2023.06.06
国会議事録
令和5年6月6日 国土交通委員会
○高橋光男君 おはようございます。公明党の高橋光男です。本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。
さて、全国でこの二十年間で一・九倍の約三百五十万戸、二〇三〇年には四百七十万戸にまで増加が見込まれる空家への対策は急務です。
資料一を御覧ください。
本日審議の空家対策特措法は、周囲に悪影響を及ぼす前の有効活用の拡大、適切な管理確保、特定空家の除去を三本柱とした新たな施策を講じるものでございます。
もちろん、空家対策は国だけでできるものではございません。地方の先進的な取組に光を当て、国、地方の連携で進めていくことが極めて重要と考えます。
その観点から、本日は、日本の縮図とも言われる地元兵庫県で聴取してきた様々な取組や課題を御紹介しつつ、どのような連携が可能か、いかなる支援を強化すべきかについてただす質疑を行わせていただきたいと思います。
資料二を御覧ください。
こちらは、昨年、兵庫県で導入された空家特区制度を紹介したものでございます。こちらによりまして規制緩和や流通促進を図るものでございまして、全国初の条例、公明党の推進で制定をさせていただきました。これにより、本年三月末、赤穂市や西脇市において特区が指定されました。全国的にも珍しい空家改修費に対する補助割増し、これ一〇%アップと書かれているところでございますが、また、市街化調整区域における住宅の新築やカフェ等への用途変更などが円滑にできるようになります。
一方、今回の法改正では、新たに空家等活用促進区域の設定が導入されます。
そこで伺いますが、同区域と兵庫県での特区との間の連携や国からの支援は可能なのでしょうか。もし可能なのであれば、県との連携や支援を強化するとともに、国主導で同様の取組を全国的に普及していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(塩見英之君) お答え申し上げます。
本法案におきましては、空家の活用を重点的に図りますために、今先生御指摘の兵庫県を含む各自治体の取組も参考にさせていただきまして、市町村が設定をする空家等活用促進区域におきまして規制の合理化などを講ずるということにしてございます。
兵庫県の条例の特区との連携でございますけれども、仮に市町村の方の御判断で兵庫県条例に基づきます特区と同じ場所を今回のこの法案に基づく活用促進区域に指定をした場合でございますが、その場所では、条例に基づく特例とこの法律に基づく特例、両方が適用されるということになります。こういう連携によりまして、例えばでございますけれども、住居専用地域内で空家を改修し宿泊施設に転用しよう、こういう場合に、この法律に基づく用途規制の特例ということでまず一つは特例を受けることができます。またあわせて、条例に基づきまして改修費の上乗せ補助、先ほど一割というお話がございました、こういう上乗せ補助を受けると、こういうある意味相乗効果が期待できるのではないかというふうに思います。そして、国、失礼しました、条例に基づく、今、補助でございますけど、この補助に対しましては国から支援を行いまして連携の取組を後押しする、こういうことも可能になってくるかと思います。
こういう効果的な取組事例が実現しました際は、これを全国で参考にしていただきたいというふうに思います。したがいまして、こういう自治体で構成される協議会などの場を通じまして、事例を是非横展開させていただきたいと思います。
○高橋光男君 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。
空家の発生を防ぐことは行政だけではできないことも確かです。関係する団体や法人のお力が大変重要となります。
例えば、全国古民家再生協会は、自治体ごとに地域に寄り添った空き家アドバイザー協議会を設立され、自治体とも連携協定を結んで、古民家鑑定士の育成、住教育活動、地域住民を巻き込んだDIYによる古民家再生など、地道な活動をされています。こうした取組は、今回新設される空家等管理活用支援法人としてふさわしい活動と考えますが、そうした地道な活動を継続して行っている団体やNPO等への国の支援の有無、内容についてお尋ねします。
