2025.06.03
国会議事録
令和7年6月3日 農林水産委員会
○高橋光男君 おはようございます。公明党の高橋光男でございます。
まず、小泉大臣の御就任、おめでとうございます。私からも祝意申し上げたいと思います。
さて、農水省の第一の使命は、大臣所信で最重要とおっしゃった食料の安定供給であります。命や健康の源である食料を、生産者から消費者までのいわゆる食料システム全体を俯瞰して、いかに安定的に提供していくか。国民一人一人の食料安全保障の確立を定めた改正食料・農業・農村基本法の理念を具現化していくためには引法、いわゆる食品アクセス法の改正は極めて重要であります。本改正案の議論に当たっては、目下国民の最大の関心事である主食たる米の安定供給、価格や取引の適正化の観点から実効性を検証することが有意義ではないかというふうに考えます。
質疑に入る前に、大臣にお伝えしたいことがあります。
昨年、農水政務官として学ばせていただいたことは、かつてない物価高という試練の中で、旧来の仕組みを所与のものとして固執してはならないこと、また柔軟な発想でチャレンジすることの重要性であります。今年から始まった備蓄米の新たな活用はその結果であります。
昨年九月、政務官として提案をさせていただいた際には、ほとんど耳を傾けてくれる方はいませんでした。しかしながら、粘り強く主張し続け、十二月に本委員会でも提案をさせていただいた仕組みを提案し、採用していただくことができました。しかしながら、その後、なかなか現場に届かない問題にも直面しました。流通の目詰まりがなかなか解消しない。私は、これまでの流通構造そのものが問題だとは思っておりません。現場からは、備蓄米を出すと決めてからは早かったと、また、もし春先に出始めていなかったら、特に業務米は切れていて今頃大変なことになっていたという卸関係者のお声も伺いました。
したがいまして、今この瞬間も一日も早く米を届けようと努力されている集荷から小売に至る全ての米流通の関係者への敬意と感謝の思いを忘れずに、そのお声を、丁寧に耳を傾け、必要な協力を仰ごうと、この姿勢が私は何より重要だと考えます。本日は、そうした立場から、現場のお声に基づいて質問をさせていただきます。
まずは、ともかく備蓄米の流通に関してであります。
我が党として提案し、大臣のリーダーシップで実現していただいた随意契約による備蓄米の提供。昨日、私も地元で手を挙げたスーパーの社長と懇談をさせていただきました。精米を卸売業者に委託され、近々販売を開始されるそうです。一日も早く店頭に並べて消費者に届けようと、社員一丸となって、深夜まで働いて準備に当たられています。一方、備蓄米を確実に必要な現場に届けるためには、倉庫事業者、そしてトラック事業者などの協力も不可欠であります。
そこで、資料一を御覧いただきたいと思います。
不眠不休で備蓄米の提供のために御尽力をいただいている様子、また現場のお声を紹介したものであります。前例のない出庫オーダーに応えていただいている倉庫事業者、輸送力の確保のため鉄道コンテナまで手配をしていただいているトラック事業者など、この場をお借りして関係者の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。
実際、小泉大臣は我が党の中野国交大臣にも協力を要請されまして、備蓄米物流支援室が立ち上がりました。農水省として、こうした関係事業者との具体的な協力体制をどのように構築し、必要な支援を行おうとしているのか、まず大臣、お答えいただければと思います。
○国務大臣(小泉進次郎君) ありがとうございます。
高橋前政務官におかれましては、農水省の中で様々アイデアもいただいて、そういった先生の御努力の一つが、早くから随意契約でやるべきだと、こういった思いを持たれていたというのは承知をしています。今回、私が随意契約というのを判断をさせていただきましたが、それはやはり前大臣の江藤大臣含め、前政務の皆さんの蓄積の上にあるということを忘れずに、そして関係者の皆さんに今取り組んでいただいていること、心から感謝と敬意を忘れずに取り組んでいきたいと思います。
そして、関係者の皆さんとどのような協力体制をということでありますが、今言及のあった国交大臣、中野大臣に、本当にスピード感を持って国交省に既に支援室を立ち上げていただきました。
そして、あらゆる業界の御理解、御協力が必要だと思いますので、先日は全銀協の半沢会長、そして今日は、この委員会が終わった後は地銀協の会長と全信協の会長にも農水大臣室でお会いする予定です。
