2026.06.17
本会議
令和8年6月17日 本会議
○高橋光男君 公明党の高橋光男です。
私は、会派を代表して、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたします。
政治の使命は、国民の命と暮らしを守り抜くことです。命と暮らしに欠かせない食料を日々支えてくださっているのが、全国の農林水産業に従事される皆様です。冒頭、現場で汗を流すお一人お一人に心から敬意と感謝を申し上げます。
しかし、その現場は限界に近づいています。基幹的農業従事者は、二〇〇〇年の約二百四十万人から二〇二五年には約百万人にまで減少。平均年齢はほぼ七十歳。荒廃農地も全国で約二十五万ヘクタールにも及びます。現場では、もうからない、子に継がせられないとの声を多く伺います。とりわけ米は長く低価格が続き、消費者には安くて当たり前という感覚が定着し、その間、生産者の負担に目が注がれることはまれでした。
この状況を一変させたのが令和の米騒動です。政府自身も、需要の見通しと実績に大きなずれが生じ、高温等で精米歩留りが悪化したことを認めています。令和五年産では四十四万トン、令和六年産でも三十二万トン、需要に対して供給が不足しました。米不足は、日々の食卓や給食、介護施設や子供食堂、中食、外食など国民全員に影響を与える問題。ゆえに二度と繰り返してはなりません。
公明党は、その反省から、食糧法改正を食料安全保障への真の改革の契機とする決意に立ち、質問いたします。
第一に、国の危機認識を伺います。
食料は、国防やエネルギーと同じく、国の安全保障です。中東情勢を背景に、ナフサ由来の農業用資材や包材、肥料、燃油の先行きに不安があります。中道、立憲、公明三党は先月、ナフサ由来農業用資材の安定供給などを政府に申し入れ、さきの補正予算にも、肥料や飼料、資材の価格高騰対策等を修正提案しました。
政府は、なぜそうした支援を補正予算に盛り込まなかったのか。なぜ、他の安全保障に比して極めて低水準の予算のままなのでしょうか。当初予算も含め、食料安全保障に抜本的な予算を確保、手当てする意思はあるのか、鈴木農林水産大臣並びに片山財務大臣の見解を伺います。
以下、食糧法改正に関して、全て農水大臣に伺います。
まず、法改正の意義についてお尋ねします。
政府案は、米の加工、中食、外食事業者も届出対象に追加し、在庫量や販売量などの定期報告を求め、備蓄の目的を需要増による不足にも広げ、民間備蓄制度を創設するものです。ただ、現場からは、米がどこにどれだけあるかを正確に把握できなければ役に立たないとの声、備蓄米も不足時だけでなく過剰時にも機能させるべきとの声をいただいています。
今回の改正で、国民の食卓と現場の不安をどう解消していくのか、認識を伺います。
備蓄米については、昨年、我々公明党の提案に従い、国民生活を守るために提供され、その判断は必要でした。政府備蓄は、通常百万トン程度を前提に、毎年二十万トン程度を買い入れる仕組みです。ところが、放出により水準は大きく低下し、今は三十二万トン、うち十五万トンは令和二年産米です。食用として問題ないのでしょうか。令和八年産の買入れは二十一万トンの予定ですが、それだけで足りるのでしょうか。価格急落と有事の双方に備えるため、民間備蓄も活用し、国の責任で早期に百万トン水準へ戻すべきと考えますが、見解を伺います。
需給の安定に必要な情報基盤についてお聞きします。
価格安定の前提は需給安定です。需要量に加え、供給量、すなわち生産量の実態の把握が不可欠です。農水省は、水稲収穫量調査の精度向上に向け、人工衛星データやAIを活用した実証に取り組んでいるものと承知します。今回の改正で報告義務だけを増やせば、現場の負担になります。衛星、AIなどの官民の技術を駆使し、農家に過度な負担を掛けず、作付面積や収量を正確につかむ仕組みを早急に実装すべきではないでしょうか。答弁を求めます。
コスト指標と価格形成に関してお尋ねします。
市場原理だけでは農作物の需給均衡は図れません。農家は、肥料や燃油が上がっても、すぐには価格に転嫁できません。だからこそ、再生産可能な価格の物差しが必要です。米穀機構は四月、米のコスト指標を公表しました。食料・農業・農村基本法が定める合理的な価格形成を進めるためには、フードGメンが現場に入り込み、集荷、卸、小売、外食まで食料システム全体で適正な取引につなげ、消費者理解も進むようにすべきではないでしょうか。答弁を求めます。
小規模農家と中山間地域支援について伺います。