現場からは、どのような活動に対してどのような支援があるのかを明確にしてほしいとのお声をいただいております。この点、本改正法の施行までには是非具体的な内容を丁寧に周知するとともに支援を強化していただきたいと考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) この支援法人の活用というのが今回の法律の大きなみそでございます。この支援法人は、空家の調査、管理や活用のための事業など、一定の収益事業を行いながら、地域企業や個人からの資金的協力も得て自立的に活動することを基本的に想定しております。その上で、支援法人が行うモデル的な取組に対しては直接的な財政支援も行ってまいりたいと考えております。
また、御指摘の古民家再生協会のような支援法人に関心のある方々の参考となるよう、これまでに財政支援の対象となった事例を分かりやすく整理し、どのようなモデル的な取組が財政支援の対象となり得るかを情報提供してまいりたいと思います。
さらに、支援法人が活用可能な支援策について、国の制度だけでなく、自治体の制度も含め幅広く取りまとめて分かりやすく周知を行うとともに、必要な予算の確保にも努めてまいりたいと思っております。
○高橋光男君 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。
続きまして、空家対策に資する優良な施策の横展開についてお伺いしたいと思います。
この点に関しまして、現在、全国自治体の八割超で既に空家等対策計画が策定されておりまして、うち七割は除去や活用など何らかの補助制度を実施しています。
具体例をお示ししたいと思います。資料三を御覧ください。
こちらは神戸市の今年度予算の空家空地対策でございまして、実に様々な支援メニューを用意されています。赤枠しましたように、空家活用の支援としましては、改修設計、工事費等を補助するため、建築家と協働する場合には最大五百万円まで拡充、空地対策につきましても、下にございますように、活用応援制度としまして、隣地統合のために買主のみならず売主に対しても必要な手数料を補助したりするなど、独自の取組を行っています。
一方で、現場からは、自治体間の取組に温度差があると懸念が示されています。もちろん、地方自治ですから、各地域の実情に応じた取組や自主性は尊重されなければなりません。他方、全国には、まだ計画がない、あっても支援がない自治体が全体の四割ほどございますので、先進自治体による良い取組を横断的に共有していくべきではないでしょうか。
そこで、本法改正を機に、神戸市の好事例などを事例集としてまとめるなどして横展開をしっかりと行っていただきたいと提案をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(塩見英之君) お答え申し上げます。
空家対策の中心は市町村でございます。国の補助制度の活用状況を見たり、あるいはその空き家バンクの設置状況などを見ますと、やはり各市町村の取組の内容に大きな差があるというふうに私どもも認識をしてございます。今後は更に空家が増加するということを考えますと、より多くの自治体に、空家問題の切迫性でありますとかあるいは対策の必要性、これを是非御理解をいただきたい、そして、より効果的な対策を講じていただきたいというふうに考えます。
このため、市町村が近隣の自治体におきます取組状況などを簡単に調べられるような仕組みというものをまず考えてみたいと思います。これは、隣でどういうことをやっているかということは非常に気になるということがあると思いますので、それをより簡便に調べられる仕組みというものを考えたいと思います。
それから、先生御指摘のような特色のある優良な取組というのは各地で行われております。神戸市もその一つだと思います。こういう優良な取組事例を事例集という形にして横展開を図るというのは非常に有効な手法だと思いますので、是非そういう方向で考えさせていただきたいと思います。
○高橋光男君 ありがとうございます。
恐らく最後になるかと思いますが、農村部における取組についてもお伺いしてまいりたいと思います。
中でも、農地付き空家、皆さん御存じでしょうか。この農地付き空家の取引促進が空家予防にとって非常に効果的な取組と考えます。
資料四を御覧いただければと思います。こちら、国の資料でございますけれども、全国をリードするモデルとして紹介されているのが我が兵庫県宍粟市の取組です。同市では、農地取得の際の下限面積である五十アールを早々に一アール、百平方メートルまで緩和をしています。その結果、平成二十八年以降、空き家バンクを通じて既に五十二件成約をしました。写真、下にございますように、二十代女性の移住もあり、若者の移住が進んでいるところでございます。
今後、この農地付き空家の取引を推進するに当たっては、是非、宍粟市のように先行する地域の経験から学ぶことが重要、有意義と考えます。そこで、現場でお聞きしたお声に基づいて質問させていただきます。
