2022.05.19
国会議事録
令和4年5月19日 外交防衛委員会
○高橋光男君 公明党の高橋光男です。本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。
本日は、三件の条約審議です。その一つ、万国郵便連合憲章等の改定について、まず総務省にお伺いします。
本件は、Eコマースの市場規模拡大を始めとする国際郵便分野を取り巻く環境変化を受けまして、憲章等の見直しを行うものと承知いたします。こうした取組を通じて安定的な国際郵便業務の環境整備を図ることは重要と考えます。
そこで、まず、今回の改正が、我が国の、日本の郵便事業者にとって持つ意義、また裨益効果について政府の見解をお伺いします。
○政府参考人(今川拓郎君) お答え申し上げます。
御指摘のとおり、憲章や条約などの適時適切な見直しを通じ、国際郵便業務の安定性を確保することは重要と考えております。
今般の万国郵便条約の改正では、デジタル化などの時代の変化を踏まえ、国際郵便の受取国における国内の配達コストを賄う手数料である到着料の制度の見直しが検討されました。この到着料については、途上国による支払負担への配慮から上限値が設けられており、我が国を含む先進国において実際の配達コストを適切に賄うことができない状況となっておりました。デジタル化により電子商取引が進展する中で途上国から先進国へ送られる国際郵便が増加し、先進国にとってこの問題への対処がより重要な論点となってきておりました。
このような状況の中、今般の条約改正が行われることで、受取国において実際の配達コストを踏まえた適切な水準の到着料を差し出し国から受け取ることが可能になります。我が国の場合、国際郵便の差し出し物数よりも到着物数の方が多い、いわゆる入超国となっておりまして、到着料収入が増えることにより日本の郵便事業体の収支の改善が見込まれているところでございます。
○高橋光男君 ただいま御説明いただいたように、今回の改定は、国内の事業者にとっても収益改善、また、先ほど林大臣の御答弁ございましたように、途上国への負担にも配慮された内容となっている点は評価したいというふうに思います。
続きまして、お配りした資料一を御覧ください。これは近年の日本の郵便事業の収支を示したものです。
このうち、国際郵便業務につきましては、近年、小包郵便物、またEMS郵便物などの収支が大幅に悪化しています。これはコロナ禍による国際的な人の往来制約が背景にあるものと考えますが、ポストコロナを見据えて、国際郵便業務の回復と質の改善に向けてどのような課題があると認識して国として支援していくのか、お答えいただければと思います。
○政府参考人(今川拓郎君) お答え申し上げます。
現在、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大や国際情勢などの影響によりまして、航空便の減便などのために国際郵便の引受けが停止となっている国が多く存在しており、物流コストの上昇などもある中、国際郵便の収支が一時的に悪化している状況となっております。
今後、国際郵便の引受けを再開できる国を可能な限り増やしていくことで、コロナ禍で困難な状況にある国際郵便サービスの正常化を図り、収支の回復につなげることが急務であると認識しております。
このような中、総務省としては、先ほども御答弁差し上げましたとおり、航空会社に対して郵便物の輸送力確保の要請を行うなど、日本郵便とも連携して事態の改善に向けた取組を行ってまいります。
また、国際小包などをめぐる競争が進展している中では、例えば早く届く、追跡ができるといったような、利用者に満足していただけるような質の高い国際郵便サービスを提供していくことが重要となっております。そのためには、各国の郵便事業体が適切に連携することで世界全体での質の底上げを図ることが重要であり、国際郵便サービスに関する国際的なルール形成を担う万国郵便連合における議論が重要となります。
具体的には、UPUでは、各国の郵便事業体における標準的な送達日数の遵守率や郵便物の追跡サービスに対する反応率を高めるためのルール策定を行っていますが、こういった国際郵便業務の質の向上に向けて加盟国が協力して取り組んでおります。その上で、我が国として、標準的な送達日数の遵守率の向上などに向けて各国への働きかけを積極的に行ってまいりたいと思います。
総務省においては、引き続きUPUの活動を支援していくとともに、本年一月に就任した目時事務局長のリーダーシップの下、UPUにおける各種の議論に積極的に貢献し、国際郵便業務の質の向上に努めてまいります。
