要がありますが、一方で、近年、建築資材や工事労務費の上昇を受けて畜舎の建築コストが増加しておりまして、この建築基準を緩和してほしいという要望が農家からも上がっていることから、今般、この法律案を整備したところであります。
 本法律案によりまして、畜舎建設に係るコスト削減によって畜舎建設時の負担が軽減をされて、増頭、増産や省力化機械の導入をより一層進めやすくなり、また、このことによりまして、国内外の需要に対する国産畜産物の安定的な供給につながるものと考えております。
 またさらに、本法律案のメリットであります技術基準の緩和については建築等をする畜舎の規模によって変わるものではなくて、手続の簡素化については大部分の畜舎が技術基準審査不要の対象となる見込みであることから、この法律案は、経営規模の大小にかかわらず全ての畜産農家に御活用いただける制度であるということも考えております。
○高橋光男君
私、国内外の需要に対応するといったこの目的というものはよく理解しますけれども、日本の質の高い畜産物が畜産農家の皆様によって持続的に生産できるようにすることが第一義的な目的であって、今回の法改正はそのために必要な環境を整える一つの手段であるというふうに考えております。
 その観点から、次にお伺いしてまいりたいと思います。
 今回の改正によっていかに畜産農家の負担が軽減されるのか、先ほど大臣がおっしゃられた手続の簡素化あるいは迅速化の点について具体的に確認させていただきたいと思います。
 この点、地元の現場によれば、建築基準に従って畜舎を建てるとなると費用が高くなり、増築に当たって申請、計画していくと二から三年掛かっているというのが現状でございます。
 そこで、今回の特例法によって申請から工事着工までどれほど期間が短縮されるのでしょうか。とりわけ、畜舎を建築するためには、建築基準の緩和だけでなく、国として手続を迅速化、簡素化する取組を強化していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答えいたします。
 新制度では、省令で定める規模以下の畜舎等については構造等の技術基準の審査を不要としております。その規模については、現行の建築確認が不要となる上限面積を緩和してほしいという農家からの強い要望等を踏まえて大幅に引き上げることを考えており、具体的には、三千平方メートル以下の畜舎等は、技術基準の審査を不要とすることを検討しております。これにより、床面積三千平方メートル以下の畜舎等については、知事による畜舎建築利用計画の認定手続は要するものの、利用基準の審査のみによって計画の認定が行われることになり、手続の迅速化が図られるようになるものと考えております。
 さらに、この審査の際の申請様式などは可能な限り簡素化するほか、eMAFFの活用などにより電子申請を可能とすることを検討しており、こうした点も含め、手続の簡素化に取り組んでまいります。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 今ございましたように、手続の簡素化、迅速化も、ある意味におきまして、農家の皆様にとってはコストの削減だと思います。
 いずれにしましても、今御答弁いただいたことは、これからこの本改正法を受けて裨益をする全ての畜産農家に関係することですので、国として現場への周知徹底をよろしくお願いいたします。
 次に、兵庫県北部の畜産農家からいただいたお声です。
 畜舎を建てやすくなるのはうれしいが、増頭したくても堆肥の処理能力に限界があるとの御意見をいただきました。堆肥舎を建てるとなると、どうしても臭いがありますので、近隣住民との問題が生じます。
 この点、現場の方からは、排せつ物処理の好事例として、福井県の嶺南地方においては、堆肥舎を建てない代わりに堆肥専用のパッカーに堆肥を入れて、それを自治体が取りに来るような仕組みができており、こうしたものがあるとうれしいというお声をいただきました。
 私自身、このように、単に家畜排せつ物を廃棄するだけではなくて堆肥にして資源循環を図っていくこと、また、そのためになるべく畜産農家の負担の掛からない体制を築くことは様々な観点から有益と考えますけれども、こうした取組を普及していくに当たって国としていかなる支援が可能でしょうか、お答え願います。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答えいたします。
 家畜排せつ物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき、廃棄者である畜産農家が自らの責任において適正に処理しなければならないものとされております。
 その際、単に家畜排せつ物を廃棄物として処理するのではなく、堆肥として土づくりに有効利用することにより、資源循環を図っていくことが重要であると考えております。
 御指摘の福井県嶺南地方の自治体が運営する施設のような家畜排せつ物処理施設の整備について、農林水産省としては、地方公共団体、農業協同組合又は三戸以上の農業者等が堆肥を散布する装置等の整備と併せて行う共同利用の家畜排せつ物処理施設を整備する場合で、地区の受益面積が十ヘクタール以上で、飼養頭数が成牛で二百頭以上のものについて助成を行う農山漁村地域整備交付金などの措置を講じてきたところであり、引き続き、家畜排せつ物を適正に処理し堆肥としてしっかりと有効利用していただけるよう、必要な支援策の実施に努めてまいります。