この心は、やはりこの備蓄米の随意契約に手を挙げた方々が、契約上、行政の契約なので最初に前払、一括金で現金が出ていきますので、こういったところが、与信とかそして資金繰り、ここに影響があってはならない。それを安心して取り組んでいただくためには、金融機関がしっかりとバックアップしますと、格別の配慮しますから、親身になってやりますからという、このメッセージを出してもらいたい、そういった思いで、非常に迅速に応えていただいております。
特に今日の地銀協、全信協においては、まさに新しい随意契約の対象が、ふだんから信金さんとかと取引をしている町のお米屋さん、そして中小のスーパーさん、地銀ですねと。こういった方々にもきめ細かくという思いで、こういった金融機関関係者の皆さんにも御協力を仰いでいます。
もちろん、全米販という卸の業界団体の皆さんにもお会いをしました、JAグループにもお会いをしました、全農の理事長ともお会いをしました。あらゆるプレーヤーの皆さんと、しっかりと現場の声をお聞きしながら、最大のスピードを持って国民の皆さんに届けることができるように引き続き努力をしてまいりたいと思います。
○高橋光男君 ありがとうございます。
引き続き大臣が先手先手でそうした対応をされていること、本当に敬意を表したいと思います。我が党としても、必要なまた申入れ等もそのときそのときに応じてまた行っていく考えでございますので、よろしくお願い申し上げます。
続きまして、これも大臣、ちょっとお伺いしたいんですけど、今朝も新聞報道でもございました全国の平均価格についてであります。
昨日は五キロ四千二百六十円に下がったというふうに報じられました。これは、いわゆるPOSデータという民間に委託して得られた情報に基づきまして農水省が作成する全国約千店舗でのスーパーでの販売価格です。
しかしながら、ここに、これまで三回の入札分による、いわゆるブレンド米について、その多くを扱っていただいている大手量販店での販売価格がほぼ反映されていないということを御存じでしょうか。この話は実は、そうした量販店に卸されている地元大手の卸売業者さんから伺いました。
大臣、全国平均価格として、国民の皆さんに対しより実態に即した正しい情報が提供されるよう、国として丁寧に掌握をして提供する必要があるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(小泉進次郎君) 今、高橋先生からPOSデータについての御指摘もありました。
今回の随意契約によりまして備蓄米の売渡し対象となったスーパー等には、国から引渡しを受けた米穀を含む、精米として販売した全ての米穀のPOSデータ等の販売実績の報告を求めています。
そして、今、昨日ですね、農水省からは、備蓄米の今までの入札米の全国の店頭の調査、こういったものも毎週発表していく予定です。POSデータは二週間前のものでありますので、こういったことだけではなく、できる限り早くこの店頭の状況、価格の動向、こういったものが反映されるようなこのデータの収集、そして御協力のお願い、こういったものは引き続き努力をしていきたいと思います。
○高橋光男君 是非、国民に対して米は一体今幾らなのかというところにつきまして、やはりより正確な情報を提供していくために、農水省として主体的に取り組んでいただくことをお願い申し上げます。
続きまして、取引の適正化につきましてお伺いをいたします。
まず、米の価格形成におきましては、生産者との観点ではJA全農の役割が非常に大事でございます。この点、まず、これまで備蓄米の扱いに当たって、利益を追求せず御協力をいただいていることに心から感謝を申し上げたいと思います。国としても、是非こうした事実をもっと積極的に私は発信していただくことをお願いを申し上げます。
一方で、農家とJA全農との間で決められるいわゆる概算金というものがございます。これは、集荷業者、JA全農にとっての仕入れ原価になりますけれども、その水準が農家の収入を左右し、集荷率にも大きく影響します。実際、一昨年産までの直近十年以上、概算金が低く設定されていたことが他の業者に米が流れる要因となったとも指摘をされています。
他方、現在、地元兵庫では、今年産には最低保証価格というものを打ち出し、集荷率を上げようとする試みもございます。つきましては、全国の概算金水準を、是非把握を私は国としてやることも重要ではないかというふうに考えます。
