2026.07.14
国会議事録
令和8年7月14日 農林水産委員会
○高橋光男君 公明党の高橋光男でございます。
本日は、三名の参考人の皆様には、貴重な御見解、専門的お立場から、また現場の視点から御陳述をいただきまして、ありがとうございました。
限られた時間でございますので、早速お三方にお伺いしてまいりたいと思います。
まず、栗原参考人にお伺いいたします。
先ほどは、フリマサイトでの無断転売の深刻な実態や、またシナノゴールドのライセンス収益をいかにして次の品種開発に生かすのかといったような知的創造サイクルのすばらしい成功例を伺い、大変感銘を受けました。私としても、悪質な権利侵害から現場を守るためのルール作りは不可欠だというふうに思っております。
一方で、私は現場のコスト負担というのも非常に心配をしておりまして、今回の法改正で育成者権の存続期間が十年間延長されます。また、出願中の輸出差止め等も可能になるわけですね。これ自体はいいことだとは思うんですけれども、出願費用とか海外での権利の維持、また、これから発生しかねない裁判などの侵害対応に当たっては、莫大な費用と高度な専門知識を要するかというふうに思っております。今のままでは、おっしゃるような知的創造サイクルを回せるのは体力のある一部の大手企業とか県だけで、中小の育種家や個人、自治体にとっては権利を維持するだけでも大変大きな負担になるのではないかというふうに思っております。
国は育成者権管理機関を立ち上げると言っておりますけれども、私は、それだけでは不十分で、国による例えば直接的な費用の支援とか、弁理士とか弁護士みたいな専門家の方々へのアクセスの支援とか、そうしたこともセットで行われる必要があるというふうに思っておりまして、現場の多くの方々がそうしたものを活用できなければ制度を使いこなせないというふうに思うんですけれども、実務の最前線におられるお立場から、こうした中小や現場への直接的な支援の必要性について率直にどうお考えなのか、お答えいただければと思います。
○参考人(栗原潤君) ありがとうございます。
先生のおっしゃるようなコストの負担ですね、こういうものは我々も実は感じております。やはり、私どもの説明もしましたような許諾契約の事務、それから、契約者に対してお願いしております、契約によって発生しますやっていただきたいこと、これを守っていただかなければならないのですけれども、これを守っていただいているのかの確認ですとか、それから許諾料をしっかり払っていただくことをしっかりやっていただくことですとか、非常に人的にも労力の掛かる業務をやっております。
やりながら、次はどういう取組がベストなのかというのを検討しながらやっているような状況ですので、この辺りは、先ほども申し上げました知財ネットワークですとか、農林水産省の皆さんと相談をしながら、より良い、負担のなるべく少ないけれども、権利が守れて活用できるような仕組みがないかというのは現在も模索中でございます。
農林水産省の方からはいろいろな今も御支援を受けておりまして、費用負担の御支援もそうですし、それから先生おっしゃっていたような弁護士、弁理士さんへの相談ですね、こういうものも支援する制度というのがございますので、我々最大限活用させていただいておりますけれども、これを、どういう品種であればその対象になるのかどうかというのはちょっと我々では決められないことですので、この辺りは農林水産省さんにお願いしたいところかなと思います。
○高橋光男君 ありがとうございました。
本当に現場が制度を使うために必要な様々な費用的な支援を含めて、農水省がしっかり対応しなければいけないといった実態はよく分かりましたので、次の質疑にも生かしてまいりたいと思います。
次に、西川参考人にお伺いしたいと思います。
先ほど、世界の種子供給の七割を農家自身が担っているというインフォーマルシステムの重要性であったり、種子が文化とともに旅をしてきた歴史、そして食料主権という視点、大変興味深く伺いました。
多様な種子システムを守るという観点から、私は今回の法改正がもたらす現場への萎縮効果、これを非常に危惧をしております。
私の地元の例えば養蜂家とかからは、蜜蜂が数キロ飛び回るので、もし意図せずに登録品種の花粉を運んで自然交雑してしまった場合に権利侵害として訴えられるのではないかといったような不安の声が寄せられているところでありまして、本来農家が種を守り育てる営みが過度な権利保護へのおそれによって脅かされてはいけないというふうに思います。
私は、こうした意図しない自然交雑については、しっかり国がQAなどで明確に通常は権利侵害に当たらないと示して、現場への萎縮を防ぐべきだというふうに考えております。
多様な種子システムと自然との関係性を研究されてこられたお立場から、こうした意図しない自然交雑による萎縮効果への懸念とそれを防ぐための国の対応についてどのようにお考えでしょうか。
○委員長(藤木眞也君) どちらの参考人に。
○高橋光男君 西川参考人にお伺いしております。
○参考人(西川芳昭君) 御質問ありがとうございます。
インフォーマル種子とか文化との関係ということで関連して、その意図しない交雑による権利侵害に関する御質問かと思いますけれども、やはり、どういうんでしょうね、権利侵害に対する過度な制限ということに関しては懸念があるというのはもう間違いない事実だと思います。それで、その場合に、やはり歴史的に、旧アメリカ系の企業とかが農家を相手取って起こした訴訟とかいうのがちまたに情報がたくさん流れていて、そのような懸念というのがあるかと思うんですけれども、あくまでも現時点ですけれど、現時点では、私は、日本ではそこまでの、どういうんでしょう、日本の農林水産政策のその枠組みの中ではそれほどの大きな懸念はないというふうに、これは私自身がちょっと勉強不足かもしれませんけれども、そこまで懸念することはないのかなと思っておりますが。