持続可能な農業には、条件不利地の経営実態を直視しなければなりません。地元市川町の棚田農家から、次のようなお話を伺いました。この十年間で、資材や機械代など経費約八百万円に対し、米販売収入は約三百六十万円、実に四百万円超の赤字、一体何をやってきたんだと。御自身への吐露の言葉でしたが、私は政治への憤りの声として重く受け止めました。
実際、小さな面積ほど米の生産費は高く、五ヘクタール未満では収益確保が難しいのが現実です。集約やスマート農業も、平場のようには進みません。それでも、農地は水をため、土砂災害を防ぎ、地域の暮らしを支えています。
棚田や離島などの国土保全の観点からも、中山間地域等直接支払や多面的機能支払は現行水準を超える拡充を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
制度からこぼれる方々への支援も忘れてはなりません。中山間直払いは対象になり得ても、事務負担などで未申請の地域が多くあります。収入保険は青色申告が前提です。ナラシ対策も認定農業者などが中心で、対象外の農家が多いのが実態です。
主食用米には、コスト急騰や価格急落への補填措置がほとんど存在しません。一定の在庫水準や価格下落、コスト上昇を条件に発動する新たな経営安定制度を導入すべきと考えますが、見解を求めます。
食糧法改正と切り離せない課題として、来年度からの新たな水田政策について伺います。
水田活用直接支払交付金につき、政府は、面積払い中心から作物ごとの生産性向上、収量に応じた支援へ転換する方針を示していますが、単価や収量要件などは未定です。これでは現場は来年産の作付けや契約を判断できません。
条件不利地や中山間地域が取り残されない設計とし、少なくとも現行水準以上の予算を確保して、新制度の具体を早く示すべきです。また、地域計画も作って終わりにせず、推進組織やコーディネーターの配置、農地中間管理機構の手続の簡素化、迅速化により、受け手が未定の農地でも担い手や新規就農者へとつなげる体制を強化すべきと考えますが、併せて答弁を求めます。
ここで、担い手確保に関して防衛大臣に伺います。
体力と規律を有し、車両や機械操作の経験を持つ退職自衛官は、地方農業の新たな担い手として有望です。地元にも、梨農家などに転身し、活躍している方がいます。大変有り難いことです。職業選択の自由を前提としつつも、防衛省として、農水省や自治体、JA等と連携し、退職自衛官の就農支援を進めるべきではないでしょうか。御所見を伺います。
農地を守る最後の要は人です。大規模化、スマート農業、若手農家の挑戦は進み始めています。一方、家族経営、兼業農家、集落営農、農業ボランティア、外国人材も地域を支える担い手です。若者が希望を持ち、地域が支え合い、皆が力を合わせて働ける仕組みをどうつくるのか。食料安全保障の根幹である担い手の育成、確保、協働体制をどう強化するのか、最後に農水大臣の決意を伺います。
公明党は、どこまでも現場第一で、額に汗かく皆様のお声を国に届け、食料の安定供給と食料安全保障の確立へ全力で邁進することをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣鈴木憲和君登壇、拍手〕
○国務大臣(鈴木憲和君) 高橋光男議員の御質問にお答えいたします。
今回の補正予算や農林水産関係予算についてのお尋ねがありました。
今回の補正予算は、中東情勢を踏まえ、国民の暮らしや経済活動に支障が生じないよう適切に判断し、必要に応じてタイムリーに対応するため重点支援地方交付金や予備費を措置し、リスクの最小化の観点から、万全の備えを取ったものです。
農業生産資材等の価格高騰に対しては、令和八年度当初予算や令和七年度補正予算などを活用し、燃油や飼料の価格高騰による影響を緩和するため、補填金を交付する制度を講じているほか、農林漁業セーフティネット資金などに対する金利負担軽減の措置も講じているところです。
また、農林水産関係予算については、近年、厳しい財政事情の中にあっても必要な予算の確保を図っており、令和八年度当初予算は前年度比二百五十億円増となっています。さらに、令和七年度から五年間の農業構造転換集中対策期間においては対策費用一・三兆円を別枠予算として措置することとしており、引き続き、必要な予算を確保し、食料安全保障の強化を図ってまいります。
次に、本法改正で米の安定供給に係る国民の不安をどう解消していくのかについてのお尋ねがありました。