そして、万一でありますが、不適切な価格設定がなされるとするならば、やはり是正することも可能にしていく、こうした対応が必要ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(山本佐知子君) 米の出荷の際に農家に支払う概算金については、あくまでも民間の取組の中で行われているものであり、国がその水準について指導することは難しいと考えています。
しかしながら、その上で、本委員会からも、「今後検討される新たな水田政策の下においても、米の生産・流通・備蓄政策全般について必要な検証を行うこと。」との決議をいただいておりますし、今、今回、委員の御指摘もいただきましたが、こうしたことに基づきまして、概算金も含めて検証結果、検証と検討もしっかり行ってまいりたいと思います。
○高橋光男君 是非、よろしくお願いいたします。
それでは、本法に新たに定められる事業者の努力義務に関しましてお伺いをいたします。
適正な価格での取引に向けて、事業者が持続的な供給に必要な費用の考慮を求めた際に、相手方は誠実に協議に応じる努力義務などが課されるものと承知をいたします。
この点、大臣が努力義務に対応したこの行動規範というものが今後新たに定められるものというふうにお聞きしておりますが、どういった内容になるのか教えていただければと思います。
特に、この米につきましては、JA全農とこの農家との間においてもこの努力義務というものが適用されることになるのか。もし適用されるのであれば、私は、それは単に規制的な内容だけではなくて、先ほど申し上げた新たな試みとして最低保証価格というようなものもございます。こうした先進的な取組も促すような内容にしていくべきではないかというふうに考えますが、この点、政府参考人にお伺いをいたします。
○政府参考人(宮浦浩司君) お答え申し上げます。
まず、御指摘のございました、今後、農林水産省令で定めます判断基準についてでございます。
今、関係事業者ともワーキンググループを設定して協議を進めているところでございますが、現時点で想定されるものを例示として申し上げますと、費用の考慮に関して言いますと、まず、売手側では、きちんと費用をまず把握すると、それから、これに変化がある場合にその水準ですとか要因などを誠実に説明する、こういったことが考えられます。また、買手側の方では、協議の申出があった場合に速やかに応諾をするといったことのほか、どのようにその費用を考慮したのかということをきちんと説明するということが考えられます。
また、商慣習などのこの見直しに関してでございますが、これは売手、買手双方共通の事項となってまいりますが、積極的に提案をするといったことですとか、提案があればこれは前向きにとにかく検討をして協力をしていくといったことが想定されるところでございます。
それから、米についてでございます。
この概算金につきましては、協同組合の内部において誠実に組合員に向き合うということは、この法律云々の前の話でもないかというふうにも考えられますが、先ほど政務官から御答弁を差し上げました今後の検証あるいは検討も踏まえながら、現在関係者とも協議を進めておりますので、そういった協議も踏まえて詳細を詰めていきたいというふうに考えているところでございます。
○高橋光男君 努力義務がまさに対象になると考えてよいということでしょうか。この点、ちょっと明らかにしていただきたいと思います。
○政府参考人(宮浦浩司君) お答え申し上げます。
関係者や、それから関係者の協議ですとか、今後のこの米に関する決議を踏まえた検証、検討も踏まえて引き続き検討をしていきたいというふうに考えてございます。
○高橋光男君 その辺りが曖昧ではございますけれども、私は、やはり、まず出口、出ていくところですね、この生産者と、まずそこの、もちろんJA全農だけではありませんけれども、そことの間にもやはり今回の改正法が適用されるという前提がなければやはりきちっとした価格形成というのはできないというふうに考えますので、この辺りしっかり議論していただくことをお願い申し上げます。
次に、この価格形成について大臣の見解をお伺いしたいと思います。
おととし設置されました適正な価格形成に関する協議会では、昨年十一月に米に関するワーキンググループが設置されまして、既にお米についてはコスト調査が行われております。しかしながら、西日本地域などの中山間地域での調査はこれからになっています。