まず一点目、本年四月の改正農地法施行を受けまして、農地取得の際の面積要件が撤廃されました。したがいまして、宍粟市のような自治体は今後増えることが期待されます。しかしながら、現場からは、ほかのこの三要件、すなわち、第一に農地全部を効率的に利用すること、第二に必要な農作業に常時従事すること、第三に周辺の農地利用に支障がないようにすること、これらを守ることが地域との共生や農地保全のためにはこれまで以上に重要になるのではないかというふうな御指摘がございました。
特に、農地付き空家で農業を継続してもらうためには最初が肝腎だと強調をされていました。したがいまして、移住者に対しまして耕運機などの資材提供や農業技術の指導を継続的に支援することが有効と考えるが、市の予算では十分に対応し切れないというふうにお聞きしました。この点、是非国の支援をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(青山健治君) お答えいたします。
農林水産省では、農山漁村振興交付金を通じまして、農山漁村における定住や都市との交流等を促進するため、地方公共団体が作成する活性化計画に基づき施設整備等への支援を行っております。
具体的には、空家改修などの整備のほか、委員御指摘の農業機械の購入に関しましては共同利用を行うものについて支援対象となっておりまして、活性化計画の内容に従い、これらの一体的な実施が可能となっております。
当省といたしましては、引き続き関係府省とも連携しながら、農山漁村への移住、定住の促進に努めてまいります。また、協働農業普及事業交付金により、各都道府県の普及指導員が農業者に対し技術、経営指導を実施する際の活動を支援しております。委員御指摘の兵庫県宍粟市におかれましては、市が実施します畑の講習会において、移住者を含む受講者に対し、県の普及指導員が野菜、果樹、花卉等の栽培方法の技術指導を実施されております。
当省としましては、こうした普及活動を引き続き支援するとともに、各地の優良な取組を都道府県と共有し横展開を図ってまいります。
以上です。
○高橋光男君 現場はそうした交付金、余り御存じでない実態がございますので、農水省もしっかりと、現場にそうした支援があることを通知、周知していただきたいと思います。
続きまして、特に若者の移住促進のためには、地域おこし協力隊の隊員への農地付き空家の低額貸与が有効な手だてではないかというふうなお声もございました。
宍粟市では、これまで隊員十八名のうち八名が農業関係に従事されており、皆さん生き生きと活動されています。一方、市からは、空家改修費に充てる予算も十分ないところ、これに対して国庫補助をしていただきたい。具体的には、市が当初負担した改修費を事後的に地財措置等で償還をする、あるいは隊員が、任期最大三年間なんですけれども、しっかりと従事した場合には事後的にほぼ無償で提供するなど、支援を拡充することが有効なのではないかといったお声もいただきました。
是非、国として、宍粟市のような先進的取組、言わば宍粟モデルとも言うべきこの農地付き空家の好事例を今後全国的に横展開していただきたいと思います。そのためにも、まだ十分知られていない既存の国による補助の周知徹底や支援の更なる拡充など、一層の努力をしていただきたいと思いますが、最後に斉藤大臣に御答弁をお願いします。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 農地付き空家の活用は、農業に関心のある若い方の移住を促進する方策として非常に有効であると考えております。
現在、国土交通省では、市町村が移住者に賃貸するための空家の取得や改修に対して支援を行っております。また、総務省でも、市町村が地域おこし協力隊の着任前に移住、定住対策として実施する空家改修や、活動中や任期終了後に行う空家改修などの経費に地方財政措置を講じていると承知しております。
国土交通省としては、引き続き、現場の実態や課題を踏まえつつ、補助制度などの支援措置に加え、活用事例や委員御指摘の宍粟市などの先進的な取組についても周知を徹底し、積極的に支援を行ってまいりたいと考えております。
○高橋光男君 ありがとうございます。
今回、関係者への聞き取りを通じまして、国は様々な支援メニューがあるということを確認させていただきましたけれども、現場で必ずしも十分に活用されていない実態が明らかとなりました。政府には、是非、本日の御答弁を踏まえ、今回の法改正を受けた空家対策を一層有機的、効果的、機動的に推進していただくことをお願い申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。
ありがとうございました。