2022.03.29

国会議事録

令和4年3月29日 外交防衛委員会

○高橋光男君 公明党の高橋光男と申します。
 三人の参考人の皆様には、本日、大変お忙しい中、様々参考となる御説明をいただきまして、心より感謝申し上げたいと思います。
 私からは、まず鶴岡参考人にお伺いしたいと思います。
 御説明の中でこれからの対ロ制裁のお話があったかというふうに思います。その中で、制裁強化局面よりも緩和局面の方がG7等の結束維持は難しい可能性という御指摘は確かにそうかなというふうに思ったんですが、今の現状を考えると、先日のG7の首脳会合で確認されたことは、これから必要に応じて追加的な制裁を行っていくことと同時に、やはり今行っている制裁を軽減したりとか回避したりとか、また穴埋めを行わないようにしていくことも同時に確認をされたところでございます。
 こうしたところにおいても、やはり制裁の実効性を確保していく上で、今G7の間でも課題があるという状況の中で、やはりこの制裁を強化していくことがロシアに対する圧力を高めていく上で大変重要であるというふうに考えているんですが、今の局面においてどのようにその制裁の効力といいますか、実効性について分析されているかについてお伺いしたいと思います。
○参考人(鶴岡路人君) ありがとうございます。
 御指摘のとおり、まだ今は強化局面であります。ただ、強化局面なんですけれども、この石油、天然ガスの禁輸ということに踏み切らないんであれば、やはりなかなか今の段階から抜本的に制裁を強化するというのは難しいんだろうと思います。その結果として、やはりこの制裁逃れのようなもの、そしてこの穴を塞いでいくといったような対策が重要性を増していると。
 これは、様々な局面、側面があると思います。一つは、やはり中国が念頭にあって、特にアメリカ、ヨーロッパでは議論が進んでいるということでありますし、あと、オリガルヒたちですね、この新興財閥、政府に近い人たち、彼らの資産凍結といったような話も、なかなか個人で、その制裁対象の個人が全ての資産を持っているわけではございませんので、それをどのようにトラッキングして、この資産は本当に誰のものなのかということを丁寧に突き詰め、突き止めていくと、そういった努力は各国で求められているんでしょうし、暗号資産等々新しい分野についての取組というものも今大きな課題になっているんだと思います。
○高橋光男君 ありがとうございます。
 その中で、やはりこの日本が果たし得る役割というところに私は関心を持っておりまして、そこの部分はもちろんG7全体の結束が大変重要だと思うんですが、日本だからこそこうした役割を果たせるのではないかとかですね、やっぱりそういったところで何か主導性を発揮できる余地というものはあるのかどうかについてもお伺いできればと思います。
○委員長(馬場成志君) 鶴岡参考人に。
○高橋光男君 はい、鶴岡参考人にお願いいたします。
○参考人(鶴岡路人君) これは既に岸田政権がかなり力入れているかと思いますけれども、このアジア太平洋、インド太平洋地域において対ロシア包囲網を広げていくと。ただ、なかなか、端的に申しまして、インド等々、働きかけは行いつつも難しい国というものがあるわけですけれども、ただ、この努力とアプローチというものは今後も続けていく必要があるんだろうと思います。
 あと、もう一つは中国でして、やはりこの中国に対してこの段階でロシアを実質的に助けることは中国の利益にもならないんだということは、それがどういう効果を持つか別として、日本としては言い続けていくということは必要だと思います。
○高橋光男君 そこで、やはりこの中国の関係というのが私も大変大事かというふうに思うんですが、河東参考人にお伺いしたいと思います。
 事前にいただいた資料の中で、やはり今後の中国がどういうふうになっていくのかということで、先ほどもちょっと最後お時間がなかったので、もう少し詳しいこの中国の出方というところについてお伺いしたいと思うんですが、例えば勝ち馬に乗るというような御指摘もなされているというふうに承知をしております。本当に今後のこの危機への対応に当たって、本当中国の出方、先ほども唯一調停とか仲介をできるとすれば中国の存在ではないかということを御指摘になったかと思うんですが、今後のその中国の対応等についてどのように今分析をされていらっしゃるかについてお伺いできればと思います。
○参考人(河東哲夫君) それはこれからの戦況、戦争の状況次第だと思います。