私は、それらも早急にやっていただいた上で、農家にとってコスト割れするような米の販売価格は持続できないという姿勢を政府が明確に示すべきだと考えます。
大臣、私はこれまでも国会で主張してまいりましたけれども、地域や地勢などの違いを踏まえた生産コストをエビデンスとしつつ、持続可能な米生産のための価格水準とはどのくらいのものなのかと、すなわち、持続可能な価格水準についての考え方を国として明らかにすべきと考えますが、見解を教えてください。
○国務大臣(小泉進次郎君) 農産物、食品のコスト構造の調査については、令和六年度から米、野菜、果実等に関して実施したところでありまして、令和七年度も、米を含め調査対象を拡充して、生産から販売に至る各段階のコスト構造を一層明確化してまいります。今、高橋先生から御指摘のありました西日本地域や中山間地域というのも取り組めるか、よく検討していきたいと考えています。
この法案を含めて、農産物や食品の価格は市場や取引当事者間で決まるものであります。この法案では、あくまでもコストの考慮を求めることによってコスト割れを抑止し、食料の持続的な供給を確保しようとしてまいりますが、御指摘の持続可能な価格基準のような価格自体に言及することは差し控えたいと思います。
さらに、この法案は、持続的な供給を実現していくためにはコスト割れを抑止すべきとの観点から提案していますので、政府としては、費用を考慮する重要性を明確に示していると考えております。
○高橋光男君 その考慮する重要性だけできちっとまさにコスト割れしないような価格が形成されていくのかというところは、まだまだ私は議論の余地があるかというふうに思いますので、引き続き私としては求めてまいりたいと思います。
続きまして、ちょっと話は変わりますけれども、食品ロスの削減の観点から、フードバンク等との連携についてお伺いをいたします。
今回の法改正では、フードバンク等との連携強化も対象事業とされております。地元のフードバンクからは、寄附が圧倒的に足りないという声をいただいております。この背景には、平成二十八年のいわゆるダイコー事件というものがございます。これは、廃棄物処理事業者が処分されるはずの食品を不正に転売をした事件でありますが、これを受けまして再発防止が強化されたことを受けまして、食品企業が寄附をためらうようになったという現状がございます。
フードバンクの現場からは、私たちは不適切な処理はしていませんと強くおっしゃっています。是非、こうした誤解を解くためにも、関係団体に向けて新たな通知の発出など、国として具体的な後押しをお願いしたいと思います。
そして、寄附する側の手続の煩雑さやコストの高さも寄附を妨げる要因となっています。是非、政府として、自然とフードバンクに寄附が回るような仕組みづくりについて本腰を入れて取り組んでいただきたいと考えますが、大臣の御答弁をお願いします。
○政府参考人(宮浦浩司君) お答え申し上げます。
このフードバンクなどへの食品の寄附の促進でございます。大変重要と考えてございまして、これまでも、政府の中でも非常に多くの省庁に関わる話として、消費者庁、環境省、農林水産省、厚生労働省など、一体となって取り組んでございます。
特に、昨今はこの、御指摘のありましたとおり、食品寄附への社会的信頼を高めるということに着眼をいたしまして、消費者庁を中心として、食品寄附などに関する官民協議会というものを開催をしてきてございます。昨年十二月には、食品企業ですとかフードバンクなどが遵守すべき事項というものをきちんと取りまとめまして、食品寄附ガイドラインという形で公表をいたしてございます。
過去の事案などに関してもとらわれることのないように、こういったガイドラインについて関係省庁がそれぞれ関係団体に周知をいたしますととともに、農林水産省におきましても、今年の三月に食品関係団体に対しまして、ガイドラインに基づく食品寄附の協力要請というものも行ってきたところでございます。また、本日は重ねて御指摘がございましたので、その点につきましても、食品関係団体への更なる周知、要請というのは行ってまいりたいというふうに考えてございます。
今後とも、このフードバンクなどへの連携強化というのは一層重要になると見込まれますので、積極的に政府を挙げて取り組んでいきたいと考えてございます。
○委員長(舞立昇治君) まとめてください。
○高橋光男君 以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。