一方で、もしそのような懸念がある場合に、権利侵害でないことの証明を農家の側にさせるのではなくて、ここのシステムが重要だと思うんですけれども、権利侵害をどちらが証明するかということで裁判で問題になると思うんですけど、ここの部分に関しては、やはり農林水産省なり国の方がきっちりと、その農家の側にそれほど負担に、それほどというのは、原則的に負担にならない形の制度構築というのが必要ですし、費用面に関しても重要だと思います。
というのは、やはり、種苗法を強化すること自体、知財の法を強化すること自体は、私は最終的にコモンズを広げていくことにつながると思いますので、強化自体は重要なんですけれど、それによって、その様々な農家、いろんな形態の農家があると思うんですけど、その方たちの活動が制限されることはあってはならないというふうに考えております。
○高橋光男君 貴重な御意見だというふうに思います。
農水省の説明では、そうしたことが起きたとしても直ちに当然権利侵害等に当たらないというお話ではあるんですが、生産とか更に販売とか、そこまで行ってしまうとそれは明確にやはり違反となると、育成者権等に侵害になるというようなお話も聞いてるところで、そうしたことをしっかり明確にしていく必要があるのかなと思います。
今の点も含めて、印鑰参考人にはその点も含めてお答えいただいても結構ですので、様々ちょっとお伺いしたいんですけれども、先ほどのイタリアの在来種保護法の事例とかゲノム編集、AI育種偏重への御懸念、そうしたものについてはしっかり受け止めさせていただきたいというふうに思います。
まさにその点に関して、新品種開発において、生態系との調和というのが少し置き去りになっているのかなと感じなくもありません。どんなに猛暑に強い品種を急いで作ったとしても、花の形が変わったり蜜蜂が受粉しにくくなれば現場では使えないということになると思います。
私は、この新品種開発時に、例えば蜜蜂等については、花粉媒介昆虫との適合性評価を仕組みとしてしっかり組み込むべきだというふうにも考えておりますが、その点についての御見解をまずお伺いしたいと思います。
あわせて、参考人が指摘された地方の公的資産が海外企業へ流出するリスクについてであります。これに対し、政府は、私も一度、こういった要請をよく最近お受けするものですから、聞いてみると、新法は、あくまで農研機構の施設を使うだけで都道府県に遺伝資源の提供を義務付けるものではないとか、また、民間企業からの計画提案には強制力がないといったような建前上の説明をしております。
しかし、本当に農研機構等を通じて間接的に地方のデータが外資等に利用される、そういうリスクはないのか、抜け道はないのか、また、そうした点から地方自治体も、あとまた国と巨大資本との間で葛藤というか、さいなまれることもなくはないんじゃないかなとか思ったりする中で、政府の説明と現場の実態の食い違いについて参考人の御懸念をもう少し詳しく教えていただければと思います。
○参考人(印鑰智哉君) ありがとうございます。
かなりいっぱいあって難しいんですけれども、まず、その萎縮効果のことについて一言申し上げたいんですけれども、実は日本はゲノム編集食品をスーパーで売っている唯一の国なんですよね。ほかの国じゃ、まだスーパーなんかで売っていませんので。
トマトが栽培が開始されたときに、栽培はこれ熊本県で始まったんですけれども、元の品種を作っていた北海道の農家が、この品種を諦めてしまった、栽培を放棄してしまったということを伺っています。というのは、トマトの種ってそんな飛ばないよって言っているんだけれども、実際にはこれは千二百キロ以上飛ぶんだって言っている研究者もいるんですよね。その結果、交雑してしまうじゃないか、これではこの品種はもう作れないということで、もう諦めざるを得なかったということで断念してしまった。そのような懸念というのは、非常に僕は存在し得るのかなということは思います。
それから、ちょっと難しい問題幾つもあったんですが、特に、今回の新育苗法案といいますか、その重要品種の法案ですけれども、特に地方自治体のデータは義務付けていないということですけれども、逆に言いますと、この枠組みは地方自治体にとってのメリットが余りに少ないですよね。広域のために作りなさい。でも、私は自分の県のための品種作りたいんだ、だけど広域のものを作らなきゃならない。結局、このシステムというものは広域で活動する民間企業のため、小さな、例えば長野県の小さな種苗企業を支えるんじゃなくて、全国展開しているあるいは世界展開をしている企業にとって有利になると。
そして、これ、法務的な知財権がどんどんどんどん強められていますので、これ、小さな会社は法務担当を持っていないんですよね。そうすると、ああ、これやるとリスクになるな、ほかの会社に訴えられるなとすると、そこで大きな萎縮が僕は起きると思うんですね。実際に起きているのがアメリカですよ。だから、アメリカでは新品種がなかなか作れなくなってしまっているんです。だから、アメリカ政府はもうこれ転換しなきゃいけないということを考えているわけですよね。それを考えますと、やはりそこに歯どめを作る必要が僕は必ずあると思うんですね。
そして、特に民間企業が活躍しやすくなる、それに対して、特に私たちの主要農作物はやはり地方自治体に頼っていますので、そういう在来種もいろんな地域にあるわけですよね、それを守れるというのもやはり地方自治体の持っている力だと思うんですよね。やっぱり、それを支えるそういう政策というものを是非御検討いただきたいなと強く思います。
○高橋光男君 ありがとうございます。
それぞれ本当に現場と専門的見地から貴重な御意見をいただいたというふうに思っております。
あさってにはまた法案審議がある中でありまして、しっかりと、そうした今日いただいたような様々な具体的な、例えば費用支援であったり、現場の萎縮の防止であったりとか、抜け穴のない制度の運用であったり、こうしたものをしっかりと議論して、今回の法改正が本当に意義あるものにしていくために取り組ませていただきたいというふうに思います。
本日は誠にありがとうございました。以上で終わります。