○高橋光男君 詳細な御答弁ありがとうございました。収支悪化の背景には国際路線の制限があるということなんですね。
国際郵便というのは、主に旅客機が使われています。先ほど御答弁ありましたように、現在、七十一か国・地域が航空便の引受けを停止していると。国際路線の再開、つまり、我が国にとってみれば、この水際対策の緩和が我が国発着の国際郵便事業の回復にもつながるという点も踏まえて、是非とも政府としてしっかり取り組んでいただきたいと思います。
また、おとつい質疑させていただいたように、今日は通告していませんので要望にとどめますけれども、日本への入国への査証申請に実は必要な戸籍謄本、これ三か月以内の有効期限とされていまして、実はそれが短過ぎるという声をいただいていまして、こうした郵便事情を踏まえて、申請書類の簡素化も含めて柔軟な対応を是非ともよろしくお願いいたします。
続きまして、クアッドにおける防災協力、特に消防飛行艇の活用に関しましてお伺いしていきたいと思います。
来週、日本でクアッド首脳会談がございますが、ウクライナへの対応、これももちろん最重要課題でございますけれども、同時に、各国共通の課題への幅広い協力を深化させていくことも重要と考えておりまして、その一つが防災協力と考えます。
実際、特に地球温暖化の影響によりまして、米国や豪州などでは毎年のように森林火災に悩まされています。そこで、防衛省保有の救難飛行艇US2を新規に改造した消防飛行艇を活用して貢献できる余地が大いにあるのではないかと考えます。
本件につきましては、先月十三日、地方創生・デジタル社会形成特別委員会で取り上げました。その際、国は現在、昨年二月の足利林野火災を受けての林野火災の消火に関する検討会、これ、昨年、我が党伊藤孝江議員が質疑をしたことを受けて立ち上げられたものですけれども、その中で消防飛行艇の有用性を検証する最終報告をお取りまとめ中と承知いたします。消火活動の高度化は喫緊の課題ですので、消防飛行艇の早期実用化が必要と考えます。
そこで、今、世界での消防飛行艇を取り巻く状況について御紹介したいと思います。
お配りした資料の二の②を御覧いただければと思います。現在、全世界では百九十三機の飛行艇が運用されています。そのほとんどがカナダのCLシリーズという機材ですが、老朽化のため更新時期にございます。
一方、次の資料、二の③にございますように、中国がAG600という新しい機材を開発しておりまして、近く実用化されると見込まれています。同機材はUS2に比べると性能は劣りますが、いざ実用化されれば周辺国への売り込みが激しくなると予想されます。
そうした中、既にUS2開発メーカーには米国や豪州などから、森林火災に悩まされているこうした国々から引き合いがあると聞いておりますので、我が国として早く実用化を図り、中国の機材が席巻するようなことがないようにしていくべきと考えます。
三月に当委員会におきまして、我が国は災害対処能力向上に資する装備品をまだ海外移転した実績はないと承知しますが、そうした、このような装備品を展開していくに当たり、先月、防衛装備庁の中には国際装備企画室というものが新たに設置されたというふうに承知しますけれども、国としていかなる体制でこうした民間のメーカーを支援していくお考えなのか。私は、この窓口機関に責任と権限を付与して、そして人員、予算など必要な政策資源を投入していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(岩本剛人君) お答えさせていただきます。
委員も御承知のとおり、防衛装備品の海外移転につきましては、諸外国との安全保障協力を進めるとともに、防衛産業基盤の強靱化を図るため、官民連携の下、様々な取組を進めさせていただいているところであります。その一環として、防衛装備移転の推進を組織面からも強化するべく、本年四月に防衛装備庁国際装備課に国際装備企画室を新設し、防衛装備移転の推進に係る総合的な企画立案を行うこととしているところであります。
この中での具体的な事業としましては、まず一つ、商社の持つネットワークを活用し、潜在的なニーズを把握して提案に向けた活動を行う事業実現可能性調査、さらには、防衛装備移転に関するポータルサイトの整備、相手国のニーズを踏まえた効果的な情報発信の実施などについて一層推進してまいるところでございます。加えて、防衛関連企業がより魅力的な提案を行い得るような、公的金融の利用を含め、企業リスクに対応するための施策について個別の案件に応じて今後検討してまいる所存であります。
