2023.02.08

国会議事録

令和5年2月8日 外交・安全保障に関する調査会

○高橋光男君 公明党の高橋光男と申します。
 本日は、三名の参考人の皆様には貴重な御講演いただきありがとうございます。
 まず、浅田参考人にお伺いしたいと思います。
 おっしゃるように、国際法の観点から、今回のロシアのウクライナ侵略は明確な違反だということはこれは間違いないと。その中で、いかにこの国際秩序また法の支配の観点から、この不処罰をやはり認めていかないようにするにはどうしたらいいのかという観点が非常に大事だと思います。
 今日は賠償のお話もございましたけれども、特に刑事責任ですね、ロシアの戦争犯罪、人道犯罪、また、今ジェノサイドの話もございますけれども、こうしたものを将来的に追及又は処罰していくために、今ロシアがこの遵法意識というのはほとんどない中で、ウクライナ側は司法の場、証拠を残すというようなことを懸命にやっておりますけれども、このICCへの捜査協力等を行っている中ですけれども、ウクライナ当局がなすべき努力、また国際社会としてそうしたものをどのようにして支援していくかについて御見解をお願いいたします。
○参考人(浅田正彦君) ありがとうございます。
 不処罰をいかに回避するかというのは極めて重要な問題でありまして、国内の刑法でも、いかに処罰することによって犯罪抑止するかという考え方はあると思いますけれども、同じようなことは国際社会においても当てはまるというふうに思います。
 先ほどおっしゃったように、ICC、国際刑事裁判所が今世紀に入って活動を始めましたが、これまでになかったような制度でして、個人を処罰するということで、しかも、特に今回のロシア、ウクライナについては画期的なことになりそうなところがありまして、といいますのは、ロシアもウクライナもICC規程には入っていないんですね。入っていないけれども、ロシア人、ウクライナ人が処罰される可能性があるという、細かな制度の説明はしませんけれども、そういう画期的なものでありますけれども、問題は、少なくとも侵略については対象外になっていると。戦争犯罪よりも侵略の方が極めて明らかな、事実として明らかであって、その部分について処罰すべきだという声も聞くんですけれども、制度上は侵略は除外、少なくともロシア、ウクライナとの関係では除外されていると。
 したがって、その問題については国連総会等で特別な法廷をつくるべきだというふうな議論もありますし、ゼレンスキー大統領はそんなことを言っていますし、それから、民間の国際法学者にもそういうふうな声を、ことを言う人もいますけれども、私自身はそれはちょっと法的には難しいと思いますね。
 刑事裁判所、あるいは処罰する場合には、まず通常は条約で、ICCのような条約を使うか、あるいは旧ユーゴ、ルワンダのような形の安保理決議を使うかというぐらいしかなくて、それ以上に、国際法違反があったからそれに対して何らかの法執行を行うか、行うことができるかというと、それはできないと。特に、安保理の場合には、安全保障理事会の決定は法的拘束力を持つということが国連憲章に書いてあります。したがって、国連に入っている国というのは、既にそれを納得した上で入っていますから、安保理決議というのは法的な拘束力を持つと。しかし、総会はそうではないんですね。したがって、総会をベースにつくることはできないというので、侵略については少し問題が大きいというふうに思います。
 これに対して、戦争犯罪ですね、もうかなりの数の戦争犯罪が行われていますので、戦争犯罪とかあるいはジェノサイド、そして人道に対する犯罪、こういったものについては、ウクライナ、ロシア間の戦争についてICCで審理、処罰することは可能だと思います。
 ただ、それ、しかしながら、刑事裁判の場合には、いかに証拠を収集して、いわゆる疑わしきは罰せずというふうな刑法の理念からするとかなりの証拠が必要なんですけれども、それにロシアがどれだけ協力するかといいますと、これはかなり難しいところなんですね。
 それから、簡単ではないけれども、メカニズムは一応あるので、そういったところをどのように利用するかということだと思いますけれども、既にICCが捜査を始めていますので、この辺りを期待したいというふうに思いますし、そのICCの今後のレーゾンデートルといいますか、ICC自体の問題としても頑張ってほしいなというふうに思っております。(発言する者あり)
○会長(猪口邦子君) 高橋光男君。
○高橋光男君 あっ、失礼いたします。
 植田参考人にお伺いしたいと思います。
 このアジア版のOSCEをこのアジアでも、あっ、済みません、アジア、この日本が主導して構築していくべきだということは、我々公明党としても今回のウクライナ侵略等を受けて主張しておるところでして、私も昨年三月に外交防衛委員会でも政府の方にただしました。政府は、一方で、ARFの仕組みがあるので、それをできるだけ守り立てて、積極的に貢献して実質的な成果を出したいというのが答弁だったんですけれども、おっしゃるように、東京の場で外交官同士がふだんからコンタクトを持ってそういう交流していくということは大事、今からでもできることだというふうには思っておるんですけれども、なかなかこの日本政府の今のこの見解というのはかたくなな部分があって、実際、ただ一方で、じゃ、まず何から現実的にできるのかと考えたときに、ここ東京でどのようなことが可能だというふうにお考えになられますか。
