2023.05.25
国会議事録
令和5年5月25日 国土交通委員会
○高橋光男君 おはようございます。公明党の高橋光男です。
まず、私も、国交省OBによる人事介入問題についてお伺いします。
たとえ官僚OB、すなわち現職の職員でない民間人であっても、国交省出身者が民間企業人事に介入していた問題が発覚し、あたかも国交省が組織的に関与しているかのような疑惑が呈されていることは誠に遺憾でございます。国交省には、国交行政への国民の信頼が揺らいでいる事態の重大さを真剣かつ深刻に受け止めていただくようお願いいたします。
その上で、今回の事態につきましては、法にのっとった冷静な議論が必要とも考えます。幾つか論点ございますけれども、時間の関係上、再就職あっせん規制についてお伺いしたいと思います。
資料一を御覧ください。
再就職に関する規制は、国家公務員法第百六条の二第一項が定めます。これは、現職の職員、すなわち官僚が、営利企業等に対し、他の職員や職員OBを当該企業及びその子法人の地位に就かせることを目的として、それら他の職員、職員OBの情報を提供することや、地位に就かせるよう要求又は依頼することを禁止するものです。
この点に関して、国交省は、退職予定者を含む事務系総合職の異動情報、具体的には、前任と後任者の間を線で接続し、異動全体の流れを示したいわゆる線引き情報を慣習的にメールで提供してきました。
では、当該情報の提供は何の目的で行い、具体的にメール本文にはどのようなことが記されていたのでしょうか。
○政府参考人(宇野善昌君) お答え申し上げます。
いわゆる線引きにつきましては、異動前後における業務の円滑化を目的として作成されたものでございます。
そうしたものの送付先にOBが含まれているのは、例えば一つ、現役時代の送付先である私用アドレスがそのまま送付先として残っていたこと、二つ目として、退官時に引き続き送付を依頼されたことが理由として考えられます。
また、例えば、直近の今年四月に送付されたメールの本文においては、添付ファイルとともに挨拶、線引きを送る旨が記載されており、再就職あっせんを依頼する趣旨の記載は一切ございません。
○高橋光男君 今もございましたように、目的はこの異動前後における業務の引継ぎの円滑化であったということでございます。言うなれば、事務的な便宜のためでございまして、特定の企業の地位に就かせる目的ではございません。
であれば、国家公務員法には抵触しないのではないかと解されますけれども、この点、法律専門家の意見も念のためお伺いしたいと思います。
○政府参考人(宇野善昌君) お答え申し上げます。
今回相談した元裁判官である外部弁護士からは、いわゆる線引きの送付について、一つ目、線引きの異動情報は再就職の検討に一般に必要と考えられる生年月日、学歴、職歴などの重要な情報は記載されていないこと、二つ目、線引きは、再就職をあっせんするような地位や権限のない職員有志が、人事異動の都度、内示対象者から開示してもらうという方法により収集して取りまとめた異動情報に基づき作成されたもので、個別に特定の者を対象として作成されたものではないこと、三つ目、人事異動情報自体は、メールによる線引きの一斉送信後、二日後には発令、公表される内容であり、線引きによる情報入手の時間的な優位性は大きくなく、これにより再就職あっせんを利することになるとは考え難いこと等から、再就職あっせん規制に抵触するとは認められないとの見解を得ているところでございます。
○高橋光男君 では、同条項で提供が禁止されている情報につきまして内閣府人事局にお伺いします。
本件線引き情報は、既に異動を内示された後の情報として、実質的には送付された二日後に公表されるものと承知します。つまり、公表の二日前に入手できたとして、再就職あっせんのために利用できるような情報なのかどうかが問われると考えます。この点に関して、一般論でも結構でございますので、見解を伺います。
○政府参考人(岡本誠司君) お答えいたします。
個別具体の事案についてお答えすることは差し控えますが、一般論として申し上げれば、国家公務員法百六条の二第一項の規定により、現職の職員が、営利企業等に対し、他の職員又は職員OBを当該営利企業等の地位に就かせることを目的として、これらの者に関する名前や職歴などの情報を提供することが禁止されております。
