2026.06.23
国会議事録
令和8年6月23日 農林水産委員会
○高橋光男君 公明党の高橋光男です。
本日は、大変お忙しい中、三名の参考人の皆様には貴重な示唆に富む陳述をいただき、ありがとうございました。
早速お伺いしてまいりたいと思いますが、まず備蓄に関してなんですけれども、武本参考人にお伺いしたいと思います。
機能させるべきだというお話があったと思います、機動的にですね。その中で、私は、不足時だけではなく過剰時にも備蓄を機能させるということが今の局面において必要じゃないかと思っております。
今備蓄は三十二万トンまで減って、政府備蓄ですね、今回新たに民間備蓄を取り入れるわけですが、実際導入されるのは令和十年度以降というふうに言われています。では、需給の安定を通じた価格の安定化という法目的から照らせば、この市場に過剰感が生じて米価が急落する局面への備えも同じく必要かつ重要なことだと思っております。
その意味で、余剰分を市場から例えば隔離をして民間備蓄みたいな形で位置付けるというようなことも可能だと思いますし、政府は、今言われていますように、買入れもちゃんとすべきではないかとか、そういったところを通じて需給の安定化を図っていくことの必要性というものについてどのように御認識か、お伺いしたいと思います。
○参考人(武本俊彦君) 御質問ありがとうございます。
結論から申し上げれば、今の先生の御主張を成り立たせるためには、備蓄の定義を、供給の不足に伴いというところを変えなければならないということですね。だから、需給変動に伴って価格が大きく変動することに対して政府在庫、政府備蓄を機動的に運営するということになります。
ですから、これは、食管制度のときはまさにこれをやったんですよね。結果、何が起こっちゃったかというと、膨大な過剰在庫を積み上げちゃったということで、にっちもさっちもいかなくなったということもあって、食管制度を廃止して食糧法に移り変わったと。そのときに、政府在庫をどうするかというときに、私はそのとき担当の調査官だったんですけど、これ備蓄に純化するしかないだろうなということで、あのときには、備蓄というのは価格が上がったときの消費者対策という位置付けにしました。
その後、世の中が大分変わってきたので、生産調整もやらないって、本当にやらなくなっちゃうと大変なことが起こることは否めないので、政府在庫についての運用の仕方をこの機会に抜本的に改めるというのは、それはその政策的あるいは政治的に議論すべき段階に来ているのではないかなと。ただ、そのときには、その納税者の負担をどう考えるかとか、多面的な検討をして、まさに、だから法律という形で整理をするしかないだろうなと。つまり、行政府の判断で今までとは全然違うことをやりますよとはならない世界ではないかなと私は思います。
○高橋光男君 ありがとうございます。
私も、食糧法の世界ではちょっと捉え切れない、政策的な判断で、これが価格が本当に暴落みたいなことがあった場合には必要になってくることもあるんじゃないかなと、今既にもう備蓄が足りていないわけですから、そういう意味でも位置付けられるのではないかと思っております。
それから二点目に、是非西川参考人にお伺いしたいんですが、コスト指標等の策定委員会のメンバーもお務めになられていると承知しておりますけれども、米の合理的な価格形成というのはこの改正基本法、また食料システム法等で位置付けられたわけですが、これってどこまで可能なのかというところについて、率直なお考えをお伺いしたいなと思います。
協議の材料にはなり得ますけど、当然ながら、考慮することはあくまで努力義務であって、この指標の存在だけでその取引の適正化が進むのかというのは疑問だと思っておりますが、この点、何か補うべき別の政策等もあれば、御指摘いただければと思います。
○参考人(西川邦夫君) 御質問ありがとうございました。
今先生に御指摘いただきましたように、コスト指標はあくまで取引のときに参照していただきたいものであるというふうなことで、それが最低価格保証であるとか、そういったものを意味するものではございません。
ですので、それが、じゃ、どれぐらい価格の下支え機能を持つのかというふうなことは、かなり難しいのではないかなと思っております。例えば、需給が本格的に緩む場合ですと、当然ながらコスト指標を下回る形で価格が形成されるというふうなことも十分考えられると思っております。
仮にそのコスト指標を実現させようと、その形で実現させようというふうなことであれば、当然、需給は、何といいますか、均衡に近い状態で維持されていく必要があるかというふうに考えておりますし、また、農水省の方の運用におきましても、食品Gメン等を設けて、それで流通の適正化を図っていくというふうなことになっておりますので、そちらの方の措置の実効性ということも重要かなというふうには考えているところでございます。
○高橋光男君 ありがとうございました。
まさにその点、私も前回委員会で聞いたんですけど、フードGメンってまだまだ現場に入り切れていませんし、実際、それにおいて、それで全て取引の適正化ができるのかということの課題はあるかと思います。
コスト指標によってそれが達成できない場合に、いかにして生産者の所得を確保していくのかということが問われているというふうに思っておりまして、その意味での、私は、経営安定対策について長谷川参考人にちょっとお伺いしたいと思います。
政府にこの話をすると、今は水活があり、日本型直接支払があり、そしてセーフティーネットとしては収入保険と、またナラシ対策といった話がある、需給が緩んだときには米穀周年事業というので、主に中間のJAさんとか卸とかのところでの調整を図るといったような答弁があるわけですけれども、これで果たして十分なのかというところに対して私も疑問に思っておりまして、ただ一方で、所得補償といった話になったときに、是非お伺いしたいのは、やっぱりこれって全国一律で同じような枠組みでやるべきとお考えなのか、やはり一方で、地域別であったりとか経営体の規模であったりとか、様々そういった差異にも着目した上での所得補償というものをどのようにお考えになられるかについてお伺いしたいと思います。