○参考人(植田隆子君) おっしゃられるように、ASEAN地域フォーラムという安全保障を対象としたフォーラムがありますが、開催頻度がそれほど多いわけではないと。で、それと、それを制度化するということは短期間では現実的ではないので、何かほかの方法がないだろうかということで、国の名前までお配りした資料には挙げてはおりませんが、北太平洋ですね。ですから、朴槿恵大統領のは北東アジアだったんですけれども、太平洋をぐるっと囲むような形で、アメリカ、カナダ、中国、日本、ロシア、それから南北朝鮮、ただ、北朝鮮をどうやって入れるのかという問題があるのですが、段階的にやっていく方法もあるのだろうと思っております。
 日本政府というよりも、日本で通常こういうお話をして、必ずと言っていいのかもどうか分かりませんが、AかBかという発想が非常に強いと思うんですね。ですから、日米同盟が大事だと、これは私も全く反対しておりません。ただ、日米同盟かマルチの安全保障システムかというふうな二者択一的な発想があるのが結構、この地域的な取組の上で、かなり困難になってくると。ただ、自分がなじんでいる地域のヨーロッパを見ていると、OSCEで物事を決めるときに、当然NATOが、NATOの国が事前に集まって調整をすると。あるいは、純然たる安全保障じゃないようなこともOSCE扱っていますから、もう頻繁にEUの国は集まっていると。
 ですから、同志国というよりも同じ組織に属している国ですね、そういう国が事前に集まって提案文を作っていくわけですから、北太平洋に何かできたとしても、それは日米同盟と対抗したりとか、日米同盟を減殺していくようなものではなく、それをどういうふうに運営していくかということで、日米は相談しないとできませんので、むしろ一つの側面としては、日米の安全保障協力が強化される、あるいは、韓国とも事前相談をするかもしれないということで、そういう外交の場が広がっていくと。
 ただ、これを、もう民間ではいろんなアプローチで、いろんなレベルの、シンクタンクレベルの会合があります。ただ、やはり最終的には、必要なのは政府間レベルの安全保障ですから、協議体だと思うので、政治家の皆様方が御関心を持っていただければと思って御報告に参りました。
○高橋光男君 最後、もう時間がないので端的に、最後、香田参考人にお伺いしますけれども、四十三兆円のこの防衛費の予算ですね、これは必要以上の予算という意味ではなくて、備えの必要性について、国民を、理解を得るための政府の努力が、説明が不十分であって、その不断の努力が不可欠だという趣旨だというふうに思います。
 その中で、その検討結果というか、実際、そのプロセスですね、シミュレーション、この中身というものはどこまでその開示が可能なのかについて、簡単に、端的に御見解をお伺いしたいと思います。
○参考人(香田洋二君) 悩ましいところだと思うんですが、当然、生の結果の数字というのは出せないんですが、例えば、オプションが三つあったときに、同じ条件で相対的にこれを一とした場合、第二案が〇・九八、第三案が一・二五ということで、費用対効果としてはこれがいいですよとか、防衛効果としてはというふうに。
 例えばなんだけど、相対比較というふうなことでいいますと、一切能力とか配備数とか配備位置とか関係なくなるわけですね。こういう言い方を政治家の先生の前で申し上げていいかどうか分からないんですが、私もちょっと自分の本にも書いたんですが、例えば、三十年前、冷戦後期について言うと、まだ自衛隊が違憲で、と言われる、当時の社会党が中心に野党が三分の一おられたわけで、逆に言うと、その国会を止めないためにどう説明するかというのは本当に頭の中の九五%ぐらいそれを使ったと、国会中はですね。
 今、本当に政府がそこまで、これは、要するに国民の代表が国会ですから、国会の理解を得るということは、荒っぽい言い方をすれば国民の理解を得るということなんで、そこの知恵というのが本当にないんですかということなんですよね。
 我々ぐらいのは、まさにその時代に直面していたもんですから、だから、実際にその、もうこれでやめますけれども、F4戦闘機の空中給油機はそれで、まあ良しあし別にして、取りあえずだったんですよね、敵、外国まで飛んでいけるからということで。
 やはり、そういう論議というのを経て国民が、ああ、これなら、外国製品は割高だけど、産業も維持をし、我が国の防衛体制の能力も上がるんであれば何%かでいいねという理解を得るところまで政府は知恵を使って是非やっていただきたい。そして、野党の方々もそういう論議ができるように仕掛けて、あっ、ごめんなさい、与党ですけれども、ほかの先生方もそういう論議を国会でやっていただければ、逆に言うと国民の国会に対する信頼度も極めて高くなるんじゃないかというふうに、まあこれも私見ですけれども、思います。
 以上です。
○高橋光男君 時間参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

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