2023.04.26

国会議事録

令和5年4月26日 外交・安全保障に関する調査会

○高橋光男君 公明党の高橋光男と申します。
 本日は、三人の参考人の皆様に貴重なお話を伺い、本当にありがとうございました。
 私も、まず、運用方針の見直し、運用指針の見直しについてお伺いしようかとは思ったんですけど、ちょっと重なるので別のお話をお伺いしたいなと思いまして、特に防衛産業における下請企業の維持ということについてお伺いしたいと思います。
 今日も御説明あったかと思いますが、国内の防衛産業では撤退する大手企業が相次いでいるところでございます。二〇二〇年以降で見ても、例えば、パイロットの緊急脱出装置を作られているメーカーさんであったりとか陸上自衛隊向けの機関銃を作っていらっしゃるような、そうした製造会社さんが撤退若しくは事業譲渡の方針を示されたところでございますが、一方で、こうした大手の動きに注目されがちですけれども、我が国の防衛産業には、プライム企業と呼ばれる大手の下に何千もの中小の下請企業が連なっているということで、例えば、戦闘機であれば約千百社、護衛艦なら約八千三百社にも上るというふうに言われております。
 我が党の山口那津男代表も、昨年、海上自衛隊の護衛艦に備え付ける照明器具などを製造する中小企業を訪れまして、担当者からお話をお聞きしまして、そこで言われたのは、やはり海自の船の建造件数が減っているという中で、照明器具の注文量が減っていて、この熟練した技術の継承が大変難しくなっているということでした。
 私、兵庫地元なんですが、救難飛行艇を造っているメーカーさんからも同様に生産ラインや人員維持の課題についてお声もいただいており、これは何とかしなければいけないというふうに考えているところでございます。
 したがいまして、こうした防衛産業の縁の下の力持ちである中小の下請企業の維持、これが持続的な防衛基盤整備において極めて重要だというふうに考えますけれども、そうした中小の下請企業、また技術を維持していくために今政府として行うべきことにつきまして、三名の参考人、まず西山参考人からお伺いしたいと思います。
○会長(猪口邦子君) では、西山参考人。
○参考人(西山淳一君) お答えします。
 先ほどのページの十九ページに、S2T2リスク分析というのを御説明したんですが、結局、プライムだけではなくて、プライムがティア1と言って、その次がティア2、さらにティア3というふうに部品まで落ちていくわけですが、そこの、そこの会社までに、あなたの会社は防衛だけで仕事をしているんですか、民間の製品も作っているのですか、そのときの人はどのぐらいの人が関わっていて、防衛に専従している人はいるんですか、いないんですか、あるいは、それと同等のものを作れる企業があるんですか、ないんですかと、そういうことをここで調査しているわけです。その結果、じゃ、ここの企業がいなくなると困ると、日本にとって困るということをデータとして集めて分析して、それで国として支援をすると。この分析がなくて、データなくして、ああ、あの人が大変だと言っている、じゃ、面倒見ようかとか、そういうことでは駄目なんだろうと。そこの、このデータベース自体が日本にはないと。
 で、サプライチェーンの調査と。ちょっと完全には正しいかどうか分からないんですが、例えば経団連にサプライチェーンの調査やってくれといっても、経団連、いろんな会社がいますよね。自分のデータは出したくないと、ほかの企業に見られたら嫌だと、こういうことになるわけですから。それをどういう形で、国がまとめて調査するんですという形を取らないと、なかなか本当のところが見えてこないのではないかと、それを是非やるべきだというふうに思っております。
○会長(猪口邦子君) それでは、森本参考人、お願いします。
○参考人(森本敏君) 先ほどお話ししたんですが、先月幕張でやったフェア、一万二千人ぐらいおいでになって、日本からは八十二社ですかね、が出展をして、その人と三日間いろんな議論をした中で、彼らがやっぱり非常に切実に言うのは、今日の防衛産業の基本となっている、いわゆる、言葉は良くないですが、軍事技術というのは、もはや軍事技術だけで軍需品ができるわけではなく、基本はデュアルユースである、つまり両用である。両用の技術を持っている会社は、このフェアに出展したくても、みんなちゅうちょしてしまって、結局は出してこない。
 しかし、会社の中身は、今、西山さんがおっしゃったように、ベンダーとして物を納めているが、同時にその技術を使って一般の汎用品も作っている。そこの部分で、はっきり言うとお金をもうけて、そして防衛産業のところは余りもうからないので、しかし、会社を閉じるわけにいかないので、そうやって経営しているという実態を考えると、これから軍需、軍事技術というのは、民間技術、つまりデュアルユースの技術を持っている技術者や企業が広がっていくということで国の防衛産業の裾野が強くなっていくということなのではないかと思うんです。
 ということは、この法律は防衛産業にだけ適用されるような形になっていますが、そうではなくて、その産業そのものの中で、防衛に使えるような、例えばそれが塗料であったり、あるいはベルトであったりしても、どのようにしてこの技術が軍需品として使えるかという割合幅の広い視野から国の予算を落として、彼らを助成していくという制度設計をしないといけないと。そうでないと、結局は日本の裾野の技術が広がっていかないということになるのではないかと思います。
○会長(猪口邦子君) それでは、宮川参考人。
○参考人(宮川眞喜雄君) ありがとうございます。
 中小企業の撤退、これは大企業の縮小とともにもう既に始まっているわけですが、三つの問題があります。
 第一は、雇用者の方々が職を失われること。これは非常に大きなスピードで進んでいます。加えて、この防衛産業には大変高いレベルの技術者さんがいらっしゃいますが、その技術者さんが職を失う。で、職を失った技術者さんが問題国に引き取られていってしまった後の無残な結果はよく聞きますが、それ以外にも、我が国の中に技術が残らなくなってしまうということ、今、森本先生もおっしゃいましたが、問題があります。そして、それは単に防衛産業だけではなくて、デュアルユースですから、先端技術産業全体がもうどんどん冷えていってしまっている、これは非常に重大な問題を起こすのではないかと思います。
 私おりましたその任国で、日本からいろんな方来ていただきます。特に、新しい産業が、技術が出たので、持ってきて展示したいとおっしゃる方いらっしゃいます。どうぞ来てくださいとお招きするんですが、七割方は農業関係者です。新しい産品ができました、地方の産品としていいのができました、これはいいことなんです。これはすごくいいことなんですけど、残念ながら、先端技術を売りたいんだという人たちはなかなかいらっしゃらない。これはもう如実にその差が年々起こっているように思います。
 そしてもう一つ、最後に、さっきUAEの話、UAEじゃない、何ですか、飛行機の話をされましたが、神戸の、あれもそうですが、つまり、防衛産業の工場に行きますと、技術者さんが一人ずつねじを締めておられる。隣の例えばトヨタさんの工場に行くと、そこはもうロボットアームが激しい勢いで、オートメーションの設備で速く、しかも安く製品を作っている。これはやはり考えないといけないんではないかと私は感じました。
 ありがとうございます。
○高橋光男君 本当に今おっしゃったことは大変重要な御指摘だったと思います。運用指針が変わったとしても、今おっしゃられたような実態が変わらない限りは、なかなかやはり我が国の防衛産業の基盤ということを維持していくことは難しいということだというふうに思います。しっかりと実態を明らかにしていくこと、またそうした、そういう実態を踏まえた制度改正をしていくこと、そして我が国の技術をしっかり守っていくべきこと、重要な御指摘をいただいたかというふうに思いますので、これから取り組ませていただきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。以上です。

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