本改正案では、多様化する流通実態を的確に把握するため、外食、中食、加工業者を届出対象に追加をする、民間事業者に対し在庫数量や取引数量などの定期報告を義務付ける等の措置を講ずることとしております。また、備蓄米の機動的放出を可能にするため民間備蓄制度を創設することとしており、これらの取組により、国民の皆様に対し米の安定供給を図ってまいります。
なお、政府備蓄は食料安全保障の観点から不可欠であることから、供給が不足する場合に備え、量が足りていなければ売り渡す、量が足りていれば売り渡さないとの考えで運営することとしており、米価の維持を目的とした運営は行わない考えです。
次に、政府備蓄米の備蓄水準の回復についてのお尋ねがありました。
政府備蓄米の在庫量は現在三十二万トンですが、保管中の品質劣化を防止するため、倉庫内の温度、湿度を一定水準に保ち、令和二年産米を含め、主食用としての品質を維持しているところです。
本年四月から六月にかけて令和八年産の政府備蓄米の買入れを行ったところですが、政府備蓄米の買戻しについては、今後の需給状況や販売動向等を見定めた上で適切に判断してまいります。
次に、人工衛星やAIなどを活用し、米の収穫量などを正確に把握する仕組みについてのお尋ねがありました。
米の需給の安定を図るためには、デジタル技術を活用して、効率的に生産量に関する統計調査の精度を向上させることが重要です。このため、昨年十一月に開かれた米の安定供給等実現関係閣僚会議において、将来は人工衛星データやAIを活用した生産量の算定に移行することを目指すこととされ、本年度から実証研究を開始したところです。
収穫量などを効率的かつ正確に把握する統計手法の確立に早急に取り組んでまいります。
次に、フードGメン、フードGメンが現場に入り、食料システム全体で適正な取引につなげるべきとのお尋ねがありました。
米について、生産者による再生産が可能で、消費者にも理解される合理的な価格形成を図るためには、本年四月に施行された食料システム法に基づき、米穀機構から公表されたコスト指標も参考に、生産から流通、販売に至る各段階の取引が適正に行われることが重要です。
このため、農林水産省では、フードGメンの体制を整備し、本省、地方農政局の情報窓口に寄せられた情報や食品事業者への取引実態調査で得られた情報を基に、フードGメンが食品事業者の事業所に出向き、誠実に協議に応じているかなどの調査を実施しています。
調査の結果、協議に応じないなどの事案が確認された場合には、農林水産大臣が食品事業者に対し指導、助言、勧告、公表などの措置を講ずることで、適正な取引の確保に努めてまいります。
次に、中山間地域等直接支払と多面的機能支払についてお尋ねがありました。
中山間地域等直接支払及び多面的機能支払については、昨年四月の食料・農業・農村基本計画の中で、令和九年度以降の水田政策の見直しの一環として、「中山間地域等直接支払について、条件不利の実態に配慮し、支援を拡大する。多面的機能支払について、活動組織の体制を強化する。」と明記されたところです。
これを踏まえ、中山間地域等直接支払については、地方公共団体が、傾斜によらない不利性を有する農地について、協定農地の営農や共同活動の継続のために必要と認める場合、対象農地へ位置付ける、多面的機能支払は、地域外の人材の確保や先進技術の活用により作業の省力化を図る取組を支援するといった検討を進めることとしており、今後、関係者の御意見等を踏まえ、詳細を検討してまいります。
次に、コスト上昇などを条件に発動する新たな経営安定制度の導入についてのお尋ねがありました。
生産者が安心して営農活動を行うためには、生産者の再生産、再投資が可能な価格水準に落ち着いていくことが重要であると考えております。
本年四月の食料システム法の施行を受けて公表された米のコスト指標は、生産から販売に至る各段階のコストを明確にし、コスト割れでの供給を抑止しようとするものです。これを参考に、生産から流通、販売に至る各段階の取引が適正に行われるよう、取り組んでまいります。
その上で、農業収入が減少した場合に備え、従来から収入保険などのセーフティーネット対策を措置しており、引き続き、こうした施策を着実に推進してまいります。
なお、新たな経営安定制度の導入に当たっては、生産性向上に向けた取組に与える影響や、どういった生産者を対象とするのか、支援水準をどのように設定するのかなど、慎重な検討を要するものと考えています。
次に、新たな水田政策について、早期の制度設計と十分な予算確保についてお尋ねがありました。