いずれにしましても、防衛省としましては、国際装備企画室を核として、委員御指摘の災害対処能力の向上に資する防衛装備品を含め、防衛装備移転の更なる促進のため、今後も必要な政策資源の確保に努めてまいりたいと考えております。
○高橋光男君 ありがとうございます。
続きまして、国のこの検討会の最終報告で消防飛行艇の有用性が確認された後の具体的なステップについてお伺いしたいと思います。
実は、昭和五十年代には、消防庁がメーカー企業との間で委託研究契約というものを結びまして、お配りした資料二の①にございますように、当時の海上自衛隊PS1飛行艇を改装しまして、この防衛庁と共同で空中消火の有効性を確認する実証試験を行った実績があると承知します。
以来、様々な技術というのは進歩しておりまして、また同時に、現在クアッド諸国等の引き合いがあるということも踏まえて、そうした国々との間で共同の実証試験計画ということをやっていくことも私は有益ではないかというふうに考えますが、その可能性につきまして消防庁の答弁お願いしたいのと、あと、続きまして林大臣にお伺いしますけれども、そうしたクアッド間の国際協力始め、またさらにはそういう装備品の移転、そうしたことを考えたときに、この消防飛行艇というものが実用化されましたら、是非、そうした機材を我が国の国際緊急援助活動においても活用していき、クアッド諸国などとも協力して、この森林火災等で非常に悩まされている途上国でのオペレーションも含めて行っていくべきかというふうに考えますが、是非その点につきまして大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(荻澤滋君) お答え申し上げます。
昭和五十一年度に、委員の方から御紹介いただきましたとおり、消防研究所の研究事業として飛行艇からの放水実験を行ったところでございまして、一定の水量、密度で地表面に散水できるということを確認しておるところでございます。近年、実際に運用されている飛行艇の製造事業者からの聞き取りなども行っておりまして、それによりますと、消防用途に改造した場合、大きな取水量を確保できるなど一定の散水能力を見込めるものというふうにも伺っております。
今般の検討会では、こうしたことを前提に、では実際に火災現場で運用をできるのか、運用の可能性、またその効果も含めてシミュレーション、取り組んでいるところでございます。
実際の林野火災の現場で飛行艇を運用しようとした場合には、内陸の現場であれば取水地をどのように確保するのか、また、人家が近接するような市街地で安全運航、どのように確保するのか、また、近年の林野火災ではヘリコプター活用しているところでございますけれども、そうしたヘリコプターなど他の部隊との連携、そういった課題があるというふうに考えておるところでございます。
今般の検討会、シミュレーションでは、こうした運用上の様々な課題を踏まえまして、林野火災の実例であります足利市林野火災で運用したと仮定した場合の効果を検証しているところでございました。まずは、この取りまとめにしっかり取り組んでまいりたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) 高橋委員から今御指摘のありましたこの消火活動の分野でございます。最近、我が国は、森林火災対応を行った国際緊急援助活動として、次の二件の事例があります。まず、二〇一五年のインドネシアの森林火災ですが、緊急援助物資として消火剤を供与し、またその円滑かつ効果的な活用の指導のために専門家チームを派遣しました。また、二〇二〇年の豪州の森林火災に対しては、緊急援助物資としてマスクを供与し、さらに、自衛隊部隊を派遣して、現地において消火活動、また復旧活動に関連する人員及び物資の輸送を行っております。
このように消火活動の分野で国際緊急援助活動を行った実績が既にありますので、こうした実績も踏まえつつ、クアッドも含めた他国との協力の可能性、これも念頭に置きながら、地球温暖化問題に対する我が国としての国際貢献をしっかりと進めてまいりたいと考えております。
○高橋光男君 力強い御答弁ありがとうございました。
まさに来週そうしたクアッド首脳会談がございまして、我が国とそうした本当に重要な国々との間の幅広いこうした防災協力も含めたこうした連携が更に深化、深まっていくことを強く期待申し上げまして、私の質疑を終わります。
ありがとうございました。