なお、違反となるかにつきましては、再就職等監視委員会において必要に応じ個々の事案ごとに判断されるものと承知しております。
○高橋光男君 再就職等監視委員会での確認が必要だということでございますけれども、線引き情報には、今指摘されたような職歴、又は弁護士見解にもございました学歴等の情報は含まれていなかったということでございます。したがいまして、その情報の目的や形式、内容に照らして、それが行政文書であるか否か、また、その頻度にかかわらず、提供によって再就職につながる蓋然性が認識されるような状況が生じていたとまでは私は必ずしも言えないものと考えます。
一方で、現行法上、抵触するかしなかったか、そうしたことに関係なく、やはりこれは何も問題がなかったというわけにはいかないというふうに思います。
最初に、本件報道がなされた二日前に今の久保田局長が本田元次官及び関係者と会食していたことが最近になって判明したこと、これも大変遺憾でございます。その際、再就職のあっせんに関わるような話はしていないと国交省は確認したと承知しますけれども、事実関係の再確認を行う必要があると判断し、第三者性と厳格性を確保すべきとの観点から、再就職等監視委員会に調査を申し入れたと承知します。
今後のプロセスにつきましてはお配りした資料の二のとおりでございますけれども、同委員会には、厳正かつ可及的速やかな御対応を何とぞよろしくお願いいたします。
いずれにしましても、今回の事態の本質は、私は国家公務員の倫理の問題だと考えております。国民の奉仕者としてより高い官職を担った者こそ、辞めた後も権力を振りかざすようなことがないよう謙抑的な倫理観を保つ道義的責任があるのではないかというふうに考えます。
したがいまして、国交省は、是非当事者意識を持って反省し、再発を決して許さないよう省内のガバナンス改革を図る機会にしなければならないと考えます。そのためには、単に人事情報の事前提供の禁止などの小手先の対応だけではなく、現職幹部や退職者への研修を始め、継続した意識改革の取組が必要なのではないでしょうか。
空港施設株式会社は、その検証結果報告書で、同じ轍を踏まないために強固なガバナンス体制を構築し続ける重要性を指摘し、改善策に係る提言の実効性を評価するためのフォローアップ委員会の立ち上げを推奨しています。国交省も同様に、信頼回復に向けたかつてない取組を行うべきと考えます。
その意味では、再就職等監視委員会の調査結果を待つことなく、大臣自身がリーダーシップを取って一歩踏み込んだ実効的な再発防止策を断行することが不可欠と考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 今回の事案は国民の信頼を失いかねない大変重大な事態だと、このように重く受け止めております。
私、国土交通省幹部を集めまして、ここをどうこの信頼を回復していくかということについて議論をし、一定の今結論を得ております。先ほど森屋委員の御質問にお答えしたことでございますが、一つ目は意識改革を行うこと、そして二つ目は我々が公正公平な行政を心掛けること、この二つでございます。
まず、第一点目の意識改革でございますが、私を始めとする省幹部が局長級職員と一対一で意見交換する機会や省幹部と若手職員との意見交換の機会を積極的に設け、風通しの良い組織環境を創出するなど、組織風土の刷新を図っていきたいと思っております。皆、忙しいんですけれども、時間をつくって、それらの意見交換をしっかり行っていきたいと思います。
そして、若手から幹部に至るまで、研修において再就職規制について再徹底するとともに、職員やOBが外部からどのように見られるかを客観的に学ぶ場を設けたいと思います。国民一般の視点と、やはり国交省の職員の視点と大きく異なっていると感じることがございます。その視点のずれを正していきたいと、このように思います。
これらについては直ちに実現に向けて着手したい、このように決意しているところでございます。
○高橋光男君 是非国交省として対応が後手後手回らないように当事者意識を持ってやっていただく、そのためには大臣自身のリーダーシップが問われています。是非具体的な再発防止策の取組を果断に、速やかに断行していただくことを強くお願い申し上げまして、私の質疑とさせていただきます。
ありがとうございました。