 もしロシアの敗色濃厚になってきて世界からの孤立というのが強まってくると、やっぱり中国は、中国にとってロシアというのは負担、負担一方になってくると思いますね。これまで中国にとってロシアというのは使える存在だったわけですけれども、それはアメリカに対抗する上で使える存在であったのが、もしロシアが負けてくると、しがみつかれるだけのライアビリティーになってくる可能性があると思います。そうなった場合、中国がロシアを捨てるかどうかは分からないんですけれども、捨てたら今度は中国が孤立しちゃいますからどうするかという問題ありますけれども、そこに注目しています。
 その前に、今回のロシア制裁なんですけれども、日本としては、ロシアを止めようと思ってその主役になる必要は僕は全然ないと思っています。この問題については、日本はG7の後ろにくっついていって彼らのやるようなことをやっていけばいいんだと思います、それもほぼ同時に。一国だけで延ばして後から一国だけでやると目立ちますから。その意味では、今回非常によくやっているんだと思います。
 ですから、ロシアに対する今回の出方、我々の出方というのは、将来、中国が台湾に対して何かやった場合に、必ず西欧諸国の、いや、欧州諸国の協力を確保するため、それからアメリカの出方を確保するため、そのために日本は今回対ロシア制裁に協力していくんだと、そういうふうに私は思っております。ちょっと違うことについて申し上げましたけど。
○高橋光男君 率直な御意見、ありがとうございます。
 確かに、G7と足並みをそろえていくこと、大変重要だというふうに思うんですが、中にはそのこと自体がやはり目的化してしまって、やっぱりそれで本当に日本として果たせる役割として十分なのかといいますか、その部分というのは議論があろうかというふうに思いますし、ちょっと今日の御説明をお伺いする中で、なかなか外交的、政治的な解決に向けて日本が果たし得る役割というのは一体何なんだろうかということを考えさせられる御説明でもあったかというふうに思います。
 そこの部分で、是非また河東参考人にお伺いしたいと思うんですが、制裁というところはちょっとおいておいて、今後、やはり中長期的に見て、地政学的に見て、やはりロシアが一体どうなっていくのか、プーチンによる今回の暴挙がロシア自身の将来に与える影響、この辺りについてどのように見られているのかということについてお伺いできればと思います。
○参考人(河東哲夫君) 先ほど申し上げましたように、プーチンの後がどうなるかというのは非常に大きな問題であるわけですよね。あのとき、先ほど申し上げましたけれども、ロシアというのは民主主義では治まらないということは一九九〇年代の経験でもう本当に分かったわけです。アメリカはあの広い国でも民主主義で治まりますけれども、それは経済がいいからで、アメリカにいれば生活が良くなるという確信があればみんな一応まとまっているわけですけれども、ロシアはそうじゃないわけですよね。中国も同じなんですけれども、民主主義では治まらない。
 だから、だから日本はどうしたらいいかということになりますと、それはもう非常にリアルポリティックな話になってきて、ロシアが分裂した隙に北方領土を取り返すとか、それも後腐れがないようにうまくやるとか、そういう話になってくるんだと思います。
 ロシアを良くするために、ロシア人の生活を良くするために、民主主義を導入するために日本は何ができるかと、そういうようなことは私は考えないですね。そういうことは誰もできません。ロシア人自身もできません。そう考えております。
○高橋光男君 ありがとうございます。
 そうしましたら、アンドリー・グレンコ参考人にお伺いしたいと思います。
 今、このプーチン政権ですけれども、この政権自体が今後の展開次第で体制転換をしていく可能性についてどのように見られているかについてお伺いできればと思います。
○参考人(グレンコ・アンドリー君) プーチン政権がこの二十年間の間にロシアにおいて絶対的な権力を持ち続けていたので、もうこの段階に入ったら完全な独裁体制ができ上がりました。つまり、独裁者であるプーチン大統領の本人の意思で全ては動いています。一切反対の意見が通らない国になったのは今のロシアなんですね。だから、今のロシアでは、もちろん野党も存在しないし、自由のメディアももう最近存在しなくなったし、完全に、まあ悪く言えば北朝鮮化してしまってきているんですね。
 その中で、ロシアの民衆がそれを変えられるかどうかですけど、現時点では、私は国民側からそれを変えるのは無理だと思います。なぜなら、独裁体制を支えるのは国民の支持ではなくて、物理的な力なんですね。