○高橋光男君
ありがとうございます。
 今御答弁ございました農村漁村地域整備交付金によるこの事業、これ、次に述べます畜産クラスター事業のような、協議会を必ずしも設置しなくてもよい取組です。例えば、事業主体の県に対し、先ほどおっしゃられたように、三戸以上の農家が申請をすれば共同利用のための処理施設を整備できる可能性もございます。一方で、まだまだ活用されていない地域もあろうかと思いますので、国には更なる支援策の推進をお願いいたします。
 続いて、機械化による労力の軽減、人手不足の解消に関してお伺いしたいと思います。
 畜産業の成長、このためには、建築基準の緩和のみならず、機械化によって労力を軽減していくことが人手不足を補う観点からも重要であることは言うまでもございません。一方、現場からは、省力化機械や堆肥の散布機械なども非常に高額で、簡単には購入できないというお声をいただいております。実際には、堆肥はまいてくれる畜舎に依頼しているところが少なからずございます。
 こうした機械の整備に当たっては、現在、国は主として畜産クラスター事業を通じて支援しているものと承知いたします。
 この畜産クラスター事業は、生産者、JA、行政、コントラクターなど、様々な地域の関係者を巻き込んだ協議会を設置することが支援を受ける前提となっております。しかしながら、地域によっては必ずしも協議会の設置が容易でないところもございます。その結果、支援が十分に届いていないところも少なくないと承知いたします。
 もちろん、機械導入については、地域のJAや全農の皆様の御尽力により、クラスター協議会を通じて機械導入を行っていただいているところもございます。一方、例えば、私の地元兵庫県豊岡市などでは、クラスター協議会は設立されたものの、計画の策定に何と三年も要し、ようやく今年になって施設整備が始まろうとしています。
 こうした中で、現場からは、整備が開始するまでに数年も掛かるのであればほかのことができるとか、クラスター事業は協議会を通じてのため手間が掛かるというイメージが先行しており、浸透していないといったお声をいただいているところでございます。
 そこでお尋ねしますが、国として、協議会設立を前提とせずになぜ支援ができないのでしょうか。
 例えば、小規模の畜産農家であっても、もっと容易に機械導入ができるようなきめ細かな支援をすべきではないでしょうか。また、人手につきましても、大きな畜舎は堆肥を処理するにしても専任の社員が対応することができますけれども、小さな畜舎はそうした人を雇うのが難しいところがほとんどです。人手が不足している小さな畜舎に対して、国としていかなる支援が可能かについて、併せて御答弁をお願いします。
○大臣政務官(熊野正士君)
お答えいたします。
 畜産クラスター事業は、総合的なTPP等関連政策大綱に即して畜産・酪農収益力強化総合プロジェクトを推進していくための主要な事業であり、本事業により畜産の生産基盤を強化してきたところです。
 この事業は、地域の課題を共有する関係者が連携することにより畜産の収益力の向上等を図るため、地域の関係者によるクラスター協議会で作成した畜産クラスター計画に基づき行う取組を支援する事業であり、本事業はクラスター協議会の設立を前提としているものであります。
 このクラスター協議会は、その地理的範囲や参加する畜産農家の経営規模等には特段の要件を課しておらず、それぞれの地域の特性や取組内容に応じた協議会の設立が可能な仕組みとなっております。
 委員の御地元の兵庫県豊岡市の事例のように、平成三十年に設立された協議会の計画作成が令和三年二月となり、今後ようやく事業の活用が進み始めるような事例もあると承知をしております。
 農林水産省としては、規模の大小にかかわらず地域の畜産農家に御利用いただけるよう、クラスター協議会が設立されていない地域も含め、事務局となる市町村や農協等の職員等を対象とした畜産クラスターコーディネーター研修を通じて、協議会の設立や地域内の連携の調整、補助事業の活用に係る指導、助言を行うことができる人材の育成等の支援を行っているところであり、引き続き必要な支援を行ってまいります。
 また、人手不足の場合には、畜産クラスター事業以外にも、堆肥散布等の作業について、コントラクター等の外部支援組織の活用も推進しているところであります。
○高橋光男君
御丁寧な答弁、ありがとうございます。
 国には、そうした協議会の設置を前提としたり、また現場から申請があって初めて検討をするといった要請主義ではなくて、産地であっても協議会がないところや、あっても小規模農家が参加できていない、あるいは、必ずしもうまく計画が進捗していないところにはプッシュ型で調整に入ったり、現場のニーズを吸い上げたりする努力を怠らないようにする、そのようにして支援が行き届きますように御対応をよろしくお願いいたします。
 続きまして、牛マルキン、配合飼料、また消費拡大支援についてお伺いしてまいりたいと思います。
 一部報道では、牛マルキン、すなわち肉用牛肥育経営安定交付金におけるこの農家の負担金、これが来月にも納付再開とされています。