令和九年度からの新たな水田政策においては、加工用米、米粉用米など主食用以外の米や麦、大豆などについて、生産性向上の取組に対し、収量に応じた面積払いで支援することを検討しています。
収量の算定に当たっては、中山間地域などの条件不利地域の実態も考慮し、全国一律の基準ではなく、地域別の基準の設定を検討しています。
具体的な支援の単価や要件については、今後早急に検討を進めてまいりますが、現行の水活の見直しや見直しに伴う既存施策の再編により得られた財源を活用し、新たな水田政策に必要な予算額についてはしっかり確保するべく、努力してまいります。
次に、地域計画における受け手不在の農地についてのお尋ねがありました。
地域計画は、一度策定して終わりにするのではなく、受け手不在農地の解消などのためにも、関係機関が連携し、継続的な見直しを行い、その完成度を高めていくことが重要です。
このため、市町村、農業委員会に加え、JAや土地改良区などの協力団体も含めた現場活動の推進体制の強化や、地域の話合いのコーディネーターなどの派遣などを支援しているところです。
また、農地バンクについては、地域外からの担い手の誘致など、受け手を見付ける努力を続ける市町村などと連携して、積極的に中間管理を行うことを促してまいります。
あわせて、農地の貸借に係る関係書類の削減など、農地バンクの手続の簡素化、迅速化を図っているところであり、これらの取組により、受け手不在農地も含め、より多くの農地を担い手や新規就農者につなげてまいります。
次に、担い手の育成、確保と地域の協働体制についてのお尋ねがありました。
農業者の減少が進む中で、食料安全保障の確立を図るためには、農業で生計を立てる担い手の育成、確保を図るとともに、地域農業が維持発展できるようにすることが重要です。
そのためには、農業を他産業よりも魅力がある、稼げる産業にすることが必要です。農地の集約化や大区画化などの生産性向上や、農作物のブランド化などによる付加価値向上、輸出による販路拡大など、農業経営の収益力を高めるための取組を進めていくとともに、地域が共同で行う水路、農道などの管理活動などを支援し、協働体制の強化を図ってまいります。(拍手)
〔国務大臣片山さつき君登壇、拍手〕
○国務大臣(片山さつき君) 高橋議員から、補正予算や食料安全保障に関する予算についてお尋ねがありました。
今般の補正予算は、中東情勢が不透明である中で、必要に応じてタイムリーに対応できるようにするため、リスクの最小化の観点から、中東情勢等対応予備費の創設などを行ったものであり、本予備費の目的に沿うものであれば活用も可能となっております。
その上で、政府としては、本年三月から燃料油に係る緊急的激変緩和措置を行っているほか、電気・ガス料金についても、使用量が増加する七月から九月において支援を実施することとしており、こうした措置によっても農林漁業者の方々の御負担も、一定程度は軽減されるものと考えております。
加えて、農林漁業者については、既に燃油や飼料の価格の高騰に対して、補填金を交付する制度のほか、日本政策金融公庫の農林漁業セーフティーネット貸付けにおける最大二%の金利引下げなどの支援策も講じてきていると承知しております。
こうした取組を通じて、引き続き農林水産省とよく連携しながら、農林漁業者の経営をしっかり下支えしていくとともに、食料安全保障の強化を図ってまいります。(拍手)
〔国務大臣小泉進次郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(小泉進次郎君) 高橋光男議員にお答えいたします。
退職自衛官の就農支援についてお尋ねがありました。
防衛省では、令和七年六月に農林水産省や農林水産関連団体との間で申合せを締結し、全国の農業大学校における研修や退職予定自衛官に対する農業インターンシップを開催するなど、就農のための支援を行っており、令和元年度以降の七年間で約百三十名が農業へ再就職するなど、多くの自衛官がセカンドキャリアとして農業を志しているところです。
また、民間においても、例えば農業自衛隊という団体は、現役自衛官や民間の方々が、日本を守るという防衛省・自衛隊の使命と食を守るという農業の重要性の観点を結び付けるべく、実際に農業に取り組むなどの活動を行っています。私もこの団体と意見交換をさせていただきましたが、農業は自衛隊で培った能力を生かせる分野であると改めて実感しました。
今後も、就農を希望する退職予定自衛官への一層の支援と農林水産業の担い手確保のため、関係機関等と連携した取組を強化してまいります。(拍手)