 プーチンが二十二年間の間に非常に強力な治安部隊を、でき上がったんですね。実は、ロシアでは、正規軍より内務省の職員の方が数が多いんですね。つまり、外の脅威に向かうより中を抑える方に力が入れられているんですね。
 ロシア各地にあるOMONとかいう治安部隊があるんですけど、それはどんな民間人の意思表示がしても、指示があればどんな残虐な形でもそれを潰すんですね。なので、もう国民側が仮にプーチン政権に反対だと言っても、完全に力で潰されています。唯一プーチン政権が替わる可能性があるとしたら、それは国民側からの政権交代ではなくて、体制の中の動きですね。
 例えば、いわゆるオリガルヒ、ロシアの新興財閥の人たちが、彼らは西洋の様々な制裁などによって自分たちの財産が奪われ始めて、彼らはこれ以上プーチン体制が続ければ自分たちの財産が奪われたり自分たちの立場や快適さが奪われるということになれば、もうプーチンを切らないと自分たちが危ないということになれば、彼らは自分の財力とか政治力を使ってプーチンを倒す動きになる可能性があるんですね。
 逆に、それは唯一の可能性だと私も思うので、現実問題としてプーチン体制をロシアで替えるのは、そのオリガルヒたちに働きかけて、彼らが体制の中からトップを替えるという方向に行くことが現実的な路線だと思います。
○高橋光男君 ありがとうございます。
 最後に、アンドリーさんにもう一度、もう一つお伺いしたいんですが、先ほどもゼレンスキー大統領の国会演説の中で触れられた復興というところについて、もちろん今そういったことを見通せる状況じゃないかもしれませんけれど、私はやはり、日本はこれまで、例えば二十年前、アフガニスタンに対してであったり、十年前も東日本大震災があった直後にこのアフガニスタンに対して支援国会合ということもやったわけでございまして、私は国際社会に対して、やっぱり今回のこのロシアの侵略を受けてもう国土が傷ついたウクライナに対して、全世界がやはりその支援に向けて力を合わせていくべきだというふうに考えております。
 その中で、是非、日本が果たすこの役割について、期待も含めて是非御意見いただければと思います。
○参考人(グレンコ・アンドリー君) そうですね、まず、もちろん復興の話がもう今からでも考えなければならないんですが、まず、その復興が必要な時期が早く訪れるにはやっぱり、繰り返しになりますけど、この戦争をまず早く止めなければならないと思うんですね。
 なので、復興における役割を果たす前に、この戦争を止める段階ででも日本が果たす役割も私はかなりあると思います。日本はやっぱり経済大国であって、世界においては影響力はそれなりにあるので、やっぱりここで積極的にロシアの蛮行を糾弾して、制裁の圧力で、さっき言ったようなロシアの体制を追い込むんだったりとか、そういったことにまず貢献するのが一つの大事な役割だと思います。
 それが済んで、戦争が終結して、ウクライナは自由になった段階でやるべきことなんですが、それはもう本当に戦後復興ということになるんですね。
 例えば、今まで中東だったりとかアジアで様々な紛争があって、その後、復興というのが、という復興の事業があったんですが、やはり全ては限定的なものであって、やっぱり、今までの、まあそういう、例えばアフガニスタンの国民は残念ながらまだ完全に西洋型の自由民主主義にはまだなれていないという部分はあったので、なかなか本当の意味の復興事業が難しかったんですね。
 で、多分、ウクライナがそういう時期に入るときは、多分、近いものとして、第二次世界大戦直後のヨーロッパぐらいの規模の復興事業が必要になると思うんですね。なぜなら、今回の戦争で、もう基本的に全部破壊されるんですけど、ウクライナはやっぱりヨーロッパの国であって、民主主義国家であるんですね。やっぱり……
○委員長(馬場成志君) グレンコ参考人、大変恐縮ですが、高橋委員の時間が来ておりますので、簡潔に言っていただけますか。
○参考人(グレンコ・アンドリー君) 簡潔に、はい。
 じゃ、それだけ言います。もう、とにかく大規模な、もうゼロからインフラなどや生活基盤をつくり直す必要があるので、そこで日本が今までの戦後復興を始めとする復興の経験はかなり役に立つと思うので、これは日本はアメリカとともに参加するべきだと思います。
○高橋光男君 ありがとうございました。
 以上で終わります。

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