○参考人(長谷川敏郎君) たくさんできて暴落するときの経営をどう安定対策として支えていくかという問題の話ですけれども、今の経営安定対策の、先ほど述べました経営基盤強化法だとか含めて、これは基本的に認定農業者が対象なんですね。認定農業者だけで考えると全体農家はほとんどカバーできない。
また、収入保険についても、これは青色申告のみが対象ですので、私のような白色申告、ほぼ農家の九割を占めているところは、これも対象にならない。そして、今回みたいな急激なコスト向上については、収入保険は五年前の五中三ですから、とてもじゃないけれどもこれも対象にならない。まさにそういう意味では、こういう制度があるから守れるということにはなりません。
そして、米穀周年事業についても、二一年のコロナ禍のときの米価暴落のときにも十五万トンしか政府は周年事業で隔離しませんでした。ですから、規模そのものの発動も含めて、そういう判断も機動的には動いていないということだと思っています。
そういう意味で、例えば二一年のコロナのときに二十万トン余った。農家の方、全体で六百八十万ぐらい作っていて、百万トンぐらいは農家が食べたり配ったりする。残りは、言わば、今日資料で提出している全農のホームページのファクトブックのところで見ていただければ、一万五千円ぐらい掛かっているお米を、一万円だったわけですよね。五千円の差額というのは、全部で計算すると四千八百億から五千億ですよ。それを農家がかぶったわけです。あのときに二十万トンを政府が買い上げてくれれば、たとえ二万円であっても、それは六百億で済んだわけですよね。
だから、そういう意味でも直接買い上げることが必要だし、暴落したときに全部農家にそれをかぶせていいのか、せめてそれを半分でも直接支払でカバーしていただく、価格保障で支えていただくということが必要だと思っています。
この所得補償をやる場合でも、当然、経営形態によって、それから、スイスのように条件不利地と平地の違い、様々な違いがあります。問題は、この所得補償をやって農家の経営を維持して国土を守るという立場に政府が立っていただけるのかどうかなんですね。本当に、その点では本当に先生方のお力添えがないと大変だと思っています。
○高橋光男君 率直なお話、大変にありがとうございます。
そこで、実は我々公明党、また中道、立憲民主党さんと一緒に、この間、新たな水田政策について申し入れた中にも記載させていただいたんですけど、ここで私、本当に水田作版の新たな発動型の経営安定制度というものが必要なんじゃないかと。コストに着目した、コスト上昇局面においてであります。
また次の委員会の際に政府にもただそうと思っているんですけど、例えばですが、畜産にはマルキン制度というのがあります。これは、販売価格が生産費を下回る場合に、一定の条件の下に差額の一部を補填するものでありますけれども、それの何か水田作版というのはできないのかというふうに考えておりまして。もちろん、マルキンも個々の実費をそのまま補償するのでなくて、この標準的販売価格と標準的生産費を比較して差額の一定割合を補填する制度でありますし、積立てみたいな形でやっている、みんなで共助してやっていただいているものでありますが。
同じように、例えば、無条件な面積払いではなくて地域計画等の位置付けであったり、また需要に応じた作付けをしていただく、どのようにやるかというのは議論があるかもしれませんが、おっしゃられたように、国土を守る、国土保全的な意味合い、そしてコストがいかに急上昇しているような局面にあるかとか、そういったような中で、どのような生産性向上への取組をやっていただいているか、こういうようなところにも着目した上で、是非同様の制度を取り入れられないかなというふうに考えておりますが。
そこで、武本参考人と、時間があれば西川参考人に、手短に、それぞれこうした新たな経営安定対策制度についての御見解をお伺いしたいと思います。
○参考人(武本俊彦君) 非常に難しい御質問だなと思って聞いておりましたけれども、今の先生の御指摘は、農業政策という立て付けでやっていくのがいいのか、それとも、やっぱり地域政策的な、地域全体の農業を振興しながら収入所得の変動にどう対応していくのか、場合によっては農業からほかの産業、事業に転換することも含めて、その地域全体を底上げしていくという政策の中に今ある所得安定対策みたいなものを織り込んでいくという形を取らないと、純粋に農業政策で経営所得対策を考えていくと、多分なかなか制度が組みにくいというか、難しいのではないかなと思うんですよ。
だから、地域計画の話もされておられたから、地域計画の話も、農業をやるための農地をどうやって保全するかだけに狭く考えなくて、地域全体をどういうふうに考えていって、土地利用をどう考えていくのか、その中に農地をどうやって残していくのかというストーリーにしていかないと、つまり、間口をぐっと広げる中で、地域にどうやってお金を落としていくのかというアプローチをしていかないと、なかなか国民的コンセンサスが得られないのではないかなと私は思います。
○参考人(西川邦夫君) 御質問ありがとうございました。
今回の食糧法の改正で生産段階における生産調整が一定程度緩むというふうな中では、主食用米に対してセーフティーネットを設けるというのは当然考えられ得るかなというふうに思っております。
ただ、その上で、恐らく生産コストに着目した不足払いのような形をお考えになっているのではないかというふうに思案いたしますけれども、その際、例えば今回のコスト指標の議論でもありましたけれども、例えば、じゃ、どの層のコストを取るのかですとか、それとか、どういった、何といいますか、家族労働費評価をするのかというふうなところでやはり明確な基準等を示さないと、なかなかやっぱりその政策的な安定性というのが、例えば毎年そのコスト基準が変わってくるというふうなことになると支払額も変わってきますので、そういったやはり政策的な安定性という点が、やや、生産コストに着目する場合は懸念があるかなというふうには思っております。ですので、例えば何らかの基準で固定払いのような形にするとか、そういうふうなことも考えられるのかなというふうに考えているところでございます。
○高橋光男君 ありがとうございました。
時間が来ましたので、終わります。