 これは、昨年末に定められたルールに基づくものでございまして、私も本委員会において度々質問させていただいてまいりました。三月にこの委員会で質問させていただいた際には、大臣から御答弁いただきましたように、納付再開時の単価はかなり低くなる見込みと承知はいたします。
 枝肉価格は持ち直しているといっても、例えば、私の地元兵庫の但馬牛につきましては、一頭当たり四百キロ台と他県のブランド牛に比べて百キロほどサイズが小さいので、販売価格は一頭当たり百二十万から百三十万とかなり低い金額です。一方で、二年前の素牛価格は一頭当たり百万円を要しました。これに飼料などの様々必要な生産コスト、これを上乗せすると、生産コストは販売価格を上回っており、売れば売るほど赤字になるというのが実態です。
 実際、借金をして牛舎を建て、返済期日が迫っているのにお金が手元にない、そんな農家が多くございます。国には、そうした方々を決して見捨てないでいただきたいと思います。
 牛マルキンの負担金再開に際しては、全国統一の決まりとはいえ、兵庫の関係者からは引き続き強い懸念の声をいただいています。再開するにしてもできる限り低い水準にしていただくよう、重ねて要望をさせていただきたいと思います。
 そして、ここで配付資料を御覧いただきたいと思います。
 ここに来て、配合飼料についてでございますが、これ穀物相場、また海上運賃の上昇、また為替の円安等によって非常に今高騰しているところでございまして、今後も予断を許さない状況でございます。
 配合飼料と申しますと、五つの種類ございまして、そのうちの半分がトウモロコシが占めているわけでございますけれども、トウモロコシの相場は非常に今急騰しているところでございます。この配合飼料価格というのは、肉牛生産において生産費に占める割合が素牛代に続いて大きな金額でございますので、肥育農家は非常に厳しい状況に追い込まれています。
 これに対し、配合飼料は価格安定制度というものがございますので、これによって、農家さんの方は、一応保障ということはあるんですけれども、一方で、現状この基金の残高も余裕があるというふうには承知しますけれども、過去には、価格急騰時に枯渇したこともございます。これ二ページ目にございますが、平成十八年からこの二十年の間、この補填がなされたんですけれども、通常補填だけでは補填しきれず、異常補填によって手当てがされ、そしてこの基金が枯渇したと、そうしたこともございます。
 そうした中で、私はもちろん中長期的には飼料自給率、これを上げていく取組も重要だと思いますけれども、目下の課題として、補填金が生産者の元に入るのが数か月後となっていますので、この早期の支払のために、国としてできることを是非やっていただきたいと思います。
 また、今後の価格動向を注視していただくとともに、保険金財源の確保を十分に行っていただくとともに、この配合飼料基金制度の安定的な継続運営を支えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 さらに、コロナ禍が続く中でございまして、需要が引き続き減退しています。そのような中、兵庫県では、神戸肉流通推進協議会が消費拡大キャンペーンというのも行っています。何としてでも肥育農家を守るための現場のこうした取組が持続できますように、国には具体的な支援を継続していただきたいと考えますが、いかがでしょうか、野上大臣、お願いします。
○国務大臣(野上浩太郎君)
配合飼料価格につきましては、今先生からお話あったとおり、昨年来、中国におけるアフリカ豚熱からの飼養頭数の回復に伴ってトウモロコシ価格が高騰して配合飼料価格が上昇していると、畜産農家の方々から大変な御懸念をお持ちであるということ、承知いたしております。
 こうした場合に、配合飼料価格安定制度によります積立金による基金から畜産農家へ補填金が交付される仕組みが構築され、畜産経営への影響は緩和されるものと考えておりますが、本制度につきましては、令和二年度の第四・四半期、一―三月でありますが、ここにおきまして、トン当たり三千三百円の補填発動が決定をしておりますが、補填金を支払った後におきましても、基金については約千三百億円以上の十分な財源が確保されております。
 国としても、畜産農家の経営状況を踏まえて、速やかに補填金が支払われるように基金団体に円滑な事務執行を促してまいりたいというふうに思いますし、引き続き配合飼料価格の動向を注視をして、本制度が安定的に運営されるように適切に対応してまいりたいと思います。
 また、消費拡大のお話もございましたが、御地元の兵庫県でも地方創生交付金、臨時交付金を活用して、神戸肉流通推進協議会がキャンペーンを実施されているということは承知をいたしております。
 農林水産省としても、コロナ禍での流通販売対策としまして、和牛肉の在庫解消を図るための冷凍保管経費ですとか、あるいは販売奨励金の交付を行っておりますが、兵庫県内の事業者におきましても積極的に御活用いただいていると承知をいたしております。引き続き、本制度、本対策による支援を実施してまいりたいと考えております。
○委員長(上月良祐君)
おまとめください。
○高橋光男君
ありがとうございました。以上で終